あけましておめでとうございます。
新年早々、ブツクサと文句ばかりでスタートであります。
今年はリニアの名古屋開業まであと10年とされております。なんだか知りませんが、今までリニア計画は西暦の一桁が7となる年に、大きく動いてきたように思えます。
過去を振り返ると、
1967(昭和42)年8月31日
国鉄は全国新幹線鉄道網構想を発表。東京-名古屋-大阪を一直線に近いルートで結ぶ”東海道第二新幹線”を含む。
国鉄は全国新幹線鉄道網構想を発表。東京-名古屋-大阪を一直線に近いルートで結ぶ”東海道第二新幹線”を含む。
1977(昭和52)年4月16日 宮崎実験センターの開所式。
1987(昭和62)年4月1日 国鉄民営化。JR東海発足。
1997(平成9)年3月 山梨リニア実験線の先行区間18.4kmが完成し走行実験開始。
2007(平成19)年4月26日 JR東海はリニア中央新幹線構想を発表。2025年度に東京-名古屋間、2045年に名古屋-大阪間を開業する計画。
となっており、今後は
2027年 品川-名古屋間での先行開業の予定(2年先送り)
2037年 品川-大阪での全区間の開業予定(8年前倒し)
となっております。
今年2017年は、南アルプス本体でのトンネル掘削工事が計画されております。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
昨年は11月に財政投融資の話が決まりましたが、相前後して南アルプストンネル西側の大鹿村をはじめ、名古屋駅、岐阜県日吉トンネルと、次々に”起工式”が行われました。報道だけ追ってゆくと、10年後の品川-名古屋間開業に向けて順調に進んでいるかのようにも見えます。
そのいっぽうで、地元住民の同意を得ることなく、頭越しに手続きだけを先行させるやり方に固執しているため、実際の土木工事が進められる状況にはないようにも見えます。
実際、南アルプス横断トンネルについては、山梨・静岡・長野3工区での発生土量の合計約1500万立米に対し、現時点(2016年末)で搬入先を確保し、法的にも手続きを終えたのは早川町の塩島地区での3万立米だけ。わずか0.2%に過ぎません。発生土の行き先が決まっていないのに、掘削工事を始めることだけは盛んに喧伝しているわけで、これでは懸念をもつ地元としては、同意など不可能でしょう。
さらに、広範囲で測量自体を拒んでいる地区、トラスト運動の始まった地区もあり、国土交通大臣による事業認可を取り消す訴訟まで起きており、問題はこじれる一方にあるようにみえます。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ところで今年の冬は暖冬でして冬型気圧配置が続かず、頻繁に低気圧が通過し、太平洋側でもまとまった雨が何度も降っています。南アルプス南部の静岡市井川では、12月に入って24時間降水量70㎜以上となった日が3度ありました。
井川地区と周辺では、この3回の雨により県道沿いで土砂崩れが多発し、それぞれ数日間ずつ通行止めとなりました(15日横沢、17日・23日田代、28日大間。
土砂崩れの起きた県道は、静岡市街地から南アルプスへ向かう経路に当たります。また、土砂崩れと関係なく、あちこち補修工事で通行規制だらけです。南アルプスの入り口手前に過ぎないものの、道路事情はこれほど悪いのが現状なのです。
http://www.city.shizuoka.jp/000_002238.html
http://www.city.shizuoka.jp/000_002238.html
リニアの工事予定地は、今回の土砂崩れ現場よりも、さらに40~50㎞も山を分け入った奥地になります。JR東海が静岡市側の南アルプスで大工事を行うのなら、過去に行われた井川ダムや畑薙第一ダムの建設と同様に、まずは道路を整備する必要せねばならないでしょう。そうしないと年間を通じたアクセス自体が不可能でしょう。
延々数十キロもの道路沿いの地質調査や環境調査を行い、そのうえで環境保全措置を検討して道路整備に着手。場合によっては橋やトンネルを新設する必要があるかもしれない。
…いったい何年かかるのでしょうか?
そしてもちろんのこと、リニア本体工事に伴う大井川の流量減少対策や、発生土置場の安全性確保と生態系・景観保全策を打ち出さねばならない。ユネスコエコパーク制度との整合性も求められる。技術的にも法的にも前代未聞の事業内容となります。
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こんなことを考えると、”2027年開業”どころか、地区によっては2027年までに着工できるかどうかもあやしいように見えるのです。
先が見通せないといえば、年の瀬も押し迫ってから、こんな興味深いニュースが報じられました。
Yahoo!ニュース
情報の出所 国土交通省
外出する人が調査開始以来最低に~平成27年度全国都市交通特性調査(速報版)の公表について~
http://www.mlit.go.jp/report/press/toshi07_hh_000101.html
外出する人が調査開始以来最低に~平成27年度全国都市交通特性調査(速報版)の公表について~
http://www.mlit.go.jp/report/press/toshi07_hh_000101.html
何でも年を追うごとに、休日に外出する人が減少傾向にあるというのです。
ちなみにリニア計画推進において、かつて沿線自治体が依拠してきた専門家会議の「中央新幹線沿線学者会議」の総括では、こんなことを述べておりました。
IT革命によって、人の移動はそれほど必要でなくなると考えられがちだが、実はその逆で、より高度な経済社会活動を展開するためには、人と人とが実際に会って、フェイス・トゥ・フェイスの交流を行うことがますます必要なのである。情報を入手しやくすくなるろ、それに比例して、「実際に行ってみる」というニーズが生まれる、それがわれわれ人類の歴史である。そして21世紀の日本の国土にそれを可能にしてくれるのがリニア中央新幹線なのである。
「リニア中央新幹線で日本は変わる」
中央新幹線沿線学者会議(2001年)PHP出版より
中央新幹線沿線学者会議(2001年)PHP出版より
確かにネットの普及により、ビジネス等で実際に会ってみる必要が増える人もいるでしょう。しかし、全般な傾向としてそうなるかというと、どうも現実は逆らしい。
考えてみれば当然というべきか、どこか行ってみたいと思っても、そんな湯水のごとくカネを使えるはずがない(笑)!
それにネットが普及してきた背景は、そもそも実際に出かけるのが大変/面倒、面と向かって会うのがイヤだけどつながっていたい、という人間心理の存在があると思います。その心理を無視しちゃうのは乱暴な議論だと思います。
…といっても、それは2017年の今だから分かることであって、十数年前の時点では、今とは違う考え方だったのかもしれない。
とにかく、社会の変化がものすごく激しい時代に「たかだか15年先を見通すことすら困難だった」という事例としてあげておきます。
クリック一つで商品が迅速に届く、グーグルアースで行った気になってしまう…なんて時代が来るとは、ちょっと前なら夢物語だったわけだし、今後はVRやAIの普及が外出機会にどんな変化をもたらすか、全く予測がつかない。大晦日には米アマゾン社が、巨大気球とドローンを組み合わせた斬新な配達システムの特許を獲得したというトンデモニュースまで目にしました。
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冒頭に記したように、リニア計画の発端は50年前の構想にあります。10年どころか2~3年先すら見通せない時代になってきているのに、50年前の構想をそのまま20年、30年も先に実現させようとするのは、かなり無謀なんじゃないのかな。
そんなことを考えた年末年始なのであります。