6月29日に、平成28年度の事後調査報告書が作成・公表されました。
(JR東海ホームページ)
(静岡県庁ホームページ)
これは、平成26年に作成された環境影響評価書に記載された事後調査計画、つまり事業認可後の調査計画に基づき行われるもので、昨年度に続いて2回目となります。
静岡県版に限って言えば、内容はほぼ河川流量のモニタリング結果となっています。
で、相変わらず疑問の残る内容となっています。。。
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河川の流量は、当然ながら降水量によって左右されます。だから河川流量のことを知るためには、降水量との関係を知らなければなりません。雨が降って即座に川の流量が増えるのか、それとも時間差があるのか。あるいは長期の渇水となった際に河川流量はどのくらいまで減るのか。
また標高の高い場所ですから、冬季は雨ではなく雪となって積もるだろうけど、それは流量の増減にどうかかわるのか。
河川流量を知るために、その場所の降水量を知ること。
これは河川を調査するうえでの基本中の基本です。例えば河川から取水するための許可を得る際には、河川流量だけでなく降水量や気温を把握しなければならないと定められています。
⇒河川法施行規則第11条第2項二(流水の占用の許可等の申請)など
⇒河川法施行規則第11条第2項二(流水の占用の許可等の申請)など
というわけで、静岡県内でのリニア計画に置いても、「大井川水系の複数の箇所で雨量を観測すること」が求められています(2014年3月 準備書への県知事意見)。
そしてJR東海も努力するようなことを返答としています。
環境影響評価書 静岡県知事からの意見と事業者の見解6-3-14ページより複製
この意見については、同年12月の事後調査計画書への県知事意見でも、繰り返されています。
けれども、このほどの事後調査報告書では、降水量については何も書かれていません。今回だけでなく平成27年度版報告書でも触れていない。
これじゃイカンだろうなあ、と思うのであります。。。
南アルプス山岳部の降水量はどうなっているのか?
たぶん、電力会社や国土交通省は、ある程度のデータを持っていると思います。特に国交省は千枚岳付近に雨量計を設置してリアルタイムでデータを取得しているのだから、それを整理することぐらいは可能のはずなんですけど。
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それから、小支流における流量調査結果にも疑問があります。
険しい山奥を流れる谷側については、年2回の調査となっています。これじゃあ調査間隔が半年に及んでしまうので、仮に工事中に流量が減っても兆候をを捕えることができないだろうし、現状を把握するにも不十分です。
(事後調査計画書に対し、これじゃダメだ!と意見書を出したのですが、当然スルー)。
で、このほどの報告書を見てみると案の定、妙な結果となっております。
結果をみると、ほとんどの地点で豊水期(8月上旬)の流量よりも低水期(11月上旬)のほうが流量が多くなっています。
なんのこっちゃ?
気象庁のホームページで調べてみると、昨年の南アルプス一帯はカラ梅雨気味だったらしい。逆に秋の降水量は平年並みだったようです。そのために、低水期のほうが流量が多いという逆転する結果になっていたのでしょう。
晩秋にも流量が増すこともある、ってことを知るという点では、それなりに意味のあるデータだったといえます。
けれども、そもそもモニタリングの目的は現状の平均的な流量を把握することに主眼がありますから、イレギュラーかもしれない値しか得られないというのは好ましくないでしょう。
もう少し言えば、この値がイレギュラーなのか常態を表しているのかも、年2回だけのデータでは判断しようがない。
せめて月に1度程度の頻度じゃないと、現状把握には遠いと思うんですけどねぇ。
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これらはいずれも険しい山岳地域で、一部には標高2000m前後の地点も含まれています(場所については報告書本文をご覧ください)。ゆえに、調査が非常に困難な場所のようです。それに表の下にあるように、県道沿いでアクセスが良好な場所でも、「ダム放流で近づけなかった」というトラブルが起きていたらしい。
調査が困難ということは、それはそれで理解できます。
けれど、調査が困難な場所、ってことは、調査を開始する前から明らかです。そういう場所であることを承知の上で工事を行う以上は、JR東海としてきちんと現状把握する手法を考えるべきでしょう。
それが責任というものだと思います。