先月、長野県大鹿村で南アルプストンネル長野工区の起工式が行われました。そしてこのたび愛知、岐阜と続けての”着工”となっています。
その一方で住民理解はまるっきり進んでいないように思われます。南アルプストンネルからの残土の処分場候補地は反対運動に直面しています。山梨県や神奈川県ではトラスト運動も行われていると聞きます。
住民の反発が強い背景には、事業の進め方がメチャクチャであることに加え、事業推進の意義が感じられぬこともあるでしょう。住民目線からみれば、迷惑を受け入れなければならぬ必然性が感じらぬというわけです。
例えば洪水対策としてダムを建設することが決まり、住民に立ち退きを迫る状況を考えていただきたい。ただし補償の話は横に置いておきます。
この場合、ダムを作る側は、ダムを造る意義として洪水対策を掲げています。ということで、予想される降水量や地形などから洪水時の水位・流量・被害を予測し、どれだけの量をダムで貯留でき、被害の軽減効果を予測することになります。
それで、
「ここにダムを造るとこれだけの被害を軽減できるのです。下流の町を守るため、事業にご理解をいただきたい」
「ここにダムを造るとこれだけの被害を軽減できるのです。下流の町を守るため、事業にご理解をいただきたい」
という話になります。
で、その予測される効果に不審点があれば、検証する必要があるのは当然でしょう。先祖から受け継いだ土地・住み慣れた土地を追われたり、良好な環境をぶっ壊したり、多額の税金を使ったりするのだから当たり前の話です。
ダムでも堤防でもハコモノでも卸売市場でもカジノでも、公共の利益を目的としているものは皆、同じことでしょう。
リニア計画についても同じことです。
リニア中央新幹線建設の最大の意義が「東海/南海トラフ大地震に備えて二重系統化」であるのだったら、その意義の妥当性や有効性はきちんと説明してほしい。でなきゃ納得できん!
国土交通省中央新幹線小委員会の答申(2011年5月12日)
…個人的には、「東海/南海トラフ地震に備えて二重系統化」という名目はマユツバだと思う。
当ブログで繰り返してきたきたように、
●そもそもリニアが無かったらどうなるのか?という想定が不明
●ルート選定に当たり、東海/南海トラフ地震発生時の赤石山脈における地殻変動について検証していない。
●名古屋以西で東海道新幹線よりも南海トラフに近いルートとなる
●甲府盆地、濃尾平野、大阪平野でも大きな被害が予想される
●「東海/南海トラフ地震に備えて二重系統化」はJR東海発足時に出された主張。しかし当時はリニア技術の実用化目途すら立っていなかった。⇒「いつ起こるか分からない地震」に備え、いつ完成するか分からぬものを代替ルートにするのか?
●政府による北陸新幹線整備についても同じ意義が掲げられている。
●地震発生時に南アルプス地下で列車が緊急停止すれば、南アルプスをかかえる自治体にとっては、乗客救助という余計な災害リスクが増えてしまう。⇒大地震時に南アルプス山奥からどうやって避難誘導するのか?
といったあたりがどーしても腑に落ちないのである。地震や地形学関係の図書を読み漁ると不信感は増すばかりであり、南アルプスルートが地震対策として有効である積極的な根拠はなかなか見当たらない。
むしろハッキリと
「時速500キロ運転を実現させて優越感に浸りたい」
「名古屋のために沿線は協力しろ!」
とでも言ってくれた方がスッキリしている気がする。