Quantcast
Channel: リニア中央新幹線 南アルプスに穴を開けちゃっていいのかい?
Viewing all articles
Browse latest Browse all 483

大井川・水を戻すことより水を減らさない方法を考えてくれ

$
0
0
もう間もなく「大井川導水路案・工事用道路トンネル計画」についての静岡県知事意見が出されると思いますが、何度も繰り返しているように、この導水路案は
①出口より上流の環境保全に役立たない
②余計な環境破壊を増やす
③利水対策としても不十分

という欠点があります。

こんな案に固執するのではなく、まずは河川への影響を少なくする術を考えるべきでしょう。


現在のトンネル配置計画を見ていただきたいのですが、南アルプスに計画されているトンネル群は、どういうわけか南アルプスの中でも相対的に標高の低い部分に集中しています。また、小河内岳や悪沢岳付近での土被りを1400m程度に抑えたところ、大井川での土被りが400m程度にまで小さくなってしまっています。

それは事業者の施工上の都合であって、周辺環境つまり河川への影響回避を考えたものではありません。
(この点、極力谷を避けて地下深く建設された結果、谷筋でも土被りが1000m以上、最大2500mとなったスイスのゴッタルドベーストンネルとは異なる

イメージ 2
添付図表1 南アルプスの位置 
二軒小屋付近を拡大 
イメージ 1
添付図表3 二軒小屋付近のトンネル配置計画 
国土地理院ホームページ 電子国土Webより複製・加筆 

トンネルと河川との位置関係について見てみます。

本坑および先進坑を東から見てゆくと、大井川の源流の一つである西俣の真下となる部分が1㎞以上に及ぶし、その先でもしばらく西俣に沿って掘り進めた上、もう一度西俣をくぐり抜けることになっています。

千石非常口(二軒小屋ロッヂの南)は、小さな土被り(たぶん100m未満)で大井川本流をくぐり抜けたうえ、約2㎞にわたって西俣のすぐ下を掘り進める構図となります。

西俣に注ぐ主要な支流である蛇抜沢には本坑・先進坑に加え西俣斜坑の計3本が交差し、同じく主要な支流の悪沢では、本坑・先進坑に加え、工事用道路トンネルと導水路トンネルと計4本が交差することになります。

また、この南アルプストンネルは、長野県側では小河内沢という川に約4㎞にわたって沿う構図となります。しかも緩く蛇行している小河内沢をと3回も交差し、しかも土被りが100m未満となる箇所があります。
イメージ 3
添付図表3 長野県大鹿村内 小河内沢とトンネルとの位置関係 


ところで土木工学の分野で使われている「高橋の式」なる経験則というものがあるそうです、それによると、トンネルを掘った際に地下水に影響を及ぼす範囲の断面形状は、トンネルを頂点として上に開いた放物線で示されるとのこと。そして深ければ深いほど影響は広く弱く、浅ければ浅いほど影響は狭く強くなるものらしい。

したがってトンネルはできるだけ川から離し、交差部分ではできるだけ深くるような配置にしたほうが、頭上の河川への影響は小さくできるはずだと思います。

しかし現在のトンネル配置計画を眺めると、延々川に沿っていたり、浅い土被りで川と交差させたり、ひとつの川に3~4本のトンネルを集中させたりしているのですから、わざわざ湧水量を増やしているかのようにさえ見受けられます。少なくとも河川への影響を考えて決定されたとは考えにくくいのです。

ところで環境影響評価書への国土交通大臣意見では、次のようなことが書かれていました。

イメージ 4
添付図表4 評価書に対する国土交通大臣意見とJR東海による見解
環境影響評価書より複製  

河川流量への影響を最小限に抑えるため、「水系の回避も含めて検討すべき」というものです。

国土交通大臣意見(実質は環境大臣意見)をよく読むと、「河川流量の減少及びこれにより生ずる河川の生態系や水生生物への影響は、重大なものとなるおそれがあり、また、事後的な対応措置は困難である」と書かれています。このような事態を避けるために、「水系を回避又は適切な工法及び環境保全措置を講じること」としています。

ところがJR東海は、「水系の回避」は(少なくとも表向き)検討せず、工法について再検討したわけでもありません
イメージ 5
添付図表5 第2回大井川水資源対策検討委員会資料
JR東海ホームページより複製 

自ら招いた専門家の推薦を得たとして、「導水路で下流に水を流せば下流の利水への影響は及ばない」という理屈で、延々12㎞もの導水路トンネルを掘る案を正式な案として今年1月に静岡県に提出し、間もなく県知事意見が出されようとしているところです。

JR東海の導水路案では、導水路出口より上流へは役立たないという致命的な欠陥があります。このため上流の水力発電所への影響を回避できず、利水対策として不十分なのです。構造上、ポンプアップしようと、西俣非常口より上流への対策には役立たない。それは大井川水系で最も河川環境の良好な西俣最上流部を見殺しにするような案でもあり、環境保全措置として適切とは言えない。

さらに長野県側にいたっては「監視体制をとる」以上の対策は考案していないので、万一流量を減少させた場合は、現時点ではどうしようもない。

◇   ◇   ◇   ◇   ◇ 

こうしたムリな保全措置に終始しているのは、そもそも先に見たように、大井川地下の浅いところに、あたかも水を抜くためのような位置関係でトンネルを集結させているためです。

トンネル配置計画は見直すべきでしょう。 

しかし最善の回避方法である「水系の回避」を検討せず、不十分な導水路案に固執するのはなぜか?

大臣意見にさえ十分な検討をしていないのはなぜか?

このあたりにリニア計画の本質的なムリが見え隠れしているように思えます。


Viewing all articles
Browse latest Browse all 483

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>