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Channel: リニア中央新幹線 南アルプスに穴を開けちゃっていいのかい?
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リニアからの残土は不要じゃないのかな?―早川芦安連絡道路、不審点が多すぎませんか―

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「早川芦安連絡道路って不審点が多すぎませんか?」
このようなタイトルを掲げながら、この道路の必要性について言及するつもりはありません。地域のために必要なら早急に造るべきでしょう。必要性とは全く関係なく、事業計画に不審点が多すぎるという話です。



リニアの南アルプス横断トンネルの山梨県側にあたる早川町では、昨年12月、形ばかりの起工式が行われました。マスコミからは「南アルプス本格工事開始」と報道されたものの、その後は宿舎を建設しただけで、全く動きがないようです。

●トンネル建設に160万立米も必要なのか? 

早川町側には南アルプストンネルから232万立方メートル、東の第四南巨摩トンネルから94万立方メートル、切土3万立方メートル、合計329万立方メートルの発生土が生じる見込みです。

これらのうち160万㎥(48.6%)は早川芦安連絡道路の造成に使い、残り半分は、完成後の同道路を使って東側へ運び出す計画だそうです。このうち100万㎥(30.4%)は芦安地区での駐車場造成に使うそうな。

早川芦安連絡道路とは、早川町北部から甲府盆地側の芦安温泉に向けて新設される道路のことで、道路トンネルと早川を渡る橋梁の建設がメインとなります。南アルプススーパー林道に向かう夜叉人峠トンネルの南側に計画されています。

このトンネル、断面図から大雑把に見積もると、断面積は50~60㎡ぐらいになるものと見られます。すると発生土量は50㎡×3740m×1.5(変化率)で、19~34万立米。両側から掘るなら早川町側へは10~17万立米程度の発生土が生じます。

したがって早川芦安連絡道路では、合計175万立米ぐらいの発生土を使うことになります

ところが、この発生土の使用計画について、ものすごく不自然な点が見受けられます。新設道路の盛土に使うそうですが、175万立米はいくらなんでも過大じゃないでしょうか?


イメージ 2

より拡大して書き直します。トンネル区間を緑色で、地上部のうち盛土になるとみられる部分を赤色で、橋になるとみられる部分をピンクで示しています。
イメージ 5
国土地理院 地理院地図 電子国土Webより複製・加筆 

地上区間は750m程度とみられますが、早川および支流(カッパ滝とある谷川)の深い谷を渡る必要があるため、1/3程度は橋になるはずです。盛土は、道路が山腹を横切る部分と、橋の取り付け部分に用いられるのでしょう。

果たしてどれくらい使うのか?

ちょっと試算してみます。(おヒマな方は、紙と鉛筆とルート機能付き電卓でお付き合いください)

一般的に、道路盛土の高さ上限は20m程度、盛土勾配は30°とのこと。それから地形図から判断して、橋が架けられるあたりの斜面勾配を30°と見積もります。
イメージ 3

この条件だと、橋の取り付け部分への盛土量は橋ひとつにつき2.1万立米程度になりますから、二つの橋に使えば8.4万立米程度となります。

また、道路が山腹を横切る部分については、山地の道路によくみられるように、谷側に垂直の壁を設けて、その中に土を詰めると考えます。急傾斜の地ですから、斜面勾配を45°とします。道路の幅は7mですから盛土高さも7m。よって盛土断面積は24.5㎡となります。

盛土構造となりそうな区間の長さはおそらく450m程度。45m×24.5㎡で。およそ1.1万立米。

これで合計は9.5万立米程度


これでは総発生土量の5%程度にしかなりません。しかもこの量なら、新設道路トンネルからの発生土だけでも余ってしまいます。

早川芦安連絡道路を建設するのに、リニアからの発生土量は不要ではないでしょうか?

そもそも、チョー簡単に、盛土区間の延長を500m、高さ20mとすると、道路の幅は175mという現実離れした数字になってしまうわけで、この計画がおかしいことは一目瞭然。 

●どういう審議をしていたのだろう? 

同じく山梨県の発表資料です。
イメージ 1

これによると、「リニアからの発生土を使うため建設コストを抑えることができる」と説明しています。しかし、どう考えても160万立米も使うはずがない。むしろ邪魔なはず

もしも発生土160万立米を全部盛土構造に使うのなら、早川本流にロックフィルダムを造るか、もしくは”カッパ滝の谷川”を埋め立てるような規模となり、あまりにも過大(たぶんコスト面でも)な規模となります。事業計画内容が非合理的なのは明白なのに、妥当であると判断されていたようです。

ヘンですよね。

さらに下段を見ると、この早川芦安連絡道路は、当初計画では2014年(平成26年)度に着工し、今頃は工事の最中で、2019年(平成31年)度に完成する計画だったようです。ところが実際には、平成26年に環境調査や測量を担当する業者の入札を開始したとの発表があったものの、その後の音沙汰はない状況です。

それどころか今年はじめに行われた現地取材によると、そもそも早川芦安連絡道路の工事予定地までの道路改良が先に必要だとか、工事費の割合をめぐってJR東海と山梨県とで調整がつかないとか、そういった状況にあるようです。
http://shuzaikoara.blog39.fc2.com/blog-entry-465.html

リニア本体工事の発生土処分を左右する道路なのですが、どうなっているのだろう?


●そもそも盛土構造にする必要があるのか?

盛土で埋めてしまうかもしれない「カッパ滝」のかかる沢について、空中写真で拡大してみると、近年、土石流が流れたかのように見えます。早川との合流点付近の谷底に石がゴロゴロ転がっているように見受けられるためです。また、源頭部には、最近崩れたばかりとみえる崩壊地もあります。
イメージ 4
国土地理院ホームページより引用・加筆 


土石流の頻発する谷川を埋め立てたら、その上流側に大量の土砂をため込む危険性が生じるような気がします。

ここに橋を架けるのなら、盛土など用いずアーチ橋で一跨ぎにすべきじゃないのかな?

さらに、この一帯は山梨県立南アルプス自然公園第2種特別地域に指定されています。環境・景観への影響を最小限にする必要がありますから、改変面積が大きくなる盛土構造は避けるべきではないでしょうか?

◇   ◇   ◇   ◇   ◇ 

繰り返しますが、道路の必要性について作者は判断できません。

しかし、必要性をリニア計画に結び付けようとする理論は、破綻しているのではないでしょうか? 




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