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Channel: リニア中央新幹線 南アルプスに穴を開けちゃっていいのかい?
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JR東海社史より山梨リニア実験線建設について

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JR東海より「東海旅客鉄道20年史」という社史が作成されています。この本に山梨リニア実験線建設の経緯が掲載されています。

現在のリニア中央新幹線計画を考えるヒントになりそうな内容ですので、一部を抜粋します。なお、運輸大臣通達までの経緯についてはこちらをご覧ください。

(147ページ~)
運輸大臣通達  
 平成元年8月7日の新実験線の山梨県での建設決定を受け、同年12月29日、山梨実験線に係る予算が初めて政府予算案として閣議決定された。翌平成2年6月8日、当社、鉄道総研、鉄道公団の3者に対して、運輸大臣より「超電導磁気浮上式鉄道に係る技術開発の円滑な推進について」が通達され、同時に、20万分の1地勢図による概略のルートが発表された。

 運輸大臣通達の主な内容は以下のとおりである。

(1)技術開発の基本計画
 ・当社と鉄道総研が共同して作成、鉄道総研が大臣承認申請。
 ・記載すべき事項の指定
 技術開発の目標、期間、技術開発を要する施設及び車両の概要、実施しようとする実験の内容及び実施期間など

(2)山梨実験線の建設計画
 ・当社、鉄道総研、鉄道公団が共同して作成、三者が大臣承認申請
 ・記載すべき事項の指定
 線路の位置、線路延長、工事方法、工事着手予定時期及び完了予定時期、工事に要する費用、工事に要する資金計画など

 ・必要な実験を行うために配慮すべき条件
暫定基準 
軌道中心半径 5.8m 
最小曲線半径 8000m 
最急勾配 40‰ 
暫定技術基準 
連続直線区間 (高速)1.4㎞以上 
曲線半径8000m (高速) 1.4㎞以上 
緩和曲線 (高速) 1.4㎞以上 
勾配40‰ (高速) 1.4㎞以上 
縦曲線半径30000m (高速) 1.4㎞以上 
複線明かり (高速) 1.4㎞以上 
複線トンネル (高速) 1.4㎞以上 
総延長 
40km程度 

 資金計画の作成に当たり、中央新幹線は東海道新幹線の役割を代替するもの、第2の東海道新幹線として建設されるものと運輸省の公式見解を受け、また、それゆえ将来実用線の一部となる山梨実験線18.4㎞の用地及び土木構造物は、それを経営責任分野とするJR東海の特別負担で建設するようにとの運輸省の要請のもと、当社は、汎用性のある土木構造物等の施設に係る投資について特別負担することとした。

技術開発基本計画・建設計画の大臣承認  
 大臣通達に基づき、平成2年6月25日付で「技術開発の基本計画」及び「山梨実験線建設計画」について運輸大臣に承認申請し、同日付で承認された。以下のその主な内容を示す。

(1)技術開発基本計画
①技術開発の目標
 ・高速性
 営業最高速度500㎞/hを目指すため、実験線において、より高速(550㎞/h)の安定走行を確認する。
 ・輸送能力・定時性
 ピーク時間当たり10000人程度(片道)の輸送が可能で、定時性の高いシステムを確立する。
 ・経済性
 建設コスト、運営コスト、生産コストの低減化を図るとともに、採算性を踏まえたシステムの経済性を確立する。

②技術開発の機関
 技術開発の期間としては、山梨実験線の一部の使用が可能となる平成5年度から走行試験を開始し、平成9年度までに実用化の目途をつけるものとした。

(2)建設計画
 山梨実験線は運輸大臣通達(別記)の暫定基準及び配慮すべき条件に適合するよう、全長42.8㎞、うち複線区間24㎞の規模で全体を計画した。このうち、インフラ構造物については、トンネルが全体の8割以上を占めることになり、最長は御坂トンネル(仮称)で約14㎞の延長となる。明かり構造物も一部存在する。盛土構造については、超電導リニアの地上1次モーターと高速性に由来する厳しいガイドウェイ精度管理の面から採用しないこととした。

