昨日19日の川勝知事の会見が新聞各紙で扱われています。
静岡新聞 【リニア流量問題、河川法クリアが協定の前提 川勝知事が見解】
産経新聞 【リニア、JRにまた難題 大井川工事に静岡県許可必要】
知事によりますと、大井川とリニア関連トンネルとの交差は6ヵ所に及び、それぞれに河川法での許可が必要になるそうです。
この件、すなわち地下深くのトンネル工事であっても河川法が適用されるということは、4年前の政府答弁で明らかにされていました。
今回の発表内容は、この政府答弁を改めて強調したものだといえそうです。
ただ、ブログ作者がちょっと驚いたのは、「河川との交差部が6ヵ所」であると言及したことです。
ここでいう「河川」とは、河川法に基づき一級河川に指定されている河川を指していると思われます。一級河川のうち特に重要な部分を除いた部分(上流部や支流など)は指定区間とよばれ、県知事に管理が委譲されています。
⇒国土交通省中部地方整備局 用語の説明ページ
JR東海が公表した各種図面をよく見ると、次の箇所が該当しているようです。
A 本坑・先進坑と西俣川との交差部…3ヵ所?
B 本坑・先進坑と東俣川との交差部…1ヵ所
C 斜坑(非常口)と大井川との交差部…1ヵ所
D 導水路トンネルと奥西河内川との交差部…1ヵ所
Aの部分が分かりにくいので詳細な図面も添えておきます。
環境影響評価書 関連図より複製・加筆
点線が本坑および先進坑のルート。赤く塗った部分で西俣川および東俣川と交差する。
ブログ作者がなぜ驚いたかというと、知事の発言内容からは、6ヵ所の交差部それぞれにおいて、個別に工事や敷地占有の許可が必要になる可能性が出てきたからです。
これまで導水路出口より上流側の問題は軽視されてきた印象がありました。しかし、下流の水対策だけでは不十分であることが明確に示されたといえます。
河川区域で工事を行うためには、その土地を使わせてもらう許可を得る必要があります。その許可を与えるための基準は、河川敷地占有許可準則といいます。それによると、当然ながら、治水や利水、環境保全上の懸念などを払しょくした計画でなければ許可してはならないことになっています。
上の図でAの交差部分について考えてみると、ここでの工事による流量減少が利水や自然環境に影響を与えると考えられる場合は、許可をしてはならないと解釈できそうです。
今のJR東海の考えている水環境への対策は、導水路を通じてトンネル湧水を下流に送るというものですから、導水路出口より上流側への対策にはなりません。対策としては不十分といえそうです。
ふつう、水環境に影響を及ぼしかねないルートでトンネルを設けざるを得ないとき、河川管理者や利水関係者との間でルート設定についての検討を行うと思います。
(参考)周辺水環境を考慮したトンネルの設計思考
―九州新幹線 筑紫トンネル―
―九州新幹線 筑紫トンネル―
しかしリニアの場合、協議も打診もないまま一方的にルートを提示されて、小手先の環境対策で同意せよという。
そりゃムチャな話でしょう。