果たして大井川の流量減少問題とは、いつから関係者の間で認識されていたのだろうか?
という疑問の続きです。
前回書いたように、昭和49年7月に運輸大臣から国鉄に対し、南アルプスでの地形・地質調査をおこなうよう指示が出されました。国鉄民営化も鉄道総合技術研究所、鉄道建設・運輸施設整備支援機構が引き継ぎ、運輸省が国土交通省となっても続けられました。
JR東海の説明では、大井川での流量調査とは、その一環であったといことです。したがって国は、トンネル工事と河川流量との間に何らかの関係があると見越してのことであったはずです。
前回は、その調査を指示した張本人である国土交通省が、なぜか路線選定の段階で、全く水資源や河川流量について触れなかったという疑問を呈しました。そのことを計画段階環境配慮書で全く触れなかったJR東海の姿勢も問題でしょう。
さらによく分からないなのは静岡県の姿勢です。
静岡県内で、大井川の流量減少が大きな問題だと騒がれだしたのは、環境影響評価の結果が出された準備書公告の段階でした。平成25年(2013年)9月頃のことです。
あたかも、「2㎥/s流量減少をはじめて知った、そりゃ困る。」と言わんばかりの騒ぎようでした。
平成25年10月25日静岡新聞朝刊
※準備書公告から一か月後
ところが、準備書公告の3年前の中央新幹線小委員会には、静岡県はこんな資料を提出していたのです。
平成25年7月2日 第5回中央新幹線小委員会 静岡県提出資料
この資料、その他のページを含めて書いてあることは
●東海道新幹線の静岡空港新駅の実現
●リニア開業後の東海道新幹線サービス向上
を要望するだけのものです。わざわざ川勝県知事が赴いて力説しています。
つい4年前※まで「水返せ運動」で大騒ぎしていた大井川の下に長大トンネルを掘るというのに、まるっきり心配していません。
さらに、南アルプスルートが確定したのは同年12月15日のこと。大井川源流部で大工事を行うことが決まっていない段階で、河川法上の許可に協力するなどと言えるはずがない。
これは怪しすぎる。
※大井川源流(後にリニアトンネルの頭上になることが判明)の東京電力田代ダムから、環境保全のため年間を通じ放流することが実現したのは2006年1月1日。4年7カ月前のことである。
空港新駅建設とバーター取引したいという思惑は見え見えですが、そういう魂胆があるなら、この段階で大井川水問題に触れておくべきだったのでは?と思うのですが。
・・・とまあ、邪推ばかりしていますが、大井川流域の首長も3年後になって「流量減少は寝耳に水」という言い方をしているので、もしかしたら件の資料は、県の環境関係の部署とか流域自治体とは協議せず、県知事のワンマンショーのために作成されたものかもしれません。2010年当時は、まだ南アルプスを世界遺産に登録する動きが続いていたので、静岡市および環境関係の部署が周知していたら、こんな能天気な資料を許す可能性は低いとも思います。
豊洲ゴタゴタについての、3代前の東京都知事の会見を見ていたらそんな気がしてきました。