去る9月5日、「しんぶん赤旗」に
リニア工事進む大井川源流域 静岡市葵区/日本勤労者山岳連盟理事長:浦添嘉徳さんがリポート
と題した文章が掲載されたそうです。
”リニア反対派”の間で話題(?)となり、facebookやブログなどで宣伝されているようですが…
ちょっと待った!
結論から言うと、この文章には強い違和感を覚えます。特におかしいところを抜粋します。
労山は南アルプスの大自然を後世に残していくため。リニア問題検討委員会を立ち上げました、その活動の一環として、8月31日と9月1日の両日…リニア工事予定地である静岡市葵区の大井川源流域を調査しました。
ちょっと待った!
もともと、西俣の奥には地権者・特種製紙の施設があり、そこに行くための道路があったそうです。つまり行政が管理している林道ではなく、特種製紙の私道があった。これは昭和50年代の登山地図等にも描かれています。
さて2014年5月14日と15日、市民団体「リニア新幹線を考える静岡県民ネットワーク」が現地を訪れています。リニア問題でおなじみのジャーナリスト氏が同行し、ブログにまとめておられます。
…林道を歩いていくと二軒小屋水力発電所の先に、大型ダンプが通行できる仮設の橋ができていました。竹本さんは「発電所から先に道路はなかったのに、いつのまにかリニア工事が始まっていた。多くの登山者にこのことを早く伝えなければ」と話していました。
…二軒小屋から1時間半ほど歩いたところに、宿初施設のための敷地が整地されていました、その手前には鉄筋コンクリート製の頑丈な橋があり、「東海旅客鉄道(株)中央新幹線推進本部 中央新幹線施設部長」と記されていました、すでに大井川源流域でも、リニア新幹線建設が始まっていたのです。
これを読むと、今年視察に行ってみて、あたかも誰も知らぬうちに、JR東海が道路や橋を建設しているのを目撃したかのような印象を受けてしまいます。
もともと、西俣の奥には地権者・特種製紙の施設があり、そこに行くための道路があったそうです。つまり行政が管理している林道ではなく、特種製紙の私道があった。これは昭和50年代の登山地図等にも描かれています。
ところが平成初めころに、中部電力の取水堰建設で使われたのを最後に使用されなくなり、廃道化しつつあったのですが、数年前から特種製紙が再整備を行って車両の通行が可能になっていたようです。
さて2014年5月14日と15日、市民団体「リニア新幹線を考える静岡県民ネットワーク」が現地を訪れています。リニア問題でおなじみのジャーナリスト氏が同行し、ブログにまとめておられます。
リニア、南アルプスの残土処理予定地
http://shuzaikoara.blog39.fc2.com/blog-date-20140525.html#entry305
http://shuzaikoara.blog39.fc2.com/blog-date-20140525.html#entry305
リンク先のブログ記事には、訪れたメンバーが整備された林道を歩いている写真が写っています。コンクリート製の頑丈な橋も写っており、さらに河川法に基づく工作物許可標識の写真もあります。これによると許可を受けたのは特種製紙株式会社で、期間は平成23年5月11日から平成28年3月31日までとなっています。
つまり橋や道路については、2014年の時点で完成していたことを市民団体が確認していたはずなのです。もちろん、リニア工事を視野に入れた道路整備であることは間違いなかったのですが、法的にはあくまで私道の改修。
また、しんぶん赤旗は共産党の機関紙だと思いますが、その共産党の国会議員が2015年に同地を訪れたことを報じた記事では、次のような表現があります。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2015-10-16/2015101604_03_1.html?fref=gc&dti=1497238077167501
リニア新幹線を考える静岡県民ネットワークは14、15の両日、JR東海が進めるリニア中央新幹線のルート(県内10・7キロ)にあたる県北部・南アルプスの調査に入りました。
調査には日本共産党の本村伸子、島津幸広両衆院議員と辰巳孝太郎参院議員も同行しました。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2015-10-16/2015101604_03_1.html?fref=gc&dti=1497238077167501
リニア新幹線を考える静岡県民ネットワークは14、15の両日、JR東海が進めるリニア中央新幹線のルート(県内10・7キロ)にあたる県北部・南アルプスの調査に入りました。
調査には日本共産党の本村伸子、島津幸広両衆院議員と辰巳孝太郎参院議員も同行しました。
…西俣非常口予定地にも向かう予定でしたが、大雨で橋が一部流されており断念。昨年の調査も大雨で現場に行けなかった辰巳氏は「大地震で西俣非常口から避難することになった人が安全に下りてこられるか疑問だ」と話しました。
2015年の時点で、「しんぶん赤旗」は西俣に仮設橋が架けられていることを、特に疑問視することなく報じているのです。さらにこの「一部が流された橋」については、日本自然保護協会のホームページに写真があります。
日本自然保護協会 2015.10.23
「リニア中央新幹線計画の発生土置き場予定地を視察してきました。」
2014年の段階で市民団体が道路が完成しているのを確認し、2015年には共産党国会議員も現地確認しているのに、あたかも2017年になって発覚したかのように核のはオカシイと思います。
単純に読者に誤解を与えてしまうだけでなく、
●情報が共有されていないこと
●「調査」に行ったのに、誰が事業者でどこの許認可を受けているのか把握していない
ことが露呈したようにも思えます。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
さらにfacebookで拡散されている情報だと、
大スクープ、南アルプス西俣地域、南アルプスのユネスコエコパークの大自然を破壊。JR東海の暴挙の現場。
静岡県河川当局と静岡市に問い合わせてみたが、事前相談ないとのこと。日本は法治国家か、勝手に橋を建設し、河川をダンプが走り回る、こんなことが許されるはずがない。JR東海よ、世論を甘く見てはいけない。安倍リニアの姿を、実態を多くの人に知ってもらう努力が、全国で広まっている。
静岡県河川当局と静岡市に問い合わせてみたが、事前相談ないとのこと。日本は法治国家か、勝手に橋を建設し、河川をダンプが走り回る、こんなことが許されるはずがない。JR東海よ、世論を甘く見てはいけない。安倍リニアの姿を、実態を多くの人に知ってもらう努力が、全国で広まっている。
という文章が付け加えられておりますが、これはあまりにヒドイ。
出所不明な情報と個人の思い込みが付け加えられて訳がわからない。
河川工事を行うなら河川法に基づく許可が必要だし、
二軒小屋に通じる東俣林道を通る車両は静岡市の許可が必要だし、
1ヘクタール以上の森林を伐採するなら森林法に基づく県知事の許可が必要
(JR東海の予定している工事ヤードの面積は1万㎡=1ヘクタール)
なので、県や市が「全く知らない」ことはあり得ない。仮に県や市に問い合わせたことが事実だとしたら、工作物許可標識は何だったのだ?という話になる。ニセモノだったのか?
ちなみに、無断で河川工事を行えば河川法102条違反で罰則対象となります。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
2014年の事業認可以降、共産党がリニア反対を訴え始めたとともに、しんぶん赤旗がリニア批判を続けています。そのためなのかよく分かりませんが、赤旗のリニア批判記事なら中身に関わらず無条件に歓迎、といったムードが”リニア反対派”にあるようです。それが今回の妙な記事の拡散となってしまった。
けれど、こんなことでは安倍総理とかトランプ大統領の連発する「印象操作」「フェイクニュース」へ近づいてしまうんじゃないのかなあ?