ご理解されれば納得されなくても工事を進めるとするJR東海の姿勢。ふつうの民間業者とは、だいぶ性格が異なるなぁと思います。
なぜこれほど強い姿勢で臨めるかを考えると、リニア建設事業が単なる民間事業とは異なり、全国新幹線鉄道整備法(全幹法)という法律にのっとっているからじゃないでしょうか?
類似の事業である高速道路建設の場合、全幹法に相当するのは高速自動車国道法、国土開発幹線自動車道法といった法律のようです。新幹線建設と高速道路建設とを法的に比較すると、民主主義的な手続きや地元の関与という点では次のような違いがあるようです。
●高速道路の予定路線決定には内閣の議を必要とする(高速自動車国道法第3条)。新幹線建設の場合、予定路線(基本路線)や整備計画の決定は国土交通大臣の一存で決定できる(全幹法第4条)。
●高速道路の事業計画を進めるには要所で国土開発幹線自動車道建設会議(20人)の審議を必要とするが、その半数は国会議員で構成されなければならない(国土開発幹線自動車道建設法第5条、第13条)。新幹線建設の場合、同様の役割を果すとみられる交通政策審議会は、国土交通省の選ぶ有識者だけで構成されている(交通政策審議会令)。
●高速道路計画の予定路線決定には、利害関係を有する者が意見を陳述することができるとされている(国土開発幹線自動車道建設法第5条)。新幹線計画の場合、そのような制度はない。
●新幹線建設には、「地方公共団体は、建設に要する土地の取得のあつせんその他必要な措置を講ずるよう努めるものとする。」というように、事業に協力せよとの義務規定がある(全幹法第13条4項)。高速道路関係の法律には見当たらない。
●国土開発幹線自動車道建設法第9条には、「国土開発幹線自動車道の建設に必要な土地等を供したため生活の基礎を失う者がある場合においては、政府は、その者に対し、政令で定めるところにより、その受ける補償と相まつて行なうことを必要と認める生活再建又は環境整備のための措置について、その実施に努めなければならない。」という規定がある。全幹法にはない。
ド素人が法律を見比べただけであり、もしかしたら間違いだらけかもしれません。しかしちょっと見たところでは、高速道路計画には国会議員や意見陳述制度を通じて地元の声を届けさせる道筋が整えられているなど、高速道路整備のほうが、事業を丁寧に進めさせる仕組みになっているように感じられます。(マトモに運用されているかは分かりません)
ちなみに高速道路関係のふたつの法律が成立したのは昭和32年。かたや全国新幹線鉄道整備法は昭和45年に成立。後からできた法律のほうがザル法になっているようです。
全幹法の成立経緯を調べると、昭和40年代前半に出てきた国家プロジェクト”全国新幹線網の実現”を推進するためにつくられた特別法という位置づけのようです。
例によって全国新幹線鉄道整備法成立に至るまでの新聞記事です。
朝日新聞 昭和42年(1967年)9月1日 朝刊
国鉄が20年後のビジョン 全国に新幹線網
”過密なき集中„めざす 首都圏には高速通勤線
http://park.geocities.jp/jigiua8eurao4/SouthAlps/Shizuoka-news/1967-9-1.html
国鉄が20年後のビジョン 全国に新幹線網
”過密なき集中„めざす 首都圏には高速通勤線
http://park.geocities.jp/jigiua8eurao4/SouthAlps/Shizuoka-news/1967-9-1.html
●昭和44年(1969年)5月30日
新全国総合開発計画が閣議決定される。上記記事にある「第二東海道新幹線」構想が盛り込まれる。
【国土交通省ホームページ】
http://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/kokudoseisaku_tk3_000026.html
新全国総合開発計画が閣議決定される。上記記事にある「第二東海道新幹線」構想が盛り込まれる。
【国土交通省ホームページ】
http://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/kokudoseisaku_tk3_000026.html
朝日新聞 昭和44年(1969年)9月18日 朝刊
主要全都市を結ぶ 自民が新幹線鉄道網案
60年度までに建設 総延長9000キロ
http://park.geocities.jp/jigiua8eurao4/SouthAlps/Shizuoka-news/1969-9-18.html
⇒第二東海道新幹線、中央新幹線の2路線が登場。
主要全都市を結ぶ 自民が新幹線鉄道網案
