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Channel: リニア中央新幹線 南アルプスに穴を開けちゃっていいのかい?
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不審点だらけの「第四南巨摩トンネル」着工…ムチャだろう

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山梨県富士川町と早川町とをまたぐ第四南巨摩トンネルの西工区について、建設工事が来意年春から始まることになったそうです。

以下、NHK山梨の報道です(12月15日)。
リニア中央新幹線の建設をめぐってJR東海は、巨摩山地を貫く「第四南巨摩トンネル」のうち、西側のおよそ2.6キロの区間について、来年春から着工することを明らかにしました。
「第四南巨摩トンネル」は、巨摩山地を貫く富士川町から早川町までの全長およそ8.6キロのトンネルです。
このうち、西側のおよそ2.6キロの「西工区」について、JR東海は来年春から着工することを明らかにしました。
 JR東海によりますと「西工区」は最も深いところで地上から700メートルに達します。
本線と分岐する連絡坑も掘削するため、断面積は最大でおよそ300平方メートルに及び高度な施工技術が必要だということです。
 JR東海は、来年春に早川町で資材置き場などの整備を進め、来年秋に非常口の掘削から始めることにしていて、工期は平成38年までとしています。
 一方、このトンネル工事でおよそ94万立方メートルの土砂が発生すると見込まれ、南アルプスを貫くトンネル工事で発生する土砂を合わせるとおよそ325万立方メートルに達し、置き場が確保できているのはおよそ1%にあたる3万立方メートルだということです。
 JR東海は「地域との連携を密にしながら工事の安全と環境の保全に十分配慮したい」としています。
 

JR東海の公表した
中央新幹線 第四南巨摩トンネル(西工区)工事における環境保全について」 

に、工事概要、工事工程表、環境保全策が記載されているのですが、実に不審点だらけです。

・水源対策はどうするのか?
・茂倉鉱山跡地を通過するが問題ないのか?
・早川渓谷景観保全地区に与える影響や山梨県景観保全条例との整合性はどうなっているのか?
・ユネスコエコパーク制度との整合性は?

全然書かれていません。

報道には【このトンネル工事でおよそ94万立方メートルの土砂が発生すると見込まれ、南アルプスを貫くトンネル工事で発生する土砂を合わせるとおよそ325万立方メートルに達し、置き場が確保できているのはおよそ1%にあたる3万立方メートル…】 とあります。

この膨大な発生土については、山梨県との共同事業である早川芦安連絡道路の盛土造成および芦安温泉での駐車場造成に使う見込みとしています。けれども同道路の建設計画はまだ具体化していないし、そこまでの道路拡幅工事も始まっていません(先日山梨県が事業費を計上)。

というわけで、いつ運び込むことになるのか分からないし、そもそも、本当に使えるかどうかも分からないはず。それなのに「使えるはずだ」として工事に踏み切り、裏付けのない作業工程表をも公開する…

いまだ未定のことだらけなんだから、工程表はあくまで案として住民に提示し、そのうえで事業計画を策定すべきではないでしょうか?

おかしな話だと思います。

おかしいといえば、さらにおかしな点もあります。

本線と分岐する連絡坑も掘削するため、断面積は最大でおよそ300平方メートルに及び… 

この連絡坑の存在は、環境影響評価の過程では全く出てこなかったのです。公的には、入札がはじまって以降、初めて明らかになったのですが、このほど発表された「中央新幹線 第四南巨摩トンネル(西工区)工事における環境保全について」 においても、場所や構造は不明のままなのです。

イメージ 3
中央新幹線 第四南巨摩トンネル(西工区)工事における環境保全について」より複製・調整 
「連絡坑」の位置等は全く示されていない 

これはひどい。

ちょっと振り返ってみます。

工事入札時の報道では、「本線と分岐する連絡坑」とは、富士川町高下地区に計画されている保守基地に接続するとされていました。

建設通信新聞 2016年7月21日
 西松・青木あすなろ・岩田地崎JVに/リニア第四南巨摩トンネル(西工区)
「工事範囲に本線トンネルのほかに保守基地への連絡坑を含み、トンネル内に本線から保守基地への分岐装置を設ける必要があるため、トンネルの最大断面積が約300㎡以上と大きな断面積を必要とする区間がある」とし、「高度な施工技術を必要とする工事」


分岐装置の西端(?)が第四南巨摩トンネル西工区に設けられることになります。しかし保守基地が設けられるのは。同トンネル東坑口よりさらに1㎞弱東側に離れた場所。つまり分岐装置から保守基地までは実に7㎞!
分岐装置および”連絡坑”の推定位置 
「保守基地への連絡坑」が西工区で分岐するのなら、紫の点線のようになるはず。
同じ縮尺で東海道新幹線・浜松車両工場への引込線を掲載 

たかだか線路を分岐させるだけなのに、なんでこんな大掛かりな構造になるのでしょう?

