静岡市長が「現実的に対応可能な最大限の提案をJR東海がしている」という自らの発言を撤回するという騒動がありました。
ここでいう「現実的に対応可能な最大限の提案」とは、今年6月12日に同社社長が会見で述べた「トンネルの県境下にポンプを設け、いざとなれば湧水の全量を戻せる設備を用意する」というものを指していると思われます。
⇒6/14 ブログ記事参照
https://blogs.yahoo.co.jp/jigiua8eurao4/15906626.html
https://blogs.yahoo.co.jp/jigiua8eurao4/15906626.html
しかしこの提案は平成27年以来繰り返されているものであり、何ら目新しい内容は含まれていません。
2015(平成27)年4月2日 第2回大井川水資源検討委員会 JR東海作成資料より
そして導水路をつくっても、その出口より上流には水を戻せないという致命的な問題があります。それは誰が見ても明明白白です。JR東海の試算通りならば、導水路で対応できないのは大井川本流~西俣の15km以上の区間に及びます。予測対象外ながら支流で流量減少が起きた場合にも対応できません。
そこで導水路案に対する静岡市長意見(平成29年2月)では、このようなことが書かれていました。
これを考慮して事業者(JR東海)に出された静岡県知事意見と、事業者回答は次の通り(2017年6月)。
このように、今後検討してゆくといった内容であって、具体的なことは何も書かれていません。つまり確実に環境が保全されるという回答はない。
しかしこれで「OK」とするならば、静岡市長は、自ら指摘した導水路案の根本的問題を無視したことになります。
さすがにこれはオカシイということで、発言撤回に追い込まれたのでしょう。
この問題、水生生物等への影響にとどまるものではありません。
導水路出口より上流、つまりトンネル湧水を戻せない区間には水力発電所の取水堰が3つ設けられています。このうち東京電力の田代川ダム、中部電力の木賊堰堤は取水量が多いし下流への影響も大きいのですが、JR東海の試算通りならば、水利系統に混乱が生じるに違いありません。
29日、JR東海は近いうちに利水者への説明をおこなう方針であると発表しました。中日新聞の記事によると、今週中にも開かれるとのこと。
しかしこれら取水堰がどの程度の影響を受けるのか不明で、対応も示されぬままでは、協議は成立しないのではないでしょうか。さらには、導水路でどの程度の水を嚇せるのか不透明という問題も残っています。
通常の新規取水と異なり損失を正確に見積もれない以上、電力会社の対応方針も不明確のままであり、それは環境維持流量の見通しが不透明であることにもなります。ならば河川環境への対応も見積もれない。不透明なことが多すぎて、これでは話にならないと思うのです。