昨年末、長野県大鹿村内において、JR東海がリニア建設に関連して進めていた道路トンネル新設工事で、発破が原因となる山崩れが起きました。
南アルプスとは、そんな脆弱な地域。
いっぽうで、そこを通るリニア中央新幹線の建設目的は「南海トラフ等の災害に備えるため」。
長野県が平成27年に作成した「長野県地震被害想定調査報告書」には、長野県内外で大地震が発生する事態を想定した被害予測が掲載されています。
この中に「孤立集落」という項目があります。山崩れなどにより孤立するおそれのある集落を抽出したものです。
それによると、南海トラフや伊那谷断層での大地震発生時には、大鹿村では村内の23集落が孤立するおそれがあるということです。
詳細は不明ですが、大鹿村の中心部にも●印が並んでいることから、同村全体が外部から孤立するおそれがあるように見えます。
次に、大鹿村に隣接する静岡県側ですが・・・
リニアは静岡県北端(静岡市井川地区の北部)をトンネルで通過します。3000m級の山々に囲まれた山岳地域で、完全な無人地帯なのに、JR東海はここに非常口を設けると言っています。
さて、南海トラフ地震発生時を想定した「静岡県第4次地震被害想定(第二次報告)報告書(平成25年11月)」には、緊急輸送を担う道路や鉄道の被害想定がありました。
この図で分かる通り、リニアの静岡県区間(トンネル)は、影響度Aにランク付けされた緊急輸送路の終点から遠く離れています。地図上で計測してみると、終点から45㎞くらい離れてます。
つまり、南アルプストンネルの静岡県区間に設けられた非常口は、南海トラフ地震発生時には孤立する可能性が極めて高い
さらに山梨県東海地震被害想定調査より、南アルプス東側の山梨県内での道路被害想定をみてみます。
こちらは南海トラフ地震ではなく、従来型の東海地震(駿河トラフが震源となるケース)を想定しているようですが、震度等の想定に大差はないようです。
これによると、リニアの南アルプストンネル非常口が設けられる早川町内の道路は、影響度ランクA,に位置付けられており、大きな被害を受けることが予想されています。
これを見た印象では、早川町は町自体が孤立する可能性がありそうです。
現在までに発表された長野、静岡、山梨3県の想定に従えば、南海トラフで大地震が発生した際には、南アルプストンネルは外部より孤立する可能性が高いといえそうです。
大鹿村と早川町は、人口が1000人前後、静岡市井川地区は600~700人くらいです。そこにリニアの非常口が設けられる以上、地震発生時には、乗客が這い出して来ることになります。リニア1編成の乗客は1000人弱とされているので、最大で上下線合わせて2000人が脱出してくることを想定しなければならない。
人口が1000人弱しかいない自治体にとって、住民が大災厄に見舞われているところへ、住民と同数か2倍の乗客―着の身着のまま―を受け入れることが可能なのでしょうか?
また、建設による直接のメリットがない地域が、乗客の救出・救助・受け入れ義務を負わねばならぬのも、なんだかおかしな話じゃないでしょうか・・・?