全国的にはほとんど知られていないのでしょうか、こんどの日曜日は静岡県知事選挙の投票日です。
現職の川勝平太氏と新人の溝口紀子氏の一騎打ち、となっています。
そのお二人に、県内の市民団体がリニア中央新幹線の南アルプストンネル工事計画について公開質疑を行いました。
フェイスブックに結果が掲載されています。
(6/13 静岡新聞朝刊)
寸評については、私よりも先に、山梨のブロガーさんが上手にまとめておられるので、そちらをご覧いただきたいと思います。⇒無責任です(´∀`;)
私が気になったのは現職の川勝知事の基本的なお考え。
何でも、
多軸型の国土形成や東京・大阪間の交通のリダンダンシー確保等の国家的レベルの効果の みならず、県内の東海道新幹線駅における停車本数の増や空港新駅設置の可能性など、静岡県民の利便性の向上や地域の活性化が期待される。
というわけで、現行のリニア計画には賛成であるとのこと。
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出てきました。
空港新駅設置構想。
ちょっと調べてみたのだけど、空港新駅設置構想自体は、川勝知事の持論でもなんでもないらしい。
静岡空港を現在の島田市南部に設ける案が決定したのは昭和62年12月のこと。
それから2年たった平成元年12月16日の静岡新聞には、「静岡空港は190ha 県が基本計画発表 区域地図も」と題した記事が載ります。そこに当時の島田市長のインタビューがあるのですが、その中に「地元対策、周辺整備にかかわる土地利用、新幹線新駅の問題など、対応策についてじっくり検討したい」という記載があります。
また平成3年11月29日の静岡新聞には、「静岡空港の採択決定 6時空整「予定事業に組み入れ 平成12年開港目標」と題した記事が載ります。静岡空港が国の計画に組み込まれたらしい。その際、当時の斎藤滋与史知事は、空港新駅について次のように言及しています。
・・・このほか新幹線新駅の誘致について「初めから計画高層の中に入れて協力を願う方がよい。まだ運輸省サイドと話し合ったわけではないが、将来性のある空港として技術関係の方々も関心を持っているようだ」とJRに積極的に要望していく考えを示した。
そして平成5年8月には、県が取得する用地を決定するとともに、空港新駅の設置場所について2案を示しています。
つまり静岡空港を島田にもってくることが決まった段階で、既に空港新駅構想というものも胎動していたらしい。
ところが、このあと空港新駅の話題はとんと見当たらなくなり、県知事も石川嘉延氏に変わる。平成19年にはJR東海がリニア中央新幹線構想を発表。
そして平成21年2月15日。静岡新聞にこんな記事が載ります。
石川嘉延知事は24日の県議会2月定例会本会議で、静岡空港直下への新幹線新駅設置構想につちえ、「私はあきらめていない。これから大いに、JR東海に対して本県の主張をどんどん言うべき時だと思う」と強調した。田島秀雄氏(自民、熱海市)の一般質問に答えた。
石川知事は「(新駅の)問題について発言するのは、十年近く公式には封印してきた」とし、新駅問題が静岡空港批判に利用され、建設の支障になると考えたことが理由だったと説明した。開港が6月4日に迫ったことをうけて「封印を解除した」と強調。「おおいに県民世論を盛り上げ、JR東海の考え方を変えさせなければいけないのではないか」と述べた。
また、今後、リニア新幹線が現実化すると、現在の東海道新幹線のダイヤにゆとりができるとし、「空港新駅設置もダイヤ上の難点はなくなる」との見方を示した。
ふむふむ。現在の川勝知事のお考えとほぼ同じであります。で、はじめてリニアという言葉が出てきた。
ただ、この段階でリニアのルートは不明です。
JR東海が「南アルプスを通したい」と国に公式の場で表明したのは平成23年5月10日の第3回中央新幹線小委員会のことです。
その後、第5回中央新幹線小委員会の場に我らが川勝知事が登場。静岡県側が用意したプレゼン資料はこんなもの。
ここで初めて、南アルプスルートについての静岡県側の意向が表明されたのですが、なんだか知らなけど、南アルプスでの事業には積極的に協力したかったらしい。そして当然のように空港新駅設置を強く要望。
この二つをセットに考えると、どうしても南アルプストンネル工事は静岡空港新駅との交換条件、に見えてしまいます。
これは非常にまずかったのでは?
ところで、県議会のほうではどんなふうに議論されているかをちょっと調べてみたのですが、この平成23年5月前後に開かれた会議では、空港新駅なんぞ全く話題にあがっていない。
2、3の議員が、「南アルプスでの工事にあたり、アクセス道路の整備は観光に役立つのではないか」といった意見を出している程度です。このあたりの状況を踏まえると、どうも川勝知事(かその周辺)が、ここぞとばかりにワンマンプレーで十数年前の構想を引きずり出してきたんじゃないか、という気がしてならない。
で、結局は実現しそうになく、南アルプスの環境破壊は目前に迫る・・・。
改めて、空港新駅設置構想の経緯を眺めてみると、どうも、実現性の薄い構想に固執するがあまり、結局はJR東海の都合に振り回され、南アルプスや大井川の環境破壊だけという貧乏クジを引くことになったような気がしてなりません。
それゆえに、現在の川勝知事の御認識は甘すぎるんじゃないのかなあ~と思うのであります。