「土管列車」について、ネット上では、ああだこうだと話題になっているようです。
ああした構造にせざるを得ないというのは、やっぱりお天道様のもとを堂々と走ることに自信がないことの表れなのでしょう。
●磁界が周辺に及ぼす影響に不安がある
●ガイドウェイ内に何かが侵入することに対して不安がある
●走行時の騒音対策に不安がある
●トンネル進入時の音に不安がある
●天候対策に不安がある
●ガイドウェイ内に何かが侵入することに対して不安がある
●走行時の騒音対策に不安がある
●トンネル進入時の音に不安がある
●天候対策に不安がある
本当に快適で、周辺環境に調和できる移動システムならば、わざわざあんな醜悪な「巨大土管」構造にする必要なんてないわけです。
さて、ネット上で配信された新聞記事では「車窓を楽しめない」と、乗客に主観を置いています。おそらくは東京・名古屋の人々を念頭においているのでしょうが、この書き方では車窓を楽しめないことが問題であるという印象を受けます。しかし「巨大土管」の影響をこうむるのは明らかに沿線住民です。そもそも景観については、環境影響評価(アセスメント)において調査・評価対象となる事項であり、まずは沿線の視点に立った報道がなされるべきでしょう。
環境アセスメントでは、景観については主に
①眺望ポイントからランドマーク(主要な眺望対象)を隠さないようにできるか
②周囲の景観と調和できるか
②周囲の景観と調和できるか
といったところが評価ポイントとなっていますす。
リニアの高架部分は高さ20m程度となります。そのうえに、高さ8m程度のコンクリート製フードがかぶせられます。
この写真のような感じですな。
このコンクリート製超巨大土管を、どのようにすれば「景観に配慮した構造」と見なすことができるのでしょうか。
私見では、非常に威圧的な構造で、周囲の風景とも調和していないように思われます。平地でも高さが30m近く、深い谷間ではそれ以上になるでしょうから、眺望ポイントからの視界をさえぎってしまうこともあるかもしれません。
ところが超伝導リニアは「巨大土管」にしなければ走行ができないわけですし、また、路線を曲げることも不可能ですから、抜本的な対策はほとんどありません。せいぜい色にこだわるとか、装飾をつけるとか。すなわち、解決方法は「解釈次第」としかいえないと思います。とはいえ、こんなものを、どのように解釈すれば「景観に配慮した構造」と見なすことができるのでしょうか?
長野県大鹿村には、小渋川の谷とその先の赤石岳とを一望できるスポットがあります。この小渋川の谷に、かような「巨大土管」が出現したらその眺望が台無しになるとの懸念も出ています。
詳細なルートが表明するにつれ、同様な問題が次々と出てくることでしょう。
ついでに言えば、日照問題とか巨大構造物による風系への影響(ビル風とか)なんかも気になります。
ところで、超伝導リニア技術を実用化するにあたり、国として審査した国土交通省の専門家会議「超電導磁気浮上式鉄道実用技術評価委員会」というものが設けられました。この委員会、議事録が公開されていないので、どういう審査が行われたのかさっぱり分かりません。
その委員会資料では、冒頭に掲げたような走行に関するこれらの不安について、「フードや緩衝工(つまり巨大土管)を設置することによって対処できる」と簡潔に言い切っています。
例えばトンネル進入時の衝撃音については
こんな具合です。
ところがこの巨大土管を設けることによって生じる様々な問題については、全く言及していないようなんですね。「周辺に人家が存在する場合においては150m級緩衝工を設ければよい」なんてあっさりと書いてあるわけですが、それによって未来永劫、景観が失われることなんかに気をとめたりする委員はいなかったのでしょうか。家の前に長さ数百mの巨大土管ができることを、何の疑問も抱かず受け入れられる人は、そうはいないと思いますが…。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
フードの記述に限らず、この委員会の資料からは、実験設備(山梨実験線)をそのまま巨大化すれば実用化が可能という考え方しか伝わってきません。そこからは、どんなことをしても受け入れられるだろうという思い込みが感じられてしまいます。あるいは推進する側(技術者、専門家、官僚、事業者)の一方的な論理とも言えるかもしれません。
「土管列車」の問題は、リニア計画を進める人々が、この超伝導リニアという技術が、社会・環境・景観の面においても受け入れられるのかという点にまで思考・考察を巡らせていないという、あるいはその点が議論されていないという、本質的な問題を象徴していると思います。