そういえば環境影響評価書への国土交通大臣意見（2014年7月）に、こんなことが書かれていました。
JR東海が南アルプストンネル静岡工区で事業を進めずにいるのは、ここで言われているような、適切な説明や連携がなされていないためだと思うのであります。
最近、JR東海の偉い人たちが、折に触れて「合意が無くても着工できるぜ！」みたいなことをおっしゃっておりますけど、そんなことをしたら地元（行政・県民感情）を敵に回すだけでなく、大臣意見をも無視することになるでしょう。
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JR東海は、2013年9月の環境影響評価準備書にて毎秒２トン減ると予測したものの、詳細なデータや試算根拠、具体的な環境保全措置を示しませんでした。各方面から不満の声が上がり、情報提供を求められたものの、ほとんど修正されぬまま翌年４月に評価書が作成され、2014年８月に評価書補正作業が終わり、10月に事業認可を受けました。
同社はその後、2015年４月になってから導水路案を考案。すなわちトンネル途中から分岐する導水路で川に湧水を流下させて、必要に応じてポンプアップするとしたわけです。
いっぽう地元としては、それでは確実に流量を確保できる見通しが立たないとして、話が平行線をたどっています。
話が平行線をたどっているそもそもの原因は、JR東海が情報を開示しないことにあると思います。こうした状況下では、JR東海の主張する導水路案の妥当性を判断することさえ難しいのではないでしょうか。
例えば導水路で毎秒１．３トン戻せるとしているものの、そういう数字が出された根拠は示されていません。
技術的に不可能かと思ったけど、2017年静岡市の委託調査では、斜坑での湧水量や水位低下箇所などを細かく区分して予測しているのだから、そうでもないようです。
これは憶測になりますが、詳細な試算結果を明らかにすると、JR東海にとって都合が悪かったりするかもしれません――。
例えば、二つある斜坑のうち南側の千石非常口は、おそらく１００ｍ未満の小さな土被りで大井川本流をくぐります。そのうえ川に沿って畑薙山断層に伴う破砕帯が伸びているらしいので、大量湧水が起こりやすそうに見えます。また、北側の西俣非常口は、これまた断層に沿った支流（蛇抜沢）をくぐり抜けます。
上に占めした静岡市試算では、本坑よりも西俣非常口での湧水量のほうが大きくなっているので、憶測とは言え的外れじゃないかも。
仮に、JR東海試算でも斜坑で大量湧水が試算されているのだとしたら、斜坑の位置を変えて湧水量を減らすべき、という声が強まるのは必然です。本坑の変更は全国新幹線鉄道整備法に基づき大臣の認可を受けねばなりませんが、斜坑の変更ならばハードルは低い。そうやって抜本的な見直しを迫られることを警戒してるんじゃないのかな？
あるいは、導水路案をゴリ押ししようとしているものの、その出口より上流側への対策は不透明のままです。
国土地理院 地形図閲覧サービス（旧版）より複製・加筆
予測通りとなったら、この区間の河川生態系は壊滅状態に陥る可能性があります。
また、主に４つの発電所（二軒小屋、赤石、田代川第一、田代川第二）の取水堰も大きな損失を受けます。
環境対策として電力会社に取水制限を依頼するとしたら、ただでさえ流量減少で損失を受ける電力会社に、追加的に損失を要請することとなります。そんなことをしたら流域全体の水利用計画にさらなる混乱を及ぼしかねません。損失分を他の発電所でカバーするようなことになったら河原砂漠の再現になりかねない。
⇒大井川「水返せ運動」での最終目標はここにある田代ダムからの放流確保だった
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九州新幹線の筑紫トンネルは、地質条件から大量の湧水発生が予測されたため、なるべく湧水量を減らすべくルートや構造が設定されたそうです。
「周辺水環境を考慮したトンネルの設計施工（PDFファイル）」
リニア南アルプストンネルの場合、ルートやトンネル配置を設計するにあたり、水環境への影響をどうやって検討してきたのかも分からない。
いきなり「ここにトンネルを掘ります。水が減りますがご了承ください。」って言われても、そりゃ納得できないって。