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大井川の流量減少は文字通りの想定外であろう

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静岡新聞に、リニア建設に伴う、大井川の流量減少問題に関連する記事が載っていました。

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静岡新聞 平成30年3月20日朝刊より 

ここで取り上げられている掛川市は、上水道や各種用水の大半を大井川の水に頼っています。ですから大井川の流量が減少することは大きな関心事となっています。


仮にJR東海の予測通り2㎥/s程度の流量減少が起きたとしても、日常生活を送るのには影響は出ないと思われますが、今以上に渇水が起こりやすくなるというおそれは払しょくできません。

掛川市はじめ大井川流域の市・町は、リニアの工事が直接行われるわけではないので、環境影響評価の対象から外されました。それにもかかわらず、河川水を通じて間接的な影響を受けるおそれがある。

これでは納得がいかないでしょう。


しかし一体、JR東海はどのように解決策を見出すつもりなのだろう? 

2015年の春以降、JR東海は、ポンプ揚水と導水路とを組み合わせてトンネルへの湧水を川に放流することで、下流の流量を確保できると主張しています。机上の論理としては、とりあえずつじつまが合っているため、今のところ県や国土交通省は、これを基本的な環境保全措置と位置づけ、協定締結のための協議が続けられているようです。

しかしちょっと考えると、次の2点により、導水路案を実行に移すことは非現実的であると思います。

①現時点で導水路案に決定することは不可能 
JR東海は、環境影響評価での試算を基に、本坑掘削に先立って導水路の建設に着手するとしている。

ところが2016年に静岡市が専門会社に委託して行われた試算では、JR東海試算とは別の場所で大量湧水が起こるという結果となった。用いるデータや手法によって予測結果は変化しうるのであり、現時点でトンネル湧水の発生状況を正確に予測することの困難さが露呈したといえる。したがって適切な導水路の位置やポンプの規模は、実際の湧水状況を見てからでないと決められないはずである。

そもそも環境影響評価書では、トンネル工事中はトンネル湧水をポンプでくみ上げ、湧水状況に合わせて対策を考案するという説明であった。導水路案は環境影響評価手続き終了後に出されたのだが、それまでの見解を覆した根拠は示されていない。

②導水路出口より上流には水が戻らない 
信頼性はさておき、現時点ではJR東海予測が公の場で用いられているので、これをもとに考えねばならない。いずれにせよ、少なくとも西俣取水堰から導水路出口までの区間(約16km)は流量が減少したままとなる。

この区間には水力発電所の取水堰が3つ設けられており、全てを取水せずに、河川環境の維持のために一定の水を下流に流し続けている(維持放流)。
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現在のJR東海案だと、導水路出口より上流では、現状の環境維持放流と発電用水の両方を保つことは不可能ということになる。とりあえず維持放流が優先されるので、渇水期を中心に電力会社への補償問題も生じるとみられる。さらに渇水が進み、維持流量も確保できなくなったらどうするのか。

また、評価書の予測値からだと、トンネルよりはるか上方の標高2000m近いところにまで流量減少の生じる可能性が導かれる。広範囲の河川生態系に不可逆的な悪影響を及ぼすおそれがあるが、このような場所にまで対策を講じることは非現実的である。


さて、川に堰やダムを築いて取水する場合、河川法の規定に従って申請がなされます(河川法第23条)。

水利使用に許可の申請書には、次のような事項を記載せねばならぬようです。
(河川法施行規則第十一条)
●河川の名称
●水利使用の目的
●取水口、注水口の位置
●取水量
●工作物および土地の占用についての概要
●土地の掘削等についての概要
●水利使用の期間
●工期 

合わせて、次のような事項を決めたうえで、各種書類を添えなければならぬそうです。
○水利使用に係る事業計画の概要
○使用水量の算出根拠
○河川の流量と申請に係る取水量及び関係河川使用者の取水量との関係を明らかにする計算
○水利使用による影響で次に掲げる事項に関するもの及びその対策の概要
(⇒治水、関係河川使用者、竹木の流送、舟・いかだの通航、漁業、史跡・名勝・天然記念物)
○関係河川使用者の同意書
○他の行政庁の許認可処分又は見込み

この他いろいろな書類を提出したうえで、関係河川使用者との水利調整が必要となります(河川法第38条)

詳しくはこちらをご覧ください
国土交通省
http://www.mlit.go.jp/river/riyou/main/suiriken/sinsei/ 


このように通常の取水許可申請の際になされる手続きは、取水する量と場所、期間、影響を受ける区間、対策、いずれも明らかになっていることを前提として進められます。取水する量や場所も決めずに申請がなされるなどという事態は想定していないのです。

そりゃ当たり前ですよね。場所も量も決めずに「取水したい」などと言い出すことはありえないわけです。

ところがリニアのトンネル工事の場合、事前に影響の及ぶ範囲を特定することも、物理的な対策を講じておくことも、事後的に適切な対応をとることも困難です。
ふつうだったら門前払いのことに同意を求めようというのですから、まさに想定外といえるのではないでしょうか。

現段階では、地元側のもつ現実的な懸念に対し、推論に推論を重ねて協議を進めなければならないわけですから、合意が成立するのは不可能のように思えます。

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