何度も取り上げてますが、早川芦安連絡道路の話です。
道路計画の概要
山梨県庁ホームページより複製…したのだけど、現在どこに掲載されているのかわからない。
けれども、「リニア・南アルプストンネルの発生土活用&発生土搬出道路」という側面がつき、なおかつ事業決定の前に一帯をユネスコエコパークに登録したがゆえに、色々と矛盾やら説明不足が続出しているように思えるのです。
疑問点が多岐にわたり、単なる羅列に過ぎないのですがご容赦ください。
●環境省はいつ承知したのか?
前回指摘したように、リニア計画は環境大臣意見を守って進めてゆかねばならないし、国土交通省や関係する諸行政機関も、それを順守する義務があると思います。
その環境大臣意見には次のような一節があります。
評価書により、環境省としては、JR東海による改変行為は南アルプスユネスコエコパークの移行地域内で完結することを前提とする報告を受けたことになっているわけです。そして事業認可がなされました。
ところが、事業認可後に山梨県が道路整備目的で発生土処理に手をあげることによって、一連の改変行為は移行地域内にとどまらず、より環境保全水準の高い緩衝地域にまで及ぶこととなりました。
山梨県が残土処理手法として事業決定した早川芦安連絡道路と、ユネスコエコパーク地域区分との位置関係です。この道路の予定路線は、ほぼ全区間が緩衝地域内に入っています。
拡大
一連の報道発表では、早川町側での盛土に120万立米(報道によって数字が異なる)を使うとされています。盛土区間がどこであるにせよ、緩衝地域内に東京ドーム1杯分もの発生土を運び込んでくることになるわけです。
これは、地上での改変行為は移行地域内に収める、としたJR東海の主張と反しますね。そのうえ、環境省としては環境影響評価書での前提が山梨県によって覆されたことにもなる。
環境省(文科省も関係あるかも)との調整はどのようにおこなわれているのでしょうか?
●「国際的なモデル地域」として適切な進めかたなのか?
そういえば、山梨県知事は環境影響評価準備書への意見でこんなことを述べていました。
これはJR東海のリニア建設について述べたものですが、事業地域はユネスコエコパーク登録地域として重要であることを認識されたうえで、「国際的なモデル地域」とまで言い切っています。
繰り返しますが、早川芦安連絡道路の事業予定地もユネスコエコパーク登録地域であり、リニア本体工事よりも保全水準の高い鑑賞地域となっています。JR東海にここまで言い切った手前、こちらの事業手続きについても、国際社会に積極的にアピールできる水準でなければならないでしょう。
通常の開発手続きや環境調査なんかより、はるかに丁寧な調査や積極的な住民関与、透明性のある意思決定のもとに、高いレベルの環境保全を図ってゆくのでしょう。最低でも、法・条令対象事業でなくとも環境影響評価をやらざるを得まい。
ところが現在のところ、予算が決定したとか準備工事として既存橋梁の改修費用が増したという発表は次々なされるものの、既に終了したはずの環境調査結果については何の音沙汰もない。
⇒9/19ブログ記事
それに工法・ルート案等についての検討経緯は不明であるし、公衆からの意見聴取を行った形跡もない。そればかりか、県行政が自ら移行地域から緩衝地域へ建設発生土を運び入れるという理解不可能な役割を買って出たことの説明もない。
「国際的なプロセスの悪しきモデル地域」となったような気がしますが――
どこで盛土構造とするのかは公式に発表されていません。しかし谷を埋めるために使うはずです。早川町側で谷を越える箇所は、地図上でカッパ滝のかかる谷川しか考えられません。地元での名称は分かりませんが、とりあえず「カッパ谷」とでも呼んでおきます。
図に記入したような構造を想定して盛土体積を試算してみたのですが、単に道路を通すだけなら40万立米程度で事足ります。100万立米以上を積み上げるのなら、上流側数百mを埋めねばらならない。つまり事実上の残土捨て場である。
この仮称カッパ谷を上空からのぞいてみると、白っぽい斑点が見えますが、これは石です。早川との合流点には、押し出された石が分厚く堆積して小さな段丘状となっているようです。
国土地理院ホームページ 電子国土Webより複製・加筆
撮影日は不明だが2007年以降
カッパ谷の源流に目を移すと、大きな崩壊地があります。ちなみに地形図上で計測すると、標高差400m、平面上の長さ600m、幅300m、面積約11万㎡となりました。
つまり合流点付近に堆積している大量の石ころは、源流の大規模崩壊地から転がり落ちてきたものだといえそうです。
この大規模崩壊は、発生したのはそんな大昔ではなさそうです。
こちら、1976年(昭和51年)10月30日に撮影されたものです。流域北部に小規模な崩壊地が点在しているものの、現在のような裸地は見えません。早川との合流点付近は木々に覆われています。
国土地理院ホームページ 電子国土Webより複製・加筆
掲載は省略しますが、9年後の1985年(昭和60年)の写真には、現在とほぼ同じ規模の崩壊地が写っています。早川との合流点付近では、木々が消失し、流れ下った土砂が堆積している状況も確認できます。
つまりカッパ谷源頭の大規模崩壊地は、1976年から1985年の間に発生し、崩れた岩や石が土石流となって早川合流点にまで到達したといえそうです。地形学的観点でいえば、「現在進行形で崩壊が進んでいる」とみて差し支えないでしょう。
素人であるがゆえに、「ここは盛土の適地なのでしょうか・・・?」という疑問が生じるのですが、実は以前、JR東海の準備書に対しこんな意見書が提出されていました。
早川町は土砂捨て場として不適当であり、ほかに適地を求めるという内容です。
この意見書は、
「南アルプス世界自然遺産登録推進協議会ユネスコエコパーク推進部会 部会長」
「南アルプス世界自然遺産登録推進協議会ユネスコエコパーク推進部会 部会長」
および
「ユネスコエコパーク登録検討委員会 委員長」
の連盟で出されたものです。
今でも南アルプス市はじめ構成自治体のホームページに掲載されています。
http://www.city.minami-alps.yamanashi.jp/shisei/soshiki-syokai/norin-syoko-bu/midori-shizen/news/xzx3co
http://www.city.minami-alps.yamanashi.jp/shisei/soshiki-syokai/norin-syoko-bu/midori-shizen/news/xzx3co
「早川町内に土砂を捨てるのであれば、土砂捨て場の場所やその影響について具体的なデータを示すべき」
⇒これはJR東海に向けて出されたメッセージですが、山梨県がJR東海に代わって説明すべきではないでしょうか?
個人的な感想だけど、行政が率先して移行地域から緩衝地域に民間事業由来の建設発生土を運び入れるってのは、さすがに許されないのではないかと思う。そのうち早川芦安連絡道路予定地一体を緩衝地域から移行地域へと格下げしようという動きが出てくるのではないか。