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Channel: リニア中央新幹線 南アルプスに穴を開けちゃっていいのかい?
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全長286㎞にわたる巨大精密構造物が大地震発生時の迂回路になるのか?

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ここまで来た!超電導リニアモーターカー―もう夢ではない。時速500キロの超世界
(鉄道総合技術研究所監修)
という本に、以下のような記述がありました。

72ページより
 地上コイルのうち、車両の浮上力を支え、走行方向に葉案内する浮上・案内コイルの位置が狂うと乗り心地が低下するため、それを取り付けているガイドウェイ側壁部分は、線路方向に滑らかに連続していなければならない。すなわち、水平面の曲がり(蛇行)については、ガイドウェイ中心線を基準として側壁の設置精度を数㎜以下とし、上下方向の凹凸についても、やはり数㎜以下とすることが求められる。

 また、地上コイルがねじれないように、コイル取り付け面の凹凸を2㎜以下とすること(さらにスペーサーで1㎜以下に調整されること)や、地上コイルを取り付けるための埋込インサート(雌ネジ)相互の感覚の誤差を1㎜以下にすることなども求められる。走行路面の仕上がり高さの誤差もまた、数㎜以下の精度で滑らかに造ることが要求される。

 このようにガイドウェイの側壁部分や走行路部分は、在来の鉄道や高速道路等の通常のコンクリート構造物よりも、はるかに厳しい精度管理が要求される。現場施工を伴うコンクリート土木構造物で、このような厳しい精度が要求される例は他には見られないため、さまざまな工夫をこらした器具や作業方法を開発し、土木構造物としては驚異的ともいえる精密さを確保している。
 


この説明によれば、リニアを浮上・推進させるためのコイル位置は、ミリ単位で精度を確保しなければ安定走行はできないそうです。どのくらいまでのズレで、どの程度の衝撃が起き、走行不能に陥るのか、この記述だけでは分かりません。

この精度管理に関係する別の資料も見つけました。JR東海が発足20周年を記念して発行した社史東海旅客鉄道20年史」からの引用です。

148ページより
…山梨実験線は、上記運輸大臣通達(注)の暫定技術基準及び配慮すべき条件に適合するよう、全長42.8㎞、うち複線区間24㎞の規模で全体を計画した。このうち、インフラ構造物については、トンネルが全体の8割異常を占めることとなり、最長は御坂トンネル(仮称)で約14㎞の延長となる。明かり構造物は、高架橋及び橋りょうが大部分を占めるが、切取り区間も一部存在する。盛土構造については、超電導リニアの地上1次モーターと高速性に由来する厳しいガイドウェイ精度管理の面から採用しないこととした  

上記のような精密な設計にする必要があるため、盛土を採用することが難しいのだそうです。

全長286㎞にわたってミリ単位で維持しなければならぬ巨大構造物が、大地震発生時の迂回路になるのでしょうか? 

マグニチュード8を超える規模になると、数千平方キロメートル単位で地面が傾くような規模になるし、あちこちで地割れが生じたり、地すべりが起きたり、液状化が起きたりするかもしれない。当然、路線はある程度の対策を施して建設されるだろうけど、基礎ごと動くような場所ならばどうしようもないわけです。赤石山脈のトンネル部分はメートル単位の変動を起こすかもしれません。
イメージ 2
南海トラフ大地震想定震源域とリニアルート(緑点線)との位置関係
内閣府中央防災会議のホームページより複製・加筆 


ミリ単位での精度維持を求められる”巨大精密装置”に大勢の人命を預けるというのは、かなり無謀ではないかと思うのであります。乗客が無事であったとしても、早急な復旧が可能のようには思えません


道路だったら、幅10㎝の割れ目が生じたとしても、砂利を敷くなり鉄板を渡すなりして、すぐに通行可能となります。けれどもリニアはそういうわけにはいきません。

もちろん、レールの上を鉄輪で走行する新幹線とて、レールのゆがみ等が生じたら、どうなるかわかったものではありません。しかしリニア中央新幹線の場合、当初より「東海/南海トラフ大地震に備えて二重系統化」することが事業推進の意義とされているわけなので、地震発生時には無傷でなければならぬはずだと思うのです。

また、冒頭に記した「ここまで来た超電導リニアモーターカー」の本には、こんなことも書かれています。

229ページより
 大きな地震が発生した場合には、ガイドウェイが変形することも考えられる。しかし超電導リニアは浮上して走行し、かつ電磁気力で支えられているため、ガイドウェイの変形に強いと考えられる。宮崎実験線では、このような場合に走行車両へ影響を及ぼす可能性を調べるため、わざとガイドウェイを変形させて走行実験を行った。その実験では、車両がガイドウェイから外れたり転覆したりということはもちろんなく、多少の変形では走行に影響を及ぼさないことが確認できた。山梨実験線でも3~5両編成において同様の実験を行い、安全性の確認を行っている。また、高架橋の継目部では、常に、変形および変位量を計測し、地震発生時に備え監視を行う。 


「わざとガイドウェイを変形させて走行実験を行った」とあり、とりあえず一応、コイルが破損する状況は想定しているようです。ます。これはおそらく、国土交通省超電導磁気浮上式鉄道実用技術評価委員会に提出された次の資料にある実験のことだと思います。

イメージ 1
平成21年度 超電導磁気浮上式鉄道実用技術評価委員会 資料

浮上コイル1枚欠落までは浮上走行可能だったとしています。

「欠落」というのが、どういう状況を表現していたのか分かりません。きちんと取り外して除けておいたのか、それとも倒れこんだ状況にしてあったのかで、車体の受ける影響は大きく異なると思うのですが。。。

いずれにせよ、この書き方だと、2枚以上破損した状況を想定した実験はしていないということになります。3枚以上外れたら、”想定外”ってことなのでしょうか


本当にリニア中央新幹線が東海地震/南海トラフ地震対策として有効なのか、これら資料からは納得できないのであります。



なお、盛土構造を採用しないという記述には、超電導リニア計画が抱える本質的な問題点がみてとれます。

道路・鉄道等を建設する際には、建設発生土の発生量を抑えるように、切土・トンネル区間と盛土区間とのバランスを考えるのが基本です。地下鉄や放水路のように”掘るだけ”の事業の場合、埋め立て・築堤・造成など大量に発生土を使う別事業とセットになることが求められます。だからこうしあ事業は公共事業にならざるを得ない。

ところが超電導リニアの場合、超高速運転や用地取得回避のために、軌道を地下に埋めねばならず、必然的に大量の発生土が生じます。しかし地上区間でも盛土を使えないのであれば、事業内で発生土を使い切る見込みがほとんどない。いきおい、発生土処分は別事業に頼らざるを得なくなるわけです。


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