後述するように新聞を読んでいて思い出したのですが、南アルプス静岡工区での林道整備計画はどうなったのでしょうか?
JR東海は今年6月、南アルプストンネル静岡工区でのトンネル施工業者の募集を開始しました。今年10月まで業者を募集するとのこと。
(6/8 静岡新聞記事)
http://www.at-s.com/news/article/economy/shizuoka/367836.html
(6/8 静岡新聞記事)
http://www.at-s.com/news/article/economy/shizuoka/367836.html
ところが工事を行う場所は、文字通り南アルプスのど真ん中。一番近い集落からは40㎞ほど、畑薙第一ダムにあるゲートからも、さらに30㎞ほど奥に入ったところになります。
大井川ダム開発でのインフラ整備
リニアはどうなる?
ここの道路事情に詳しいわけではありませんが、
●未舗装
●落石・崩壊が頻繁に起こる
●ダンプ1台がギリギリ通れる程度
●大小さまざまな野生動物の生活圏
●冬季は閉鎖
●落石・崩壊が頻繁に起こる
●ダンプ1台がギリギリ通れる程度
●大小さまざまな野生動物の生活圏
●冬季は閉鎖
というような状況らしいです。
そんなわけで一般車の通行は禁止されていますが、強者のサイクリストの方々が走破されたブログ等がありますので、リンクを貼らせていただきます。
我流かもしれないMTB整備と林道ツーリング
http://dts3800.blog117.fc2.com/blog-entry-277.html
http://dts3800.blog117.fc2.com/blog-entry-277.html
2016年5月某日/リニア建設予定地を訪ねる〜静岡工区編〜
http://lost2011.blog.fc2.com/blog-entry-1015.html
http://lost2011.blog.fc2.com/blog-entry-1015.html
秘境感がハンパない紅葉の林道東俣線
http://cyclist.ldblog.jp/archives/48811639.html
http://cyclist.ldblog.jp/archives/48811639.html
(勝手ながらリンクを貼らせ頂きました。不都合な点がございましたらご連絡ください。)
こういう場所で大工事を行う。
環境影響評価書によると、場所によって差があるものの、場所によっては片道で1日に最大478台の大型車両が通行する予想となっています(二軒小屋ロッヂ付近)。
8時間のうちに、往復合わせて956台が行き交う⇒単純計算すると約30秒おきということとなります。
現在の道路状況では、とてもこれだけの台数をさばけるとは思えません。
それに未舗装のままダンプカーなどを大量に通行させれば路面がガタガタになることでしょう。そんな状況では凍結・融解、大雨で損傷しやすくなるでしょうし、あちこち落石・崩壊・倒木のおそれもあります。特に二軒小屋ロッヂより奥に至っては、道路が消滅しているようです。
安定的に通行させるには、盛土、舗装や危険個所の撤去など大掛かりな工事が必要となるに違いありません。
実際、2013年9月に公表された環境影響評価書によれば、そういう方向で計画を進めているとされていました。
(資料編12 林道東俣線の補修および舗装について」を参照)
ところが、冒頭に記したように、今年6月になって南アルプストンネルの施工業者の募集が開始されたのにもかかわらず、この林道東俣線の改修工事については、まったく音沙汰がありません。
静岡市には「静岡市南アルプスユネスコエコパークにおける林道の管理に関する条例」が制定されており、道路や周辺環境に悪影響を及ぼしかねぬ場合には、車両の通行を許可できぬこととされています。この条例について、JR東海と市との協議状況も全く分かからぬままです。
新聞報道(特に全国紙)だと、静岡工区の着工が近いようなことが書かれていますが、大井川の流量保全問題、残土置き場の安全性問題に加え、林道の取り扱いも不透明な現状では、まだまだじゃないのかなぁと思います。
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さらに言及すると、大量の車両通行にともなう動植物への影響について、等のJR東海がほとんど無関心であるのが気になる。
このブログで過去に書いたように、ロードキル(動物が車両にひき殺されてしまう事故)の問題と外来種対策とが払しょくされていないのである。
ロードキルの問題 (2014/1/17 当ブログ記事)
外来種対策への疑問(2015/6/21 当ブログ記事)
南アルプス…というか静岡県の山間部では「これでもか」という具合に大型哺乳類が増殖してしまい、農作物被害や希少な植物の食害は目に余る状況にある。
林道東俣線は大井川に沿ってつけられているから、川に水を飲みに行く動物が横断することは容易に想像できる。そんなところに大量の車両を通せば、かなりの高確率で接触事故が起こるであろう。ここ数年、JR身延線では週に1~2度のペースで列車とシカ等が接触する事故が起きているが、それよりも深刻な状況となるのではないか。
2017/9/5 静岡新聞朝刊より
列車ならともかく自動車との衝突となれば、狭く険しい山道であるから重大事故につながりかねない。
またぶつかったのがシカやイノシシではなくニホンカモシカだったらどうなるか?
ニホンカモシカは文化財保護法で特別天然記念物に指定されている。もしも轢き殺して放置したら地犯罪行為になってしまう。事故処理について、逐一、市への報告とか承諾が必要となる。
こんな風に考えると、事故を防ぐために林道に沿った防護柵が必要になるのではないか、という思いがしてくる。しかしその場合、動物の生息地を長大な区間にわたり寸断することとなり、生態系に予測不可能な影響――高山帯のお花畑に行っちゃうとか――を与えかねない。
そてに、柵では防ぎようのない小動物(両生類や爬虫類など)に対してはどうするのだろう? 環境影響評価書では、サンショウウオ類やカエル類も保全対象としているのである。
外来種対策のほうも、現状のJR東海の方針では不十分だと思う。
現時点で、南アルプスの工事予定地でも数種類の外来植物が確認されているが、まだ割合は低い状況にある。しかし大量の車両が通行し、大量の物資を搬入すれば、ヒアリの例を持ち出すまでもなく、小さな昆虫や植物の種子が大量に入るおそれがあある。
詳しいことは上記過去記事をご覧いただきたいが、南アルプスの中心という場所ゆえ、ここで繁茂すると広範囲に拡散しかねない。それは絶対に避けてほしい。
JR東海はタイヤ洗浄で済ませる方針らしいけど、搬入する資材等の洗浄も欠かせないのではないかと思うのである。
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ただでさえ、静岡工区の進捗はおくれています。遅れているどころか、まだ決まっていない要素があまりにも多い。
いまのところ、JR東海は「2027年開業のスケジュールに影響はない」としているようですが、ほんとうなのでしょうか?