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Channel: リニア中央新幹線 南アルプスに穴を開けちゃっていいのかい?
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大井川の”導水路” ~施工業者は決まっても掘れないと思う~

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JR東海より、中央新幹線南アルプストンネル静岡工区で計画している導水路の施工業者が決まったとの広報があり、合わせてJR東海社長と静岡県知事のコメントが新聞に載りました。
イメージ 210/18 静岡新聞朝刊
JR東海の柘植社長は「準備でき次第着工する」とコメントしていますが、現状では無理ででしょう。なにより静岡県の川勝知事は、「無駄な行為」とのコメントを出しています。

川勝知事がいくら環境保全を気にかけた発言をなさっても、いつも東海道新幹線の空港新駅構想が隠れているのではないかという疑問があり、素直に受け取れないのですが、今回は正鵠を得ていると思います。

JR東海は、2014年の補正評価書で次のように主張しています。
イメージ 1

ここでポイントは次の3点。
 
①様々な環境保全措置を実施することから河川流量の減少量を少なくできる。
②工事中はポンプで汲み上げるため流量減少は生じない。
③影響を見定めながらより有効な対策を考える。  

ところがなぜか、環境影響評価手続きが終了してから導水路を設けることを宣言し、地元の承諾を経ぬまま、施工業者の決定となりました。

これが、導水路検討経緯のいい加減さを物語っています。


湧水量や河川流量の減少の状況は本体トンネルを掘ってみなければわからない。

そこで、環境を保全すべきという立場に立つならば、様々なケースを想定して総合的に最善な対策をとる必要があります。いわゆる複数案の検討です。

だから最悪の事態を想定するのは当然ですが、その一方で導水路トンネルは、一度造ってしまったら構造やルートを変更することができません。

今年8月の静岡市委託調査で示されたように、JR東海が予測したところとは別の箇所で大量出水するかもしれません。その場合、あらかじめ導水路が掘ってあるなら、湧水を自然流下させることはできなくなります。

あるいは、評価書で主張していたように「様々な環境保全措置を実施することから河川流量の減少量を少なくできる」かもしれません。その場合、先に導水路トンネルを掘ってしまってあったら、それは無用の長物となるとともに、その工事による環境破壊は壮大なムダとなります。

つまり予測不可能な問題に対して、柔軟な変更が不可能な対策を事前にとってしまうと、悪影響を伴う空振りに終わるおそれがあるのです。 

環境保全措置としての導水路は、トンネル工事が終わるまでは必要性および設計は判断できないのです。空振り覚悟で事前に掘るなら、それは単なる排水路に他ならない。

環境影響評価書で主張していた「工事中はポンプで汲み上げる。影響を見定めながらより有効な対策を考える。」は、方向性としては間違ってはいないのです(当然ルートやトンネル配置を再検討をするのが第一である)。

しかし、それをなぜかJR東海が自ら否定し、導水路案を合理的な説明がないまま決定し、そのうえ施工業者まで決めてしまった。しかも空振りをおそれた地元から流量保全についての協定締結を求められていたのに、それさえ結んでいない。


これじゃ県知事は許可できません。知事がおっしゃる通り「ムダな契約」であるといえるでしょう。


―以下は読み辛いので興味ある方だけお付き合いください―

〈静岡県知事の発言がハッタリ・出まかせでない、と私が考えた経緯〉
簡単に言うと、上記協定が締結されていないことに加え、現状では川の下に導水路を掘る許可、静岡市管理の林道に大型車両を通す許可、どちらも出せそうにないからである。   


まず、河川法が適用されている河川で工事を行う場合、河川法第24条に基づき河川管理者から河川敷地の占用許可を受ける必要がある。これがまず重要。
http://www.ktr.mlit.go.jp/river/sinsei/index00000001.html

JR東海が計画している導水路は、椹島の出口近くで大井川支流の奥西河内川をくぐる。この川は一級河川に指定されている

一級河川の河川管理者は国土交通大臣であるが、上流部や小さい支流では、工事の許可県を県知事に委譲することができる。大井川水系でも本流の下流部や長島ダム付近を除き、工事の許可権は静岡県知事に委譲されている(河川法第9条第2項)。

つまり導水路を建設するにあたっては、静岡県知事から占用許可を受けねばならないのである。

占用許可のルールは国土交通省が定めた河川敷地許可準則に基づく。
https://www.mlit.go.jp/river/press_blog/past_press/press/9907_12/990804e.html 

同準則の、第七の二のイに基づき、これはトンネルであっても該当する。
http://www.ktr.mlit.go.jp/river/sinsei/river_sinsei00000002.html

これからが本題であるが、準則の中には

(河川整備計画等との調整についての基準)
第十  河川敷地の占用は、河川整備計画その他の河川の整備、保全又は利用に係る計画が定められている場合にあっては、当該計画に沿ったものでなければならない。
第十一
河川敷地の占用は、河川及びその周辺の土地利用の状況、景観その他自然的及び社会的環境を損なわず、かつ、それらと調和したものでなければならない。
 

という規定がある。導水路を奥西河内川地下に設けるという申請がなされた場合、静岡県知事はこれらを満たさねば許可を出せないのである。

現在、静岡県知事は環境保全上の懸念がある、という姿勢を崩していない。だからJR東海に許可を出さなくてもよいのである。

また、導水路建設のためには、静岡市が管理する林道東俣線を通らざるを得ない。この林道は南アルプスユネスコエコパーク管理のために通行規制がなされており環境保全上の基準を満たして静岡市長の許可を受けねば車両の通行は認められない。その根拠は「静岡市南アルプスユネスコエコパークにおける林道の管理に関する条例http://www.city.shizuoka.jp/136_000008.html」にある。

この条例には次のような規定がある。

第4条 市長は、前条第1項の規定による許可の申請に係る林道の通行が次の各号のいずれかに該当するときは、これを許可しないことができる
(1) 林産物の搬出若しくは造林、間伐、伐採等の森林施業又は農作業のための通行に支障を及ぼすおそれがあるとき。
(2) 林道を損傷し、若しくは汚損し、又は林道の通行に危険を及ぼすおそれがあるとき。
(3) 林道の設置目的に反し、不適切であると認められるとき。
(4) 林道周辺の自然環境の保全に支障を及ぼすおそれがあるとき。
 

さらに、林道東俣線については上記(3)で許可できるケースがあらかじめ定められており、それは以下の通りである。
イメージ 3

大雑把にいうと、林業、発電、登山客送迎等、現在の利用形態は許可できるがこれ以上の通行は許しがたい、という内容である。現在の導水路計画のように、建設の必然性さえ不明確で、場当たり的な工事を許可できるとする裁量は見当たらず、簡単に同条例の許可は受けられないはずである。

この条例の許可が出ないと、JR東海は工事用車両を入れることができないし、河川敷地許可準則第十および第十一もクリアできない。よって県知事は奥西河内川について敷地専用許可も出せないと考えられる。




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