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「河川管理施設」と「工事原因者の工事の施工」

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今回の内容は、シロウトの勝手な想像の世界です。

現在、協定締結寸前までいったが県知事の発言により白紙状態に戻った、とJR東海が主張している大井川の流用保全問題。

JR東海にとっての負担は、単にポンプで水をくみ上げるだけで、おそらくJR北海道にとっての青函トンネルほどには難しいことではないでしょう。なのに、なぜか「必要に応じて」という一文を入れることにこだわり続け、話が進まない様子であります(前回ブログ記事参照)。

ところで、大井川下流の流量を維持するためにJR東海が考案した導水路なるものは、河川法上はどのように扱われるのでしょうか。


ブログ作者の考える河川法上の2つの支障
 
①河川管理施設 
同法には次のような条文があります。

河川法第三条 この法律において「河川」とは、一級河川及び二級河川をいい、これらの河川に係る河川管理施設を含むものとする。

2 この法律において「河川管理施設」とは、ダム、堰せき 、水門、堤防、護岸、床止め、樹林帯(堤防又はダム貯水池に沿つて設置された国土交通省令で定める帯状の樹林で堤防又はダム貯水池の治水上又は利水上の機能を維持し、又は増進する効用を有するものをいう。)その他河川の流水によつて生ずる公利を増進し、又は公害を除却し、若しくは軽減する効用を有する施設をいう。ただし、河川管理者以外の者が設置した施設については、当該施設を河川管理施設とすることについて河川管理者が権原に基づき当該施設を管理する者の同意を得たものに限る。 

「河川の流水によつて生ずる公利を増進し、又は公害を除却し、若しくは軽減する効用を有する施設」のことを河川管理施設とよび、法律上は河川の一部として扱われるようです。

ここで「公害」という言葉が出現します。

ここでいう「公害」がいかなるものか、河川法では明記していませんが、環境基本法では、次のように定めています。

環境基本法第二条 この法律において「環境への負荷」とは、人の活動により環境に加えられる影響であって、環境の保全上の支障の原因となるおそれのあるものをいう。
2 (略)
3 この法律において「公害」とは、環境の保全上の支障のうち、事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁水質以外の水の状態又は水底の底質が悪化することを含む。第二十一条第一項第一号において同じ。)、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下(鉱物の掘採のための土地の掘削によるものを除く。以下同じ。)及び悪臭によって、人の健康又は生活環境(人の生活に密接な関係のある財産並びに人の生活に密接な関係のある動植物及びその生育環境を含む。以下同じ。)に係る被害が生ずることをいう。 

つまり環境基本法では、事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる…水質の汚濁(水質以外の水の状態又は水底の底質が悪化することを含む。)も、公害に含まれると定義しています。

ブログ作者には、環境基本法でいう「公害」と河川法でいう「公害」、どちらも同じ用法なのか判断がつきませんが、一般的には環境基本法での定義が様々なところで運用されているようですので、同じであると考えてよいのではないでしょうか。
⇒総務省 公害等調整員会(典型7公害
http://www.soumu.go.jp/kouchoi/knowledge/how/e-dispute.html

したがって、リニア建設という事業活動により大井川流量が減少して各方面に影響をきたすことは、「水質以外の水の状態又は水底の底質が悪化する」に該当し、公害であると言えそうに思えます。

さて、JR東海が計画している導水路に視点を移します。
イメージ 1
導水路案 JR東海作成資料  

私は、これは環境対策というより排水目的で設置されるものだと疑っていますが、JR東海は、流量減少への対策だと主張しています。静岡県もその主張を受け入れいているようです。
⇒JR東海は、環境影響評価書では、本坑の完成後に具体的な流量対策を考案するとしていた。しかし事業認可後になって導水路を設置すると宣言。既に位置を決め、本坑掘削前に建設に取り掛かる方針である。しかし導水路の必要性や構造は、従来の主張通り、列車が通るトンネル貫通後に湧水状況を検証するまで決定できないはずである。 

この導水路は、JR東海の言い分に従えば、流量減少という「公害」を「除却し、若しくは軽減する効用を有する施設」といえるでしょう。つまりJR東海が認めさえすれば、河川法上の河川管理施設に該当するだけの条件は満たしていそう

河川管理施設になると、その運用や維持管理は基本的には河川管理者(この場合静岡県)が決定権を握ることになるようです。

(河川管理施設の操作規則)
河川法第十四条 河川管理者は、その管理する河川管理施設のうち、ダム、 堰 せき 、水門その他の操作を伴う施設で政令で定めるものについては、政令で定めるところにより、操作規則を定めなければならない。
2 河川管理者は、前項の操作規則を定め、又は変更しようとするときは、あらかじめ、政令で定めるところにより、関係行政機関の長に協議し、又は関係都道府県知事、関係市町村長若しくは当該河川管理施設の管理に要する費用の一部を負担する者で政令で定めるものの意見をきかなければならない。 

それはたぶん、JR東海にとってはおもしろくない。

ところが、現在協議中である協定は、「トンネル湧水は全量大井川に戻せ」というもの。これをJR東海が認めると、同社の意向と関係なく四六時中ポンプで湧水を汲み上げ続けなければならない。運用が地元自治体に握られることと同義になるわけで、これは上記第十四条の中身を事実上、先取りすることとなる。

そんなこんなで、協定の内容次第ではJR東海のつくった導水路とポンプが「一級河川大井川の一部」に変容するかもしれず、それを嫌がって協議が進まないんじゃないのかなあ、なんて想像しています。

②河川を損傷?
河川法では、河川を損傷することを禁じています。
河川法施行令第十六条の四 何人も、みだりに次に掲げる行為をしてはならない。
一 河川を損傷すること。 

河川を万一損傷してしまった場合、その原因をつくった者に、復元させるための工事を行わせる規定もあります。
(工事原因者の工事の施行等)
第十八条 河川管理者は、河川工事以外の工事(以下「他の工事」という。)又は河川を損傷し、若しくは汚損した行為若しくは河川の現状を変更する必要を生じさせた行為(以下「他の行為」という。)によつて必要を生じた河川工事又は河川の維持を当該他の工事の施行者又は当該他の行為の行為者に行わせることができる。

河川法令研究会編集の「よくわかる河川法」によると、この第十八条に基づき、河川を損傷しそうな行為を行う前にあらかじめ対策工事を行わせることができる、という解釈・運用もなされているそうです。

すると、あらかじめ導水路を設置しておく方針というのは、この運用に従った行為なのかもしれません。そういえばこんな国会答弁もありました。
イメージ 2

導水路をつくるとなると、河川を損傷する行為自体は認めることとなる。それを前提として事前対策を掘ることになるわけです。ここでJR東海や国交省としては、環境保全をうたっている手前、河川を損傷させることを認めたくないのかもしれません。

つまり事前対策の導水路を造らせると”河川の損傷”そのもの(トンネルが河川水を引き込む事象)は許せるのか、という問題が浮上してしまい、事業認可の判断は妥当だったのかという疑問につながってきそうに思えるのです。

たぶん国交省は、それを嫌うと思う。




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