JR東海が、トンネル内への湧水を全て大井川に戻す方針を県に伝えているとの報道がありました。
静岡新聞
JR東海が姿勢転換「湧水全量回復」 リニア工事大井川問題
産経新聞
JR東海、リニア地下水問題で静岡県に歩み寄り 静岡工区着工へ前進
朝日新聞
静岡のリニアトンネル工事、わき水全量戻す JR東海
これは当たりまえというような気がします。というのも、毎秒2トンの湧水がトンネル内に発生するとの予測に対し、今計画されている導水路で戻せる量が不確実である以上、JR東海としても全量をくみ出さねば都合が悪いように思えるのです。
JR東海による流量変化および導水路によって戻せる量の予測値は次の通り。
これだと毎湧水量のうち秒0.7トンは導水路で戻すことができず、トンネル内を山梨側に向けて流れてしまうことになっています。
いっぽう、静岡市が専門業者に委託しておこなった同様の試算結果は次の通り。こちらだと導水路で戻せる量は毎秒0.51トンで、毎秒0.9トンは山梨側に流れて行ってしまうと試算されています。
毎秒0.7トンにせよ0.9トンにせよ、かなりの流量です。日光の華厳の滝の流量が通常1.0トンに調整されているらしいので、それに近い量の水がトンネル内を流れるのだとしたら維持管理が大変になるでしょうし、山梨側の川に放流するにしても問題が生じるのではないでしょうか(発電目的でもなく一級河川の流域変更をやれるのか?)。だから、元よりポンプアップはJR東海としても不可欠だったんじゃないかと思うのであります。
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それはそうと、これで懸念が払しょくされるかというと、そうとも思えません。
あくまで仮定の話ですが、湧水量が僅少で、なおかつ基準値以上の重金属等を含んでいたとすれば、そんな水をくみ上げるのはデメリットのほうが大きいといえます。一応、そういう可能性も考えておかねばならぬ以上、安易に全量くみ上げで全面合意するのは危険だと思います。現に南アルプスの東側の麓で行われている中部横断自動車道のトンネル工事では、自然由来の土壌汚染で四苦八苦してますので。
それとこれが一番肝心なのですが、導水路出口より上流の対策はどうするのでしょう?
水力発電用の取水堰が3ヵ所あるし、水生生物への影響の程度や対策なんて全く不明のままなんですが。
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さらに新聞報道を眺めていて、あたかも水問題が唯一最大の懸案のように取り扱われていることも疑問に感じました。
南アルプス山中に置き去りにされる東京ドーム3杯分(370万立米)の発生土はどーすんの?
国土地理院ホームページ 電子国土Webより複製・加筆。
次の図にJR東海による発生土の盛土計画を重ね合わせ。