4月28日に開かれた”ストップ・リニア訴訟”の第4回口頭弁論の様子が報告されているのですが、
http://shuzaikoara.blog39.fc2.com/blog-entry-551.html
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その場で裁判長が、被告となっている国土交通省に対し、
「どういう施設がどういう場所にできるかは、原告適格の問題にも絡むし、どういう被害が起こるかの前提でもある。そもそも、どういう場所にどういう施設を造るものとして事業認可されたのか? それが国から明らかにするのはどうでしょう?」
「どういう施設がどういう場所にできるかは、原告適格の問題にも絡むし、どういう被害が起こるかの前提でもある。そもそも、どういう場所にどういう施設を造るものとして事業認可されたのか? それが国から明らかにするのはどうでしょう?」
と投げかけたそうです。
これが非常に気になりました。
実際、リニア中央新幹線の環境影響評価においては、多くの施設について具体的計画に乏しいまま手続きが終了しています。
事業者であるJR東海は、法に基づく環境影響評価手続きの第一段階である方法書においては、「詳しい説明は準備書で示す」としながら、準備書段階では「評価書で示す」とした。しかし評価書でも具体的内容に乏しいまま事業認可を受け、結局は「着工前の説明で行う」としてしまった。結局、事業計画に住民や地元行政の意向を反映させることができたのかどうか、疑問が残るまま”着工”を迎えつつあります。
どれだけ明らかになって、明らかにされなかったのかを考えるべく、ちょっと検証。
地上での改変区域に限って、環境影響評価の対象となった改変面積を簡単に見積もってみます。
●軌道31.6㎞
用地幅22mを掛けると69.52万㎡となる。
●6駅
岐阜のみ6万㎡他は3.5万㎡。計23.5万㎡
●車両基地2地点
神奈川と岐阜。合計115万㎡
●変電施設
大都市部0.5万㎡その他3万㎡。計22万㎡
●保守基地等
合計18.4万㎡
●坑口の施工ヤード(約1万㎡)
非常口(都市部)⇒16地点 計約16万㎡
非常口(山岳部)⇒29地点 計約29万㎡
トンネル坑口⇒43のトンネルに計86か所 約70万㎡と推定
非常口(都市部)⇒16地点 計約16万㎡
非常口(山岳部)⇒29地点 計約29万㎡
トンネル坑口⇒43のトンネルに計86か所 約70万㎡と推定
ここまで合計で345万㎡。その他、静岡県内での宿舎や燕沢発生土置場候補地(図面から14万㎡と推定)を含むと、400万㎡近くになるのでしょう。
いっぽうで、事業認可後に計画が具体化ないし明らかにされてきたのは次のようなものです。つまり法に基づく環境評価がなされなかったもの。いくつかパターンがあります。
A 環境影響評価の段階では位置を定めることが困難として、事業認可までの環境影響評価の対象にされなかったもの。つまり通常の手続きは踏んでいない。
●発生土置場
5000万立米程度。平均20mの厚さで積み上げても250万㎡の用地が必要である。砂防施設等も必要になる。ちなみに長野県豊丘村の本山地区発生土置場候補地では、130万立米を処分する敷地面積は8万㎡で、平均盛土高さ約16mとなっている。
●発生土仮置場
現時点で明らかになったのは大鹿村3地点の計3.37万㎡、早川町の2地点計1.93万㎡⇒合計5.3万㎡
●大井川の導水路
B リニア中央新幹線を実現するために不可欠な施設であるが、環境影響評価の対象とならなかったもの
●早川芦安連絡道路
●早川芦安連絡道路
山梨県南アルプス市と早川町:3740mのトンネル新設など延長4980mの道路整備。大規模盛土を伴う。
●豊丘村佐原地区の電気関係施設
●豊丘村佐原地区の電気関係施設
詳細が不明であるが8~9万㎡という情報あり
●恵那市の電気関係施設
●恵那市の電気関係施設
詳細は不明であるが11~12万㎡という情報あり
●送電線
●送電線
詳細は不明であるが山梨県内47㎞、長野県伊那山地11㎞。
●県道松川インター大鹿線改良工事
●県道松川インター大鹿線改良工事
長野県中川村:トンネル新設2本計2079m、道路拡幅220m
C 扱いがよく分からないもの。少なくとも現段階では、法に基づく環境影響評価は行なわれていない。
●ガイドウェイ製造施設(長野県高森町:7.7万㎡)
●相模原市の既存変電所移転(現変電所の面積は約1.8万㎡)
●ガイドウェイ製造施設(長野県高森町:7.7万㎡)
●相模原市の既存変電所移転(現変電所の面積は約1.8万㎡)
非常に大雑把ですが、こうした関連施設に伴う改変面積だって300万㎡以上となるでしょう。さらに今後、住居・各種施設・農地等の移転、河川・道路の付け替えだって必要になってくる。
いずれもJR東海リニア計画に不可欠であり、多かれ少なかれ、建設費用を何らかの形でJR東海が出しています。だからリニア建設事業の一環じゃないかと、はた目には見える。
改変面積の半分近くは法に基づく環境影響評価がなされていない?
半分しか調査していないとみられるのに、国土交通省はどうやって「環境の保全についての適正な配慮がなされるものであるかどうかを審査(環境影響評価法第33条)」したというのでしょうか?
国が定めた、環境影響評価の内容についてのマニュアル「鉄道の建設及び改良の事業に係る環境影響評価の項目並びに当該項目に係る調査、予測及び評価を合理的に行うための手法を選定するための指針、環境の保全のための措置に関する指針等を定める省令」というものがあります。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H10/H10F03901000035.html
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H10/H10F03901000035.html
バカみたいに長ったらしい名称ですので「技術指針」とでも呼んでおきます。
技術指針によると、”標準的手法”として、環境影響評価の対象となるモノは、「鉄道施設」としています。鉄道施設という言葉の正確な意味が分からないのですが、鉄道事業法施行規則第9条では鉄道線路、停車場、車庫及び車両検査修繕施設、運転保安設備、変電所等設備、電路設備としています。
JR東海のおこなった環境影響評価から漏れた諸施設は、この6種類からは外れているがために、法に基づく環境影響評価が不要と判断したのかもしれませんし、現在はそのような運用がなされているのかもしれません。
けれども、どれ一つが欠けても、リニアは完成しないのも事実。しかも関連施設とはいえ、実際に改変される規模は、本体工事に匹敵する。仮に本体工事での環境保全が適切であったとしても、残り半分が杜撰では、なんの意味もない。こうした構図の大型事業は、あまり前例がないのではないでしょうか?
こうした関連施設の取り扱いについて、裁判の争点になるんじゃないかと思うのであります。