60年度までに建設 総延長9000キロ
http://park.geocities.jp/jigiua8eurao4/SouthAlps/Shizuoka-news/1969-9-18.html
⇒第二東海道新幹線、中央新幹線の2路線が登場。
朝日新聞 昭和45年(1970年)4月13日 夕刊
10年後目標に建設 第二東海道新幹線構想 新方式列車で時速500キロ
http://park.geocities.jp/jigiua8eurao4/SouthAlps/Shizuoka-news/1970-4-13.html
⇒第二東海道新幹線は超電導リニア方式で建設できるとする
10年後目標に建設 第二東海道新幹線構想 新方式列車で時速500キロ
http://park.geocities.jp/jigiua8eurao4/SouthAlps/Shizuoka-news/1970-4-13.html
⇒第二東海道新幹線は超電導リニア方式で建設できるとする
朝日新聞 昭和45年(1970年)3月6日 朝刊
全国新幹線網の建設促進 各党共同で今国会提案
60年完成めざす 財源、46年までに結論 自民案骨子 中心都市結び9000キロ
http://park.geocities.jp/jigiua8eurao4/SouthAlps/Shizuoka-news/1970-3-6.html
⇒全国新幹線網と、それを実現するための法案を国会に提出することを決定。
全国新幹線網の建設促進 各党共同で今国会提案
60年完成めざす 財源、46年までに結論 自民案骨子 中心都市結び9000キロ
http://park.geocities.jp/jigiua8eurao4/SouthAlps/Shizuoka-news/1970-3-6.html
⇒全国新幹線網と、それを実現するための法案を国会に提出することを決定。
朝日新聞 昭和45年(1970年)3月12日 朝刊
新幹線網・法案要綱決る 着工順位はふれず 財源措置、引続き検討 議員立法で提案 20日ごろ
http://park.geocities.jp/jigiua8eurao4/SouthAlps/Shizuoka-news/1970-3-12.html
新幹線網・法案要綱決る 着工順位はふれず 財源措置、引続き検討 議員立法で提案 20日ごろ
http://park.geocities.jp/jigiua8eurao4/SouthAlps/Shizuoka-news/1970-3-12.html
朝日新聞 昭和45年(1970年)5月14日 朝刊
規模・財源など触れず 新幹線法かけこみ成立
http://park.geocities.jp/jigiua8eurao4/SouthAlps/Shizuoka-news/1970-5-14.html
規模・財源など触れず 新幹線法かけこみ成立
http://park.geocities.jp/jigiua8eurao4/SouthAlps/Shizuoka-news/1970-5-14.html
こののち昭和48年になり、全国新幹線鉄道整備法に基づき、全国新幹線網を基本計画に位置付けることとなる。
(以降の新聞記事については8/17の当ブログを参照していただきたい)
http://rdsig.yahoo.co.jp/blog/article/titlelink/RV=1/RU=aHR0cDovL2Jsb2dzLnlhaG9vLmNvLmpwL2ppZ2l1YThldXJhbzQvMTQ5MzI4MjkuaHRtbA--
どうも全幹法は、田名角栄議員に触発されて急いで作った「全国新幹線網」構想を早急に実現させるために、やはり急いで法律を急ごしらえで作ったために、ザル法になったんじゃないかと思ってしまいます。その後の国鉄の財政悪化に伴い、新幹線計画自体が長い凍結に入り、平成に入ってからは”整備新幹線”というものを法律の枠外の制度で作り始めたがために、時代錯誤がそのまま温存されてしまったのではないでしょうか。
とまあ、類似の国家プロジェクトである高速道路網整備に関わる諸法律と比較しても、事業推進に優位な規定となっているようなので、この法律を適用している時点で、純粋な民間事業とは言えないんじゃないかと思うし、「リニア建設は民間事業だから一般人があれこれ言う資格はない」という主張は、ちょっと違うとも思います。
(一例:ホリエモン氏「リニアの何が問題なんだろう?)
https://dot.asahi.com/wa/2014100800091.html)
(一例:ホリエモン氏「リニアの何が問題なんだろう?)
https://dot.asahi.com/wa/2014100800091.html)