リニア計画の取り消しを求めた訴訟では、原告側から
地域の意見がくみ入れられないアセス手続きは違法だ!
という主張がされているようです。
http://shuzaikoara.blog39.fc2.com/blog-entry-558.html
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環境影響評価手続きとは、地元と協議を重ねつつ環境保全策を練ってゆく、という主旨の手続きであるのに、それができないような内容であるにも関わらず事業認可したことはまかりならん、というわけであります。
ブログ作者としては、違法性については分かりませんが、これにより2027年開業なんてのは絶対に無理であろうと思います。
リニア中央新幹線を早く整備すべきだ、または期待をもって見ている方々は、ぜひこの点に注目してほしい。これはビジネスとして重大なリスクではないかと思うのであります。
環境影響評価(アセス)の概念には、大きく分けて2段階あって、第一段階は、計画が定まっていない段階で複数案を検討しながら立地場所や導入すべきシステム等を決めてゆくもので、戦略的環境アセスメントと呼ばれています。この場合、事業をやらない、という案も検討されるべきとされています。
http://www.eic.or.jp/ecoterm/?act=view&ecoword=%C0%EF%CE%AC%C5%AA%B4%C4%B6%AD%A5%A2%A5%BB%A5%B9%A5%E1%A5%F3%A5%C8
http://www.eic.or.jp/ecoterm/?act=view&ecoword=%C0%EF%CE%AC%C5%AA%B4%C4%B6%AD%A5%A2%A5%BB%A5%B9%A5%E1%A5%F3%A5%C8
第二段階は、事業を行うことを決め場所等を絞り込んだ段階で、具体的な環境保全のための手法を考えてゆくというもので、事業アセスメントと呼ばれています。
http://www.eic.or.jp/ecoterm/?act=view&serial=1044
http://www.eic.or.jp/ecoterm/?act=view&serial=1044
なお日本の場合、基本的には事業アセスが法で定められた手続きとなりますが、2011年の法改正により計画段階環境配慮書の作成が義務付けられることにより、戦略アセスに準じた手続きがなされることとなりました。
リニア中央新幹線整備事業のアセス手続きがデタラメになっている原因は、計画の早期段階で事業アセスの手法を用いたことにあると思います。
良心的な事業者である場合は、早期段階でアセスを開始し、情報交換を積極的に行うことで、住民や地元自治体の要望を取り入れて、なるべく環境に配慮した事業内容にもってゆくということができるといわれています。つまり、みんなで話し合って事業の方向性を決めてゆこう、というわけです。だから一般論としては、計画が未熟でアセスを開始することは正論、とされているようです。
原科幸彦(2011)「環境アセスメントとは何か:岩波新書」p.133より
原科幸彦(2011)「環境アセスメントとは何か:岩波新書」p.133より
しかし、もとより話し合うつもりのない事業者、あるいは融通の利かない性格の事業であった場合は、単に情報隠しに終わってしまうのではないでしょうか。リニア計画の場合、その傾向が如実に表れ、問題が多発しているのだと思います。
つまり、どこに何を造るのか白紙の状態で法に基づくアセスを開始したため、具体的な調査・予測、環境保全措置を示すことができず、「適切に対応する」といった漠然とした方針を提示するだけであった。そしてそれで事業認可を受けた。
そして着工直前になって環境保全措置を提案してきても、すでにアセス手続きは法的に終了しているため、本来行われるべき審議を経ずに工事に取り掛かることが可能となっているわけです。
具体的な問題、というか疑念の例として、大井川の河川流量について概略を述べます。
静岡県を流れる大井川について、トンネル工事に伴い河川流量が源流域の広範囲で大幅に減少するという試算結果が準備書に掲載された。それなのに準備書には具体的な環境保全措置が掲載されていなかった(2013/9)。
このため静岡県知事よりJR東海に、具体的な環境保全措置を評価書に記載するよう求める意見書が出された(2014/3)。
しかし評価書(2014/4)においても具体的対策は示されず、そのまま事業認可となった(2014/10)。
事業認可から2年余りを経て、JR東海は「導水路案」を静岡県に提出した(2017/1)。
しかし導水路からの自然流下だけでは全湧水量を回復させることが不可能なうえ、導水路出口より上流部への対策とはならない。また水質保全の保証もされていない。したがって環境保全としては不確実性があるため、改めて県知事より河川環境維持について確約を求める意見書が出された(2017/4/3)。合わせて利水者団体等からも環境保全についての協定締結の要求が出されている(2017/3/13と31)
しかしJR東海は「環境影響評価手続きは既に終了している」という見解を示し、それ以上の有効な保全措置を出さなかった(2017/4/17)。
その後、JR東海は南アルプストンネル静岡工区の施工業者の募集を開始した(2017/6/7)。
⇒結局、大井川の環境が保全について、確たる取り決めも具体的措置も決まらぬまま、一方的に工事を開始することが可能となった。
大井川だけでなく長野県南木曽町や山梨県富士川町などにおける水資源保護についても同様ないざこざが起きています。
このほか、発生土置場を決めずに、あるいは発生土処分に伴う環境への影響を十分に考慮せずにトンネル工事を開始するようなケースもあちこちで問題となっています。
うがった見方をすれば、内容に変更の余地がない事業を、あたかもアセス手続きに則っているように(環境に配慮しているかのように)見せかけるために、情報公開を渋り続けているのかもしれません。すなわち事業計画・環境対策なんてものは最初から決まっていて、それへの批判を避けるべく、本来出すべきタイミングでの情報公開を避けたのではないか・・・?
要するにJR東海の姿勢ってのは、
「リニア事業は融通が利かないからアンタたちの言い分を聞きようがないのです。だから我慢してくだされ」
ってことにあると思います。
ってことにあると思います。
万事がこんなやり方であるから、地元としては、例え行政の意向としてリニア事業を推進させたくとも、軽々しく工事を受け入れることはできないと思います。というわけで2027年名古屋開業も不可能でしょう。っていうか、既に当初計画より遅れているのに、この状況で2027年開業に合わせて工事を進めるのなら、環境負荷につちえの各種試算前提がみ~んなデタラメになってしまう。
これを裁判所がどう判断するかも注目したいと思います。