ここのところ、南アルプスの長野県側において、リニアの建設工事に向け、JR東海が急ピッチで説明会を進めているようです。住民感情を逆なでするようなことをするなどしているようですが・・・。
そのJR東海は、「来年初めには斜坑(非常口)の掘削に着工し、2018年初めには本坑に到達、長野側工区の完了は2023年を目指す」と地元に向けて説明しているそうです。
こちら(⇒南信州新記事9月8日) にJR東海の示した工事スケジュールが掲載されています。そのまま引用すると著作権に触れそうだし、見づらいので、縦書きに修正したものを掲載します。
ついでに南アルプスのトンネル概念図を掲載します。東(甲府側)が上になっています。
南アルプストンネルの位置
トンネル工事で推定される工区ごとに色分けしてみる
環境影響評価書資料編 「工事計画」による
色を付けた部分がトンネルになる。
坑口ごと掘削方向(=発生土の搬出方向)を色分けして図示している。
南巨摩第四トンネルについては工区設定が不明であるため点線表示
ところで、同じ南アルプストンネルの中間地点となる静岡市では、何が起きているのかさっぱり分かりません。
というわけで推測になりますが、長野県側の状況やこれまでの説明により、静岡市での計画は、次のように進められるものと思われます
①様々な調査・許認可
②掘削工事に向けての準備工事
③工事用道路トンネルの掘削
④斜坑の掘削
⑤先進坑・本坑・導水路の掘削
⑥路盤整備
②掘削工事に向けての準備工事
③工事用道路トンネルの掘削
④斜坑の掘削
⑤先進坑・本坑・導水路の掘削
⑥路盤整備
来年いっぱいは、環境や土地条件の調査等に費やすことになるでしょう。昨年度の静岡市による調査で新たな新分布種を確認するなど、生物相調査がまだ不十分であるうえ、発生土置場の安定性についての調査が進んでいないためです。
これら諸手続きが終わった後に、工事に先駆けて林道の改良工事が必要となりますが、そのスケジュールも環境保全措置も不明なままです。また、発生土置場の整地・砂防工事や樹木の移植なども必要です。さらには、冬場は通行止めという条件も加わります。
こうした諸準備に、まだ2年半は必要でしょう。
さて大鹿村内では、2000mの斜坑を掘り終えるのに1年3ヵ月を見込んでいます。斜坑は月平均で133m掘ることになります。
これを静岡市内に予定されている各種作業用トンネルに当てはめると次にようになります。
工事用道路トンネル(4500m)…両側から掘ると17カ月
二軒小屋南斜坑(3500m)…26カ月
西俣斜坑(3100m)…23カ月
二軒小屋南斜坑(3500m)…26カ月
西俣斜坑(3100m)…23カ月
この図では上が北
ふたつの斜坑のうち、西俣非常口(斜坑)は、工事用道路トンネルの完成を待たないと掘ることができません。これは、現在は道路が存在しないという事情に加え、猛きん類への環境保全措置というタテマエで工事用道路トンネルを必要としているためです。よって、西俣斜坑が本坑に到達するには、最短でも40ヵ月(3年4ヵ月)が必要となります。
また、釜沢東(除山)斜坑から掘る本坑(西へ推定600m、東へ推定4800m)の貫通には6年4ヵ月を要するとしています。ですから単純に考えると、本坑は月平均で63m掘ることになります。
これを静岡側に当てはめると、西俣斜坑終点から大鹿側の向けて掘る本坑部分約3000mを掘り終えるには48ヵ月(4年)かかります。
以上、整理するとこんな感じになります
【静岡市側での最短の工事工程予想】
2017年度 各種調査の継続
2018年度後半~ 林道工事
2019年度半ば~発生土置場整備、ヤード整備、宿舎設置
2020年度 工事用道路トンネル掘削開始
2021年度後半 西俣斜坑の掘削工事
2023年度後半 西俣斜坑から先進坑・本坑の掘削
2028年度初頭 貫通
もう一度強調しますが、あくまでこれは、全ての準備がトントン拍子で進むという、ありえない前提で見込んだものです。現実には事前に水利権調整、河川法・森林法上の許認可、林道通行や改変の許可が必要ですし、新たに何か重要な生物の分布が見つかったら、そこで追加の保全対策も考える必要があります。どのタイミングで施工業者を決定するか、説明会はどのような形で行うのか、緊急時の行政対応をどうするのか、そういったことも一切決まっていません。
このように考えると、静岡市工区での本坑着工は最短でも2023年度以降になると予想されます。すると貫通は2026年か2027年。それからガイドウェイ設置やら電気工事を始めるので、南アルプストンネル全体の完成は、どんなに早くとも2028年以降になるのではないでしょうか?
さて、西俣斜坑を掘り終える2023年には、大鹿村での説明だと、大鹿側の工事は終了間際になっていることになります。先進坑はすでに掘削を終えているのかもしれません。
かたや静岡側でのスケジュールは、絶対に2027年名古屋開業には間に合わない。
「大鹿側から静岡側へ掘ってしまえ」
という考えがJR東海内部に生じたり、推進している側から要請が出てくることはないのでしょうか?