(3)資金フレーム
 技術開発の基本計画及び山梨実験線の建設計画の双方に係る資金計画については、以下のとおりである。
①実験線基盤施設(汎用性のある土木構造物の施設に係る投資)
 ・当社が管理
 ・工事用道路等関連工事については地元協力として山梨県の負担
 ・用地取得費については、山梨県が地元協力として鉄道総研に対する貸付資金を斡旋(将来営業線への転用時点で経営主体すなわち当社が買い取ることとされた)

②実用化技術開発費(実験終了後取り払う電気設備等の施設に係る投資)
 ・鉄道総研が国庫補助金、山梨県の地元協力金、鉄道総研への開銀融資(JR一般負担での返済)、当社の特例負担により資金を調達。
 ・鉄道総研への開銀融資に対しては、当社が債務保証契約を締結。

環境影響調査 
 運輸大臣通達が出された平成2年6月の時点では、実験線建設に先立つ環境影響評価(環境アセスメント)の実施を義務付けた法律ないし山梨県の条例等は存在しなかった。

 しかしながら、実験線の建設及びその後の走行試験に伴う周辺環境への影響を把握し的確に対処するために事業3者と山梨県との間で「山梨リニア実験線に係わる環境影響調査などの進め方について」により手続き等の確認を取り交わし、東八代郡境川村から南都留郡秋山村に至る全長42.8㎞の実験線全線にわたり、環境影響調査を実施して報告書を取りまとめた。このとき、実験施設は将来中央新幹線の一部として活用することになるが、その場合の環境アセスメントの取り扱いについては、その時点での状況を踏まえ、別途関係機関との間で取り決められるものとし、実験線に限定した調査として位置付けられた。
 
 具体的な手続きとしては、平成2年6月25日の技術開発の基本計画と山梨実験線計画の大臣承認の翌日、報告書に関する山梨県への事前説明会を開催した。その後、特に、騒音・振動・磁気の3点について、山梨県リニア推進局及び県民生活局環境保全課と議論を交わし、同年7月20日、「環境影響調査報告書」を正式に山梨県に提出した。その後、山梨県庁内での議論及び部外の専門家の意見などから、特に上記の3点について追加の説明を求められたため、同年8月18日付で「補足説明資料」を提出した。

 そして同年9月5日、山梨県知事より環境影響調査の報告書の内容について意義のない旨の回答を受理するとともに、包括的な環境保全を図るため、山梨県と事業3者の間で、「環境保全協定」を締結し、一連の環境影響調査の手続きが終了した。

関係法令の適用 
 山梨実験線の建設については、前述のように大臣承認により事業が承認されているが、他の関係法令の適用については、以下のとおり関係者間で確認され、従来の鉄道と同様の取り扱いとされ、用地取得の推進と交差協議の円滑化が図られた。

(1)土地収用法
 平成2年9月、山梨実験線の建設事業が、土地収用法対象事業に関する同法第3条第7号の2「日本鉄道建設公団」が設置する鉄道又は軌道の用に供する施設」に該当するかにつき、同公団用地部長から建設省経済局総務課長に対して照会し、即日該当する旨の回答を得た。

(2)租税特別措置法
 公的な事業に置いて用地を譲渡した地権者に対し、譲渡益に対する課税の特例、すなわち租税特別措置法で定めるいわゆる「5000万円控除」が適用されることは、山梨実験線の用地買収を推進するうえで重要な要素である。そこで、山梨実験線が、租税特別措置法の施行規則に定める「日本国有鉄道が設置する鉄道の用に供する施設のうち線路・停車場に係る部分」に該当するかについて、平成2年9月、同公団用地部長から運輸省国有鉄道改革推進部施設課長に対して照会し、同年10月に該当する旨の回答を得た。

(3)道路法
 平成3年6月、運輸省大臣官房国有鉄道改革推進部と建設省道路局との間で、山梨実験線建設に伴う交差協議については同法第31条(道路と鉄道の交差)を、道路占有については第35条(国の行う道路の占用の特例)を適用する旨確認された。
事業者間の協定 
 平成2年6月25日、当社・鉄道総研・鉄道公団は、山梨実験線が技術開発を目的としていることを踏まえ、その円滑な建設に資するため、「山梨リニア実験線建設促進に関する基本協定」を締結し、事業の推進に当たっては。当社の経営上の判断を尊重することをベースとして各社の責任分担、推進体制及びその業務の推進方等について、以下のように基本事項を取り決めた。

