昨日、今年1月にJR東海が静岡県に対して提出した環境調査結果(大井川の導水路計画や工事用道路トンネル位置変更)に対する静岡県知事意見が出されました。
しかし静岡県庁のホームページにはいまだに掲載されず、どんな内容なのか確かめようがありません。流域自治体や水利権者は、独自の動きを活発化させているようです。
ところで全く話が変わりますが、南アルプス長野県側の大鹿村の工事について調べていて、妙なことに気付きました。
大鹿村では昨年10月から11月にかけての2ヵ月間、異常にバタバタとしたペースで話が進み、あっと言う間に着工に同意となりました。
時系列に書くと次の通り。
9月7日 JR東海は、長野県大鹿村での工事説明会を行う。南アルプストンネルの準備工事は秋から、本体工事は年明けから始めたいと説明。
(南信州新聞)
9月13日(?) JR東海は「大鹿村内発生土仮置き場における環境の調査及び影響検討の結果について」を公表。
9月15日 長野県庁にて平成28年度第5回技術委員会が開かれ、大鹿村内発生土置場について議論。
10月3日 長野県大鹿村はJR東海に要望書を提出。村長と村議会とが合意を表したうえで工事に取り掛かるべき、トンネル工事着手前に発生土処分地を決定させるべきなど8項目。
10月14日 JR東海は長野県大鹿村で工事説明会を開催。これが最後の説明会とし、「住民の理解は得られた」との考えを強調するが、住民からは「納得できない」という声。また同月3日に大鹿村から提出された意見書に対し、「基本的には村の意見を尊重する」と口頭で回答したことを明らかにした。
10月17日 JR東海は3日に大鹿村から提出された意見書に対する 「工事用車両通行等に関する確認書(案)」を大鹿村に提出。
10月18日 大鹿村は、前日にJR東海の示した確認書に対する修正案を返信。
10月19日 大鹿村村議会は非公開の全員協議会(8名)を開き、議長を除く7名のうち4名が賛成を示しことから条件付きで確認書を承認。JR東海と大鹿村は確認書を締結。
10月21日 大鹿村は工事に合意。
同日 第6回長野県環境影響評価技術委員会は「大鹿村内発生土仮置き場における環境の調査及び影響検討の結果について」についての県知事意見(助言)の案を提示。
10月24日 JR東海は「中央新幹線南アルプストンネル新設(長野工区)工事における環境保全について」を公表。
11月1日 大鹿村にて南アルプストンネル長野工区の起工式が催される。
11月9日(?) 長野県は 「大鹿村内発生土仮置き場における環境の調査及び影響検討の結果について」をJR東海に送付。
11月10日 第8回長野県環境影響評価技術委員会で「中央新幹線南アルプストンネル新設(長野工区)工事における環境保全について」について議論される。
大鹿村は、大量の工事用車両が村内を通行することなどから、建設工事による環境破壊が強く懸念されています。他の市町村と比べ、情報公開も積極的に行われてきたという印象があります。
ところがその大鹿村がこの9月以降、モーレツな勢いで建設容認に動いたのでした。傍から見ていても拙速という感じで、10/17にJR東海から工事用車両通行等に関する確認書(案)が提出されてから、わずか4日後には着工合意にまで突き進んでいます。
この間、村民が確認書案と村からの絵hん等を目にする機会はほとんどなかったでしょう。そればかりか、発生土仮置場に対する県知事からの意見が出てくるよりも前に着工合意に達してしまったので、ここまでくると拙速というより不自然さを感じます。
これは11月1日の起工式に合わせていたのではないか?
あるいは、この後11月15日に閣議決定された独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構法の改正(JR東海への3兆円財政投融資のため)に向けてのパフォーマンスじゃないか?
と思っていましたが、調べてみると何だかアメリカに向けたメッセージの影がちらつく。
以下、11月の出来事になります。
11月6日 読売新聞に葛西敬之JR東海名誉会長の寄稿「高速鉄道の未来 リニアが生む飛躍と活力」 が掲載される。
11月7日 名古屋市中区で立坑の起工式。
11月8日 来日中の米オバマ政権のアンソニー・フォックス運輸長官は、石井国土交通大臣と共に山梨県内のリニア実験線に試乗。
http://toyokeizai.net/articles/-/92595
http://toyokeizai.net/articles/-/92595
11月15日 リニア中央新幹線の整備を促進するために行う、財政投融資資金の貸付けに関し必要な事項等を定めるため、「独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構法施行令及び国土交通省組織令の一部を改正する政令」を閣議決定。
http://www.mlit.go.jp/report/press/tetsudo03_hh_000077.html
http://www.mlit.go.jp/report/press/tetsudo03_hh_000077.html
11月16日 首相官邸にて安倍総理、トム・ダシュル米民主党上院院内総務、葛西敬之JR東海名誉会長らが3者会談。(11/15朝刊 読売新聞の首相動静より)
同日 JR東海は同月18日に、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構に3兆円の借り入れを申請することを決めたと発表。
11月17日 安倍首相が訪米、トランプ次期大統領(当時)と会談。
同日 JR東海の葛西名誉会長が京都市内で開かれた会合においてアメリカ東海岸リニア構想について意義を強調。
11月18日 改正された独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構法が施行される。
11月24日 JR東海は独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構から29日に5000億円を借り入れる契約を結んだと発表。
今年2月に入り、日米首脳会談にてトランプ政権に対し、リニアを積極PRしてきたのはご承知の通り。この前後、アメリカでのインフラ整備に年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)GPIFから多額の投資を行うのではないか、という話がちょっとした騒動になりました。
また、次の動きも怪しい。
9月9日 午後6:39 安倍首相は東京・築地のスッポン料理店にて葛西敬之JR東海名誉会長、北村内閣情報官と会食。 (読売新聞9/10朝刊 首相動静より)
こののち、異常なスピードで物事が進むこととなったわけで・・・。
いやまあ、ハッキリしたことが言えるわけじゃないのですが、森友学園騒動を連想してしまうような拙速振りであり、何か裏があるんじゃないかと思って時系列に並べてみたら、こんな具合だったというわけです。
以下は作者の想像ですが、どうも、
安倍首相が(11月中旬に決まると目された)米次期大統領を訪問する際、手土産にリニアをPRすることが決まり、
それに向けてアメリカ政府にリニア計画の順調振りをPRする必要があり、
そのためにJR東海が資金的にも順調であることを示す必要があり、
よって財政投融資を首相訪米までに実現する必要があり、
そのためには最難関の南アルプストンネル(大鹿村)と大深度地下トンネル(名古屋)が着工済みである必要があり、
そのために11月初頭には大鹿村で南アルプストンネル起工式を終えている必要があり、
そのために、大鹿村での異常な拙速に陥ったのではないか?
そんな想像をめぐらしています。