リニア南アルプストンネルの発生土処分の可否を握る(?)早川芦安連絡道路計画。
この計画については、前回のブログでの指摘に加え、まだ疑問点があります。
環境影響評価書によると、160万立米の盛土面積は7万平方メートルになるとのことです。また、山梨県提示の資料によると、新設される道路のうち地上部分の延長はおよそ750mとみられます。早川と支流の深い谷に橋梁を架けるでしょうから、盛土区間の長さは500m程度となるものとみられます。この区間の道路の幅は、路肩を含めて8.5mだそうです。
8.5m×500mで、道路造成に必要となる盛土の面積は4250m程度。これでは環境影響評価書に示された盛土面積7万㎡の6%にしかなりません。盛土の裾部分が広くなることを考慮しても、あまりにも差が大きすぎます。
となると、考えられる可能性はただ一つ。
「早川と支流の深い谷」は、橋を架けて渡るのではなく、発生土で埋め立ててしまうに違いありません。規模の大きな早川を埋め立てるのは無理でしょうけど、支流なら、土木技術的には考えられなくもない。
早川芦安連絡道路構想には、新設トンネルの東口にあたる芦安山岳館前の谷側を埋め立てて駐車場を造成する事業もセットになっているらしいので、同じようなことを西口でも行うとしても、不思議ではありません。
しかしそんなことをすれば、道路整備に本来必要な規模をはるかに超えてしまい、道路建設に名を借りた残土処分場そのものになってしまうのではないでしょうか。
ここに早川芦安連絡道路構想の不自然さがあります。
こちらは、早川芦安連絡道路予定地付近における南アルプスユネスコエコパークの地域区分図です。黄色い部分が移行地域、緑色の部分が緩衝地域、赤い部分が核心地域で、順に保全のレベルがあがります。
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移行地域は人が居住し、持続可能な範囲内で通常の社会活動が許されるエリア、核心地域は厳重に自然環境が保全されるエリアになります。両エリアが直接に接するのを避けるために設けられるのが緩衝地域で、人の営みは旅館業、観光業などにを持続可能かつ核心地域に影響を及ぼさぬ範囲で行うことに制限されています。
早川芦安連絡道路の工事予定地は、全て緩衝地域内に入っているのです。
環境保全を優先すべき場所において、行政が率先して残土処分場を見まごう大規模な盛土を行うことはおかしいのではないでしょうか?
また、このような事業をJR東海との共同で行うことにも疑問があります。
山梨・静岡・長野3県の環境影響評価書において、JR東海は南アルプスユネスコエコパーク内における地上工事については全て移行地域内にとどめ。緩衝地域はトンネルで通過するとしています。だからどうしたとは明記していませんが、それによってユネスコエコパークの管理計画との整合性は保たれると主張しているのでしょう。また、長野県版評価書では、移行地域内(つまり大鹿村内)には発生度の最終処分場は設置しないとしています。
長野県版の環境影響評価書より引用
しかし山梨県がリニアからの発生土を運び込もうとしているのは緩衝地域内です。しかも結構な規模の工事を緩衝地域内で行うことになるため、これはJR東海が示した環境保全の方針と矛盾します。
したがってJR東海は評価書を変更せぬ限り、早川芦安連絡道路に協力はできないはずです。もしくは、県行政が評価書を否定することになる。
おかしいですよね?
どうしても道路を建設する必要があるのならば、
●位置を変更する
●大規模盛土ではなく橋梁にすべき
●JR東海の参加は不要
●大規模盛土ではなく橋梁にすべき
●JR東海の参加は不要
というように事業計画を変更すべきではないかと思うのであります。リニア残土を使用する必要はないでしょう。