(1)用地取得については、鉄道総研が事業主体となり、所得事務を鉄道公団に一括委託し、さらに用地取得義務は山梨県に委託。

(2)土木構造物等汎用性のある施設の建設については、当社が事業主体となり、鉄道公団に一括委託。

(3)実用化技術開発に関しては、鉄道総研が事業主体となり、当社の特別負担に係わる部分については当社を事業主体とみなし当社に委託。
地元協議等と実験線工事着手式 
 平成2年8月22日、山梨県での県議会連盟、建設促進協議会への説明を経て、初めて実験線沿線の市町村に対し事業説明会を開催し、2500分の1の地形図にてルートを発表した。翌8月23日より境川村をはじめとして沿線各市町村の地区ごとの説明会を実施し、測量のための立入りから、用地買収、工事の着手に至る手続き等について説明し、理解を求めた。

 本格的な地元説明及び各種の協議が実施される中、平成2年11月28日、都留変電所の建設予定地において事業推進の安全を祈念する「着手式」が、山梨県主催の下、事業3者はもとより多くの関係者を招へいして、盛大に挙行された。
測量
 山梨実験線の建設工事に先立ち、実験線構造物等の建設位置を現地で定める基準となる測量ポイント(基準点)をトンネル坑口付近等に設置する方法として、工期の短縮、高精度施工の確保、経費の削減等のため、本格的な大規模測量地としては国内初の事例となるGPSによる基準点測量を採用し、平成2(1990)年12月から実施した。

 超電導リニアに求められるガイドウェイの高精度施工を考慮してトンネルの貫通誤差を10万分の2に設定したことにより、GPSによる基準点の目標精度は基準点間において±15㎜とし、測量網はシミュレーションの結果、地形的制約に適合し、測量公立のよい10㎞網とした。結果として、±5㎜いないの精度を確保することができた。
工事の着手 
 先に述べた通り、平成2年11月28日に都留変電所の建設予定地において「山梨リニア実験線着手式」が行われた。

 平成3年2月、山梨実験線のトンネル5工区が発注され、同年5月、九鬼トンネル東工区にて最初の工事用道路トンネルの建設に着手した。そして同年9月17日、九鬼トンネル東工区において初めての起工式が執り行われた。これに続き、同年12月には笹子トンネル西工区にて、翌平成4年4月には、朝日トンネル及び九鬼トンネル西工区がそれぞれ執り行われるなど、順次工事に着手した。
先行区間の設定 
 平成4年度に入り、用地買収の全体的な遅れにより、当初計画の建設工程が既に1年程度遅れていることが顕在化してきた。しかし、実験を可能な限り早く開始し、超電導リニアの技術開発に遅滞をきたさないようにするため、当初計画にある「できあがった一部の区間を使い実験を開始する」という考え方に沿い、関係機関と協議のうえ、先行区間を設定することにした。

 平成4年度時点においては、当初の計画時点と比較して、地上コイルの高耐圧化、電力変換器の大容量化等の技術が向上し、短い区間においても目標とするスピードが達成できる見通しが得られたため、実験線全線42.8㎞のうち、比較的用地買収が進捗していた中央エリアにおける延長18.4㎞を先行区間として設定した。この先行区間における走行実験により、一部長期耐久性試験等は残るものの、当初計画どおり、平成9年度までに実質的な実用化の目途を立てることとした。

 トンネル工事においては、坑口付近は民家が比較的少なく、トンネル掘削に伴う土捨場、工事用道路や坑外設備の借地等の協議がまとまった箇所から順次工事に着工することができた。しかしながら、高架橋や橋りょうの工事は、前述のように用地買収の遅れから着工時期がずれ込んだ。そのため平成7年3月には、技術開発基本計画と山梨実験線建設計画を変更し、実用化の目途立てを平成11年度までとすることとし、運輸大臣の承認を得た。


【気になったこと】
●下線をひいたところなど、リニアは当初より完全な公共事業扱いだったのでは?

●運輸大臣通達によって場所が決まったのが平成2年6月8日、「環境影響調査報告書」を山梨県に提出したのが7月20日。この間わずか一か月半。印刷・製本の手間を考えると実質一ヵ月程度のはず。

●地元への説明は完全に後回し。話がいろいろ決まってから。

●地元への説明の最中に”着手式”を開催。

⇒現在と同じような進め方だったようなのであります。







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