4月25日、JR東海が長野県大鹿村内に計画している発生土の最終処分地について、長野県から意見(助言という名称)が出されました。
長野県プレスリリース
大鹿村内発生土置き場(旧荒川荘)における環境の調査及び影響検討の結果並びに環境保全に対する県の助言をJR東海に通知しました
項目は多岐にわたっているのですが、その中で気になったのが次の事項。
「除去する崖錐堆積物について、見込まれる発生量と除去後の処理方法を示すこと」
という事項です。
崖錐堆積物とは、山肌から崩れ落ちて溜まった土砂のことですが、整地の際に、これを除去する必要があるということです。
参考までに、安倍川(静岡県静岡市)の河原で見かけた小規模な崖錐の写真を掲載しておきます。
崖錐とは土砂崩れがたまった地形ですから、砂から一抱えもある巨石まで大きさは多様ですし、概して風化していることが多く、倒木などが混入しています。土木工学的なことは分かりませんが、おそらく盛土の基礎とするには不安があるのでしょう。
そこでJR東海は、どこかに運んで処分すると説明しているのですが、これを運んで行く先は未定のようです。発生土の盛土面積は4400㎡と説明していますが、どれほどの量を運び出すのでしょうか?
ここで連想したのが大井川源流の燕沢発生土置き場。
JR東海は、大井川上流部の燕沢と呼ばれる平坦面に360万立米の発生土を積み上げるとしています(下図で黄色点線で囲った部分)。
静岡県が平成6年に作成した土地条件図によると、その燕沢平坦地は崖錐堆積物だとされています(環境影響評価書にも掲載)。
画像左上の千枚岳直下に巨大な崩壊地があり、そのほかにも大小の崩壊地が分布しています。それらから崩れ落ちた大量の土砂が谷を埋め、黄色点線で示される燕沢の平坦地を形成したのでしょう。なお現在は植林されてカラマツ林となっているようです。
今のところJR東海は、トンネルから掘り出される360万立米の発生土を、次の図のように、南北2か所に分けて積み上げると説明しています。
ここは崖錐堆積物なので、大鹿村と同じように、地表近くの層を除去する必要があるかもしれません。しかし規模がはるかに巨大であるために、除去すべき土砂の量も多くなります。
方眼をかぶせて底面積を試算してみたところ、
北側は約13万3400万㎡
南側は約1万500㎡
合わせて約14万4000㎡
となりました。大鹿村に予定している盛土の約33倍の面積となります。
仮に地表近くの層を平均1mの深さで除去するならば14万立米となり、新たに広い発生土置き場が必要となります。とはいえここは南アルプス山中。簡単に処分地が見つかるのでしょうか?
今のところ、JR東海からは燕沢を改変する場合の詳細な工法・工事手順についての説明はなされていません。この計画、果たして実行可能なのでしょうか・・・?