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発生土は河川区域で「有効利用」できるのか?

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JR東海は大井川の源流部に発生土置き場を設ける計画ですが、どんな理屈をひねり出して許可を申請するのか、ある意味で、非常に興味があります。

なお、談合事件については私の守備範囲外ですので、全く触れていません。悪しからず。


【発生土を有効利用する場合】 
前回のブログに書いたように、JR東海は環境影響評価書に、静岡県内への発生土の9割を有効利用すると書いています。

この目標を達成するためには、盛土して出現した土地に、何か施設を設ける必要があります。南アルプス山奥という場所がら、キャンプ場、ホテル、レクリエーション施設といったものが考えられます。

ところで、発生土置き場は大井川の流れに沿った河原、河畔林を潰すことになります。発生土を「有効利用」するならば、それは建設資材とみなされます。
盛土を行う許可(河川法第27条)とは別に、建物等(工作物)を設けるための許可も必要となります。

(工作物の新築等の許可)
河川法第26条
 河川区域内の土地において工作物を新築し、改築し、又は除却しようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、河川管理者の許可を受けなければならない。河川の河口附近の海面において河川の流水を貯留し、又は停滞させるための工作物を新築し、改築し、又は除却しようとする者も、同様とする。
 

この場所の場合、河川管理者とは静岡県知事になります。そして許可を行うための判断は、工作物設置許可基準に基づきます。その基本方針・・・
イメージ 1
このブログで疑問視してきたのは主に四と五ですが、今回は一に注目。

第3の一
工作物の機能上、河川区域に設ける以外に方法がない場合または河川区域に設置することがやむを得ないと認められる場合。
 

とあります。

つまりどんな施設を造るにせよ、これを満たしてなければならない。仮に「キャンプ場を造りたい」と言い出したとして、「では、それは他の場所ではなく河川区域に設けねばならないのか」という問いに答えねばならないのです。

これは難しいと思います。

【発生土を有効利用しない場合】 
この場合、発生土は単なる残土、つまり不要物になります。不要物を河川区域に積み上げるのなら、河川法施行令に抵触しそうに思えます。

河川法施行令
第十六条の四 何人も、みだりに次に掲げる行為をしてはならない。
一 河川を損傷すること。
二 河川区域内の土地(高規格堤防特別区域内の土地を除く。次号及び第十六条の八第一項各号において同じ。)に次に掲げるものを捨て、又は放置すること。ただし、河川区域内において農業、林業又は漁業を営むために通常行われる行為は、この限りでない。
イ 船舶その他の河川管理者が指定したもの
ロ 土石(砂を含む。以下同じ。)
ハ イ又はロに掲げるもののほか、ごみ、ふん尿、鳥獣の死体その他の汚物又は廃物
 

「川にごみを捨てると法律により処罰されます」という看板が川岸に立ってますが、その根拠がコレ。土石=残土も河川に捨ててはいけないのです。

「みだりに」というお役所用語があるため、一見、「きちんと積み上げるから”みだりに”ではない」という言い訳が通用しそうに見えます。しかしその場合は事業者自ら「ゴミ」であることを認めることとなるので、たぶん、口にはしないでしょう。「東京ドーム3杯分のゴミを南アルプス山中に捨てる」こととなったら、評価書への大臣意見に照合してゴミ捨て場としての妥当性が問われるし、輿論の反応だって分かったものじゃない。

イメージ 2
評価書に係る国土交通大臣意見より


今の今まで、JR東海は発生土を南アルプス山中に置き去りにする理由を一度も説明していません。今後、それが問われることとなりそうです。



なおJR東海は、「発生土を置くのは民有地」という言い方を強調しています。だから何だとは明言していませんが、おそらく河川法は通用しないという言い訳を探っているのでしょう。 
イメージ 3


しかし河川法では、同法が適用される河川区域について、所有者ではなくその土地の実態で定めています。

第六条 この法律において「河川区域」とは、次の各号に掲げる区域をいう。
一 河川の流水が継続して存する土地及び地形、草木の生茂の状況その他その状況が河川の流水が継続して存する土地に類する状況を呈している土地(河岸の土地を含み、洪水その他異常な天然現象により一時的に当該状況を呈している土地を除く。)の区域 
_線を引いた部分がミソで、これはいわゆる河川敷のことです。草木が茂ってヤブになっていたり、時折水に浸かるような場所を指すとされています。盛土予定地は下の空中写真の通り、70年ほど前まで水が流れていた形跡があり、その後も堤防や護岸は設置されず流路変更が続いていたようですから、河川法の適用範囲であると考えます。
イメージ 4
国土地理院 地図・空中写真閲覧サービスより
昭和27年アメリカ軍撮影の空中写真に加筆
 

イメージ 5
1976年10月撮影の空中写真
木々が消滅している。流路変更が起きたためとみられる。 


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