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Channel: リニア中央新幹線 南アルプスに穴を開けちゃっていいのかい?
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35年前の大量土砂流出河川を大量発生土で埋め立てる ~早川芦安連絡道路

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ナゾ多き早川芦安連絡道路へのリニア発生土運搬は今月7日からだそうです。

ジャーナリスト樫田氏のブログ(2017/11/6)
http://shuzaikoara.blog39.fc2.com/blog-entry-576.html 

この記事によると、道路法での車両制限を県が特例で許可することにより、橋梁の重量規制をオーバーしたダンプカーでも通行できるようになっているそうです。

この道路整備計画は、工事費の大半はJR東海が出し、物理的にもリニア発生土の処分に他ならないのに、山梨県が事業主体の公共事業という形になっています。

そのため、JR東海の事業であれば必要となるはずの道路法、河川法、森林法、県自然公園条例での許認可手続きや、環境影響評価手続きがことごとく免除されています。

すごいなあ

しかし調べれば調べるほど、ナゾが次々出てきてビックリ。
これ、ホントに実現するのでしょうか?


早川芦安連絡道路の計画では、南アルプス市芦安(あしやす)地区にも大規模な盛土を2か所想定しているようです。事業の検討経緯が全くブラックボックスなので規模等は分かりませんけど、単純に考えれば150万立米のうち三分の二にあたる100万立米。

イメージ 5


たかだか幅10mに満たない2車線道路としては異常な量です。事実上の残土処分場兼用なのでしょう

◇   ◇   ◇   ◇   ◇ 

ところで長野県内でのリニア本体事業では、JR東海は発生土を松川町や豊丘村内に残土処分しようとして、住民から強い反発を受けているようです。

この件についての樫田氏のブログ
http://shuzaikoara.blog39.fc2.com/blog-entry-538.html 
南信州新聞(2017/9/2)

長野県側で受け入れが拒まれている理由として、土砂災害への懸念が強いことがあるようです。

長野県伊那地区は昭和36年の梅雨期に豪雨に見舞われて大規模な水害が起き、現在も「三六災害」と呼ばれ語り継がれていると聞きます。天竜川が氾濫したほか、大鹿村の「大西山崩れ」をはじめ大小無数の山崩れ・土石流となって集落を襲いました。全体での死者・行方不明者は136人に達しました。

国土交通省 天竜川上流河川事務所 三六災害アーカイブス
http://www.cbr.mlit.go.jp/tenjyo/36saigai/

このような場所ゆえに、大量の残土を置くことに強い反対の声が生じるのはムリもないことです。

◇   ◇   ◇   ◇   ◇ 

さて、再び山梨県の早川芦安連絡道路に目を移します。

早川芦安連絡道路の計画されているのは南アルプスの中でも巨摩(こま)山地と呼ばれる一角ですが、こちらも大きな土砂災害に繰り返し襲われています。

大規模盛土を計画しているのは御勅使川(みだいがわ)という川の上流部ですが、この川は砂防や治水の分野では非常に名の知れた暴れ川です。

そもそも御勅使川という名前自体、平安時代に朝廷から災害見舞の勅使が派遣されたことにちなむとされてますし(異説アリ)、戦国時代には武田信玄が治水工事に手腕を発揮したことでも知られています。

明治に入ると国直轄の砂防事業がなされ、大正時代に築かれた堰堤群は、現在では社団法人日本土木学会から「選奨土木遺産」に認定されています。
http://www.pref.yamanashi.jp/sabo/114_005.html 

いっぽうで近年になっても大きな水害・土砂災害を繰り返しており、特に昭和34年台風第7号+15号と昭和57年台風第10号での被害はひどかったようです。
(山梨県庁ホームページより)
http://www.pref.yamanashi.jp/sabo/114_019.html

昭和57年台風では、御勅使川では200万立米の土砂が流出し、芦安村では孤立箇所が続出する事態となったそうです。

ここで疑問。

35年前に200万立米の土砂が流出して被害を及ぼしたところに、あえて大量の建設発生土を運び込むべきなのでしょうか? 

ふつう、残土処分を行うのは窪地においてです。

例えば山梨実験線建設時の残土は、中央自動車道境川PAの南隣の浅い谷に埋め立てています。この谷の勾配はせいぜい5°(奥行き600mに対し標高差50m程度)。埋め立て箇所の集水面積は0.13㎢程度と狭く、流れる水はごく少ないと想像されます。

イメージ 3
GoogleEarthより
一帯は比較的なだらかな丘陵地帯である。


しかし今回盛土を予定しているのは窪地ではありません。集水面積は2㎢を越え、地形図でも青い線が引かれた明瞭な谷川です。わずか2800mの水平距離で標高差1000mを駆け下り、平均勾配は19~20°に達する急な谷川です。多くの水が流れ、勾配が大きいということで、土石流を発生させる要件は満たしています。そして何より、32年前に大量の土砂が流出した


イメージ 4
しかも地形図で多数の堰記号が描かれていることからも分かるように、砂防ダムを連続して設置し、土砂の流出を防いでいます。

ちなみに、国土地理院のホームページで昭和60年に上空から撮影された写真が公開されていました。木々が繁茂していないので、崩壊箇所や砂防施設の設置状況がよく分かります。
イメージ 2
崩壊箇所と確認できる砂防施設を記入
イメージ 1
1985年(昭和60年)10月15日撮影
国土地理院 空中写真閲覧サービスより複製・加筆

どうも林道整備が山崩れを誘発したように思える 



ここに砂防施設がつくられているのは、大きな土石流を食い止めるか、日常的に川に流れ出す土砂の量を極力少なくさせる必要があると判断されたためでしょう。昭和57年の災害後に設置されたのでしょうか。

そんな場所に大量の発生土=土砂を置くと、現在よりは多少なりとも、土砂流出のリスクは上昇するはずです。

県が事業主体となっている以上、県にはそのリスクについて説明する義務があるはずです。

ところが不思議なことに、早川芦安連絡道路への発生土輸送は明日から開始するという話なのに、芦安地区に向けて説明がなされたという話は聞きません。それに、山梨県庁や南アルプス市のホームページを見ても、全く説明らしきものがない。

長野県側では、似たような条件・災害履歴をもった場所へ残土処分するという話が浮上し、騒動となり、一部は白紙に戻った。

山梨県だろうと、どこでも同じような話が出れば、地元として同じような懸念を示すと思います。それが全くみられないということは、早川芦安連絡道路の整備計画は、南アルプス市側については全くの白紙状態にあるというのでしょうか。



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