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Channel: リニア中央新幹線 南アルプスに穴を開けちゃっていいのかい?
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健康な体に人工心臓を埋め込むかのような違和感

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昨日22日、静岡県庁でJR東海と有識者との協議が行われた。


静岡放送(SBS)
大井川に水戻す方法に心配の声 リニア新幹線工事 有識者会議 

中日新聞
湧水根拠「データ不足」 リニア工事 

産経新聞
リニア工事 JR、湧水量試算を初公表 静岡 

会議を傍聴したわけではないが、報道内容を見た印象では、JR東海が提示した導水路&ポンプアップ案を基本路線として、水問題に対処していくような感じである。

もちろん流量を減らすのは論外であるが、かといって安易にトンネル湧水を川に戻すのはマズいんじゃないだろうか。以下、この方法についてのブログ作者の雑感である。

●JR東海は、トンネル内への湧水を川に戻すためにポンプを設置するとしている。そのポンプの維持管理は未来永劫続けられるのだろうか。

将来、社会情勢の変化や天変地異など何らかの事情で南アルプストンネルの使用を終える時が来るかもしれない。何十年も先に、今のJRという会社が存続しているかどうかも分からない。しかしトンネル湧水が次第に収まってゆくという保証はなく、トンネルは放棄されてもポンプは動かし続けねばならないかもしれない。そんな先のことまで責任をもてるのだろうか。

●導水路出口より上流の環境対策のために、ポンプを複数つなげて斜坑から湧水を川に流すことも検討しているという。

その場合、標高差300m以上を延々とくみ上げ続けることになる。それは現実的なのだろうか?

こちらは、JR東海が開いた大井川水資源検討委員会の第2回会合での配布資料である。青函トンネルに設置されている排水ポンプの概要が説明されている。
イメージ 1
図中①のポンプは1分間に9㎥の水をくみ上げることができるという。通常の河川流量のように1秒あたりに換算すると0.15㎥となる。

南アルプストンネルにて、どれだけの量を斜坑まで放流するのか不明であるが、仮に0.3㎥/s程度を戻すとしたら、これが2台必要となる。斜坑は2か所あるので更にもう2台。一機当たり出力720kWなので4台ならば2880kWとなる。出力と消費電力とが同じかどうかも分からないが、このぐらいのエネルギーを必要とするのだろう。

いっぽうトンネル頭上に位置する水力発電所では、流量減少に伴い取水量を減らして発電量を減らさねばならない。その地下では湧水くみ上げのためにエネルギーを必要とするのであれば、実に滑稽な話である。

エネルギーの無駄遣いとしか言いようがない。


●また、地下400~1400mという深さからの湧水である。湧水の水温はいかなるものだろう?
トンネルの深度が平均900mだとすれば、河川水よりも20℃以上高い温泉が湧きだすかもしれない。

そんな水を、水温の低い源流部に放流したらどうなるのだろうか? 


●同様に、地下深い場所からの湧水であるから、様々な成分が溶け込んでいるかもしれない。もしかすると特別な処理を施さねば放流できないかもしれない。その施設だって、遠い将来まで動かし続けねばならない。その責任は誰が請け負うのか?

ところで工事終了後のトンネル湧水の水質について取り締まる法制度も不十分に思える。どうやら水質汚濁防止法や土壌汚染対策法はトンネル湧水には適用されないようであるし、河川法で対応できるかどうかも分からない。

なお既存のトンネルについて、継続的に湧水の水質を監視し続けている例は乏しいようである。



●工事予定地は南アルプスユネスコエコパークの登録地域内である。

ユネスコエコパークは「生態系の保全と持続可能な利活用の調和」が登録の目的であるとされている、
イメージ 2
日本ユネスコ国内委員会 パンフレット
「ユネスコエコパーク 自然と人の調和と共生」より複製
http://www.mext.go.jp/unesco/005/1341691.htm(文部科学省ホームページに掲載)

そこを流れる大井川を、ポンプで維持しようというのがJR東海の計画である。水質も人工的に制御しなければならないかもしれない。これが持続可能な利用といえるのだろうか。

健康な心臓を人工心臓を付け替えるかのような違和感を禁じ得ないのである。



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