福岡市営地下鉄の掘削工事現場で大規模な陥没事故が起こりました。これを受けて考えたことです。
この地下鉄は道路の下に造られていました。そのため陥没が大規模になりながらも、不幸中の幸いながら、直接の被害は直上の道路(と周辺インフラ)だけで済み、また、陥没発生前に道路を通行止めにすることにより人的被害は免れることができました。
一般的に地下鉄は、地上の土地所有者への補償や交渉を避けるために、道路に沿ってルート設定される傾向にあります。ゆえに東京でもどこでも、地下鉄はグネグネ曲がっているわけです。
ところが大深度地下法によると、ルートは地上の土地利用と関係なく設定されてしまう傾向にあります。土地所有者への補償が免れるため、目的地への最短ルートでトンネルを掘ることが可能になるめです。リニア中央新幹線は、首都圏や名古屋市において大深度地下法を適用して建設されます。
例えばこちらは、7日に立坑起工式の行われた名古屋市の名古屋城付近です。
愛知県版 環境影響評価書関連図より複製・加筆
トンネルは道路と関係なく設定され、建物の密集地帯の地下を貫いています。トンネル頭上には図示した範囲だけでも、小学校、高校、大病院といった、大勢の人が集まる建造物を多数確認することができます。同じ図面の枠外では幼稚園や県営団地もみうけられました。
当然、神奈川県や東京都の大深度地下部でも同様の状況にあります。大都市の大深度地下トンネルだけでなく、岐阜県内や天竜川沿いの段丘など、山岳トンネルであっても土被りの小さな箇所では、同様の懸念があります。
万一、同じような事態がリニア建設で生じた場合は、地上の建物への影響が避けられないように思えます。中にいる人に対し、福岡の事故のように素早く退去を迫ることが可能なのでしょうか?
報道によると、福岡の陥没事故の場合、
地下で作業員が異常を感知⇒警察に通報⇒道路通行止め⇒通行止め後5分で陥没発生
という経緯で人的被害を防いだようです。
リニアの場合、トンネル頭上に住んでいる人々への連絡などできるのでしょうか?
病院とか団地の場合、異常感知⇒警察⇒警察官派遣⇒避難呼びかけ なんてことをやっていて間に合うのでしょうか?
「今日はあなたのお宅の真下を掘ります。万一に備えて貴重品をそろえ、携帯電話の電源をONにしておいてください」などと連絡があるのでしょうか?
そんなことを考えたのでした。
リニアルート真上となってしまった方々は、そのあたりの危機対応について、JR東海に確認しておいた方がよろしいかと思うのであります。
●リニアの詳細なトンネルルートについては、JR東海の「環境影響評価書 関連図」で確認できます。
http://company.jr-central.co.jp/chuoshinkansen/assessment/document1408/index.html
http://company.jr-central.co.jp/chuoshinkansen/assessment/document1408/index.html