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Channel: リニア中央新幹線 南アルプスに穴を開けちゃっていいのかい?
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河川法――合意せず着工するのは法的に可能なのか?

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昨日(4日)、JR東海から大井川流域利水者に対し、大井川の流量保全方法について説明がなされました。
案の定、話はかみ合わずに終わったようです。

静岡新聞 
リニア中央新幹線南アルプストンネル工事に伴う大井川の流量減少対策を巡り、利水者でつくる大井川水利調整協議会とJR東海が4日、島田市内で非公開の会合を開いた。両者が結ぶことになっている基本協定について、利水者側は取材に「締結前の着工はないと確認できた」と評価したのに対し、JR側は「法的ルールはない」との認識を示し、双方の見解がすれ違ったまま、終了した。
(後略)
 


記事にはJR東海側は「法的ルールはない」との認識を示したとあります。この部分に違和感を抱きました。

河川法には次のような規定があります。

二条 河川は、公共用物であつて、その保全、利用その他の管理は、前条の目的が達成されるように適正に行なわれなければならない。
2 河川の流水は、私権の目的となることができない。
 

流水は河川管理者の管理下にあり、何らかの目的で水を利用したい場合は、管理者から水を使う権利を得る必要があります。いわゆる水利権というものです。大井川上流部の場合、河川管理者は静岡県知事となります。

新たな利用者が「流水を占有」すると河川流量が減ります。それでは他の水利用者や漁業関係者に影響が及ぶため、事前に協議を行う必要があります。これが一般的なルールです。

詳しくはこちらをどうぞ(国交省ホームページ)
http://www.mlit.go.jp/river/riyou/main/suiriken/sinsei/index.html


さて、リニアのトンネル工事によって河川流量が減ることが予想されています。地下水の流れを切断して河川水をトンネルに引き込むようなものであり、「流水を占有」には該当しません。

いっぽう河川法施行令には次のような規定があります。
第十六条の四 何人も、みだりに次に掲げる行為をしてはならない。
一 河川を損傷すること。
二 (以下略)
 

現に存在する自然な水循環を、事前に予測しながらも破壊することにより、河川流量を減らし、結果として他の水利用者、漁業関係者(漁協)、そして自然環境に大きな影響を及ぼすのだとしたら、それは「河川を損傷すること」に該当すると思います。


この件について、かつて国会で答弁がなされています(平成26年3月13日)。

イメージ 1

この答弁によると、トンネルは各種の「許可等を正当な権原を得たうえで設置すること」になるから、着工した時点で、将来的に流量減少を引き起こしたとしても「河川を損傷すること」に該当しないことになりそうです。

言い換えれば、県知事からの許可を得なければ着工できないということが、この答弁によって確認できていると言えそうです。

河川管理者(県知事)が、河川法に基づき工事の認可を与えるためには、当然ながら、利水・治水に影響を与えないこと、環境が保全保全されること、などが確認されなければなりません。

工作物設置許可基準 第3(基本方針) 参照
http://www.mlit.go.jp/river/shishin_guideline/index.html 

工事および環境保全措置について大井川の利水関係者が合意することは、法的にも不可欠といえるのではないでしょうか。

またJR東海は、昨年6月の、導水路・工事用トンネル等にかかる知事意見への見解の中で、導水路出口より上流への環境対策として次のようなことを述べていました。

イメージ 2

「発電用取水については電力会社と協議し…」とあります。

導水路出口より上流には3つの取水堰があり、それぞれ一定量を取水せず下流に流しています(維持放流)。これは元々、下流の環境保全のため流域自治体から要請されて放流されるにいたったものですが、結果的に、最上流部の環境改善にもつながっています。

今のところJR東海の導水路案では、この維持放流が確保されるという見通しがないし、電力会社の受ける損失も見積もれません。それでは電力会社の対応も不明なままであり、下流の発電所に及ぼす影響についても見通せません。これでは下流の自治体としても困るでしょう。

◇   ◇   ◇   ◇   ◇ 

ところで日経新聞に書かれている内容も気になりました。

静岡のリニア着工、利水団体と溝 JR東海が説明会 
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO32611950U8A700C1L61000/
 
・・・沢田担当部長は「利水団体と協定を結ばないと一切進まないというわけではないが、理解がない中で進めていくのは難しいと考えている」としている。 

何やら、まるで下流での流量調整が最大にして唯一の障壁であり、あたかもそれがクリアできれば着工に道が開けるかのような印象を受けますが、そんなことはありません。

繰り返しとなりますが、導水路出口より上流への対策が無策のままです。予見される自然破壊を無策のまま放置することとなりますので、これでは工事の許可を与えることはできないでしょう。

南アルプスの山奥に掘り出す発生土370万立米の処理方法だって全く決まってはいません。大規模山崩れに囲まれた川沿いに発生土を山積みにすれは、侵食・運搬作用に対して脆弱な場所になるのは明白です。
イメージ 3
Google Earth画像を複製・加筆 

この案の安全性を立証するためには、事業者(JR東海)として周囲の高山地帯を含めた広範囲での斜面の安定性や、大井川の流路変更の履歴といったことまで説明せねばなりません。それは水問題を解決するよりも難しいのではないでしょうか。

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