そういえば、宿舎建設に先立って公表されたJR東海の事後調査報告書にはこんなことが書かれています。
「移殖個体の変化は特に見られなかった」
これに違和感を覚えたのでございます。
個人的な感覚ですが、菌従属栄養植物(いわゆる腐生植物)、なかでもランのグループは、地上部分の変化が非常に速いと感じます。
ナヨテンマという菌従属栄養の生態を持つランの一種を例にとってみます。一般的には腐生ランといった方が通りがいいかもしれません。静岡県中部の某低山で見つけたものです。ちなみに環境省のレッドリストでは絶滅危惧ⅠB、静岡県版のレッドリストでも絶滅危惧ⅠBに指定されています。
こちらは2016年6月12日に撮影したものです。まだつぼみが固い状態です。このような状態のものを15本ほど見つけました。
当時、ブログ作者はナヨテンマというものは図鑑でしか見たことがなく、「これは何じゃい?」という状況でしたので、次の週末に再度訪問しようと考えました。ところが当日は朝からお腹を壊してダウン。というわけで、再訪問は2週間後の6月26日となりました。
ところが・・・
こちらが26日に撮影したもの。
最初に見つけた15本すべてで花は終了し、果実(果:さくか)となっていました。中で種が成長している段階です。また、次の開花中のものと比べて分かるように、花が終わると柄の部分がニューッと伸びるよです。
かわりに、少し離れた場所で開花中のものをみつけました。ただ花はしおれ始めています。
あくまでナヨテンマの例ですが、2週間の間に、大きく見た目が変化しているのです。このほか、ブログ作者が個人的に観察した例に限りますが、菌従属栄養植物であるムヨウランの仲間、ヤツシロランの仲間なんかは、一般的に形態の変化が著しい傾向にあると思います。
JR東海の事後調査報告書の話に戻りますが、アオキランの生態についての報告書をみると、JR東海が移殖した時期は、果実が成長~裂開して種子を散布する時期に相当するそうです。
それなのに「変化がない」というのは、なんとも腑に落ちない。果実がこれだけ成熟したとか何とか、いろいろと着眼点はあるはずでしょうが、ちゃんと観察しているのでしょうか。
9兆円の超・巨大ビックプロジェクトに対し、重箱の隅をほじくるような話です。
別にこれをもってリニア批判に結び付けようという気はないけれど、ただ、モニタリングするつもりで移殖したなら、ちゃんと責任をもって第三者の検証に耐えうるものにすべきじゃないかと思うのであります。