ちょっと試算してみます。
①西工区で掘られるのは、本坑(掘削断面積107㎡)約8600m、非常口(斜坑:同68㎡)約1800mとなっています。この数字を基に考えると、本体掘り出されるのは60~70万立米程度になるはずです。
②いっぽう「第四南巨摩トンネル」東工区(富士川町高下地区)に掘り出される発生土量は、延長が約6000mなので、本来は90~100万立米程度になるはずです。
③しかし評価書によると、西工区での発生土量は94万立米、東工区で181.9万立米。合わせて275.9万立米。 

つまり本来の第四南巨摩トンネル全体での発生土量は150~170万立米の程度のはずなので、実際の発生御良は100万立米も過大。これが「本線と分岐する連絡坑」から掘り出されるのでしょう。

また①より、「本線と分岐する連絡坑」のうち、東工区に出される分は推定80万立米。延長6000mとすると、連絡坑の推定断面積は90㎡となります。これは南アルプスでの先進坑や斜坑よりも大きく、本坑に相当する規模となります。

事実上、第四南巨摩トンネルは複線になるといえるでしょう

こんな巨大なトンネルの存在を隠していたJR東海の姿勢も問題ですが、そういう体質である以上、環境影響評価書の妥当性もアヤシクなります。

【環境影響評価項目全般】
騒音・振動、工事車両通行台数、動植物への影響等、連絡路の存在を考慮していたのか?

【景観予測】
等高線から推定できるように、保守基地は地上構造になるはずです。実際、発生土で谷を埋め立てて造るとしています。ですから高下地区には、連絡坑の出口とそこからのびる軌道が設けられるはずです。

感覚的にはこんな具合になるはず。
イメージ 1
新東名高速道路のトンネル建設現場(静岡市葵区 2011年撮影) 
高下地区には、このように大断面トンネルが2本口を開けるに違いない。 

しかし景観予測にあった、高下地区の地上区間を西方より見下ろしているイメージ図…
イメージ 2

山梨県編 環境影響評価書 景観より複製・加筆・調整 
高下地区西方より富士山方向を望んだもの 

では、完成後の高架橋を書き加えてあるわけですが、保守基地に向かう連絡路は描かれていません。これは疑わしく感じます。

【水環境】
もっと怪しいのは地下水や河川への影響予測です。構造が不明である以上、予測結果の妥当性が疑わしい。

JR東海は、環境影響評価の段階では同トンネル工事に伴う河川流量・地下水位への影響予測は行っておらず、2012年3月に山梨県知事から「評価書に記載するように」という意見が出されました。しかし明確な理由もなく補正評価書(2014年8月)までには記載せず、昨年11月の「巨摩山地水収支解析結果」にまで遅れました。

その結果によると、同トンネル東工区の西側半分が貫く大柳川では、流量が現状より20%減るとしています。(なお東工区の東側半分が貫き、水道の水源となっている清水沢については、予測すらしていません。)
仮に東側工区で掘られる断面積を200㎡とした場合、超・大断面で200㎡1本にした場合と、100㎡の大断面トンネル2本にした場合とでは、壁の面積が大きく異なります。

単純な半円と仮定して比較すると
200㎡のトンネル1本の場合⇒外周は約58m
100㎡のトンネル2本の場合⇒外周は2本で計約82m

つまりトンネルの壁面積は1,4倍になります。壁の面積が広ければ、当然、湧き出してくる水の量も増え、地上への影響も大きくなるでしょう。

影響予測において、トンネル構造について考慮しているのでしょうか?




そもそも、どんな工事が行われるかという最も基本的なことを伏せていることになり、これは悪質だと思います。山梨県当局より適切な情報公開がなされていたとも言い難いようですし・・・


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