JR東海の主張は、
「大井川の水が2㎥/sトンネルに吸い込まれるおそれがあるとしているが、トンネルから地上に向けて延々12㎞の排水トンネルを設けるので、下流の水利用には影響が出ない」
というものである。
ところで、この行為が河川法でどう扱われるのか、さっぱり分からないのである。
常識的に考えて、川の水を減らす行為とはすなわち、川の水を使うことである。
河川法によると、水を使うために川から水を引き込む場合は、下流で全量を元に戻す場合でも多くの許可や手続を必要とする。
例えば大井川に堰を築いて2㎥/sを取水し、12㎞下流で川に落として発電するようなような計画の場合、以下のようなところが関係してくるようである。
第23条(流水の占用の許可)
第23条の2(流水の占用の登録)
第23条の3(登録の実施)
第24条(土地の占用の許可)
第26条(工作物の新築等の許可)
第23条の2(流水の占用の登録)
第23条の3(登録の実施)
第24条(土地の占用の許可)
第26条(工作物の新築等の許可)
第22条(流水占用料等の徴収等)
第35条(関係行政機関の長との協議)
第36条(関係地方公共団体の長の意見の聴取)
第35条(関係行政機関の長との協議)
第36条(関係地方公共団体の長の意見の聴取)
第38条(水利使用の申請があつた場合の通知)
第39条(関係河川使用者の意見の申出)
第40条(申出をした関係河川使用者がある場合の水利使用の許可の要件)
第41条(水利使用の許可等に係る損失の補償)
第42条(損失の補償の協議等)
第39条(関係河川使用者の意見の申出)
第40条(申出をした関係河川使用者がある場合の水利使用の許可の要件)
第41条(水利使用の許可等に係る損失の補償)
第42条(損失の補償の協議等)
第53条(渇水時における水利使用の調整)
第53条の2(渇水時における水利使用の特例)
第53条の2(渇水時における水利使用の特例)
もっと他にも該当する部分があるかもしれない。ちなみに2㎥/sを取水することは「特定水利使用(河川法施行令第2条第3号)」に該当し、国の許可を得ねばならない。
ところが国土交通省の見解では、リニアのトンネル工事で川の水が減っても、水を使う目的で流量を減らすわけではないから、第23条の「流水の占用」には該当しないという。
けれどもそれだと、法律で定められている23条以下の種々の手続き、河川管理者による把握、他の河川使用者との調整、補償、渇水時対応などは、河川法的には不問にされてしまうであろう。
なんだかおかしいと思うのだ。
例えば新たに取水の許可を申請した場合、先に取水している側から、「そんなに取られるとウチが困る」と異議が出されれば、協議を通じて適正な取水量や損失補償を決めなければならない。
あるいは過大な取水計画が申請された場合、河川管理者が「そんな取水量だと河川環境が著しく悪化する」と判断した場合は、適正な量に改めさせねばならない。
公共物である河川水を使用するのだから、そのぶん使用料を納めねばならない。
少雨で川の水が減った場合、それぞれ水門を調整して取水量を減らさねばならない。
これが河川法の大筋である。
けれどもリニアの場合、そんな配慮は法的に無用となってしまうのではなかろうか。
「渇水であろうと何だろうとトンネルに川の水を引き込みます。一定区間の水が永久に減ります。受け入れなさい。」といった調子である。そればかりか「水を減らすが渇水時の調整は水利用者間で話し合ってくれ。」となってしまう。
河川環境や河川使用者に対する配慮は希薄である。
ちなみに河川法施行令第16条の4には、「何人も河川を損傷してはならない」と定められている。
今のリニア計画は、明らかに大井川を、物理的にも、環境面でも、水利権の上でもぶっ壊すのだから、工事を許可してはならないと思うのだ。