昨日(30日)、静岡県庁にて県の環境保全連絡会議が開かれました。今回は河川生態系への影響や対策についての協議です。
こちら中日新聞の記事です。
生態系影響 認識に隔たり リニア水対策
こちらは静岡新聞版
JR東海は開き直ったというか、なんというか、論理的にどんどんおかしくなってきたなぁ~という印象です。
環境影響評価準備書では、具体的な保全措置は掲載されていませんでした。
だから県知事は、改めて具体的な保全措置を評価書に盛り込むよう意見を出した。
しかし評価書でも具体的なものは掲載されず、そのまま事業認可を受けた。
補正後の評価書より
末尾の「表8-2-4-8」とは上段の表8-2-4-7の説明。ないあ用が重複するので省略
これじゃ現実的な対応が見込めないから具体的な対応が求められているのです。
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さて、水が減った場合の生物への対応について、JR東海は「移殖」という言葉で乗り切ろうとしているようですけど、そんな簡単な話じゃないと思います。
”池の水を全部抜いて云々”という某テレビ番組が人気を博しているようですけど、そういう番組の見過ぎじゃないのかな?
環境保全措置としての移植とは、動植物を他の場所へ移動させて個体数の大幅な減少を防ごうという試みです。
水生生物を移植するなら、当然ながら移植先の水環境が将来にわたり安定的でなければならないでしょう。JR東海は、工事をしながら様子を見て対応を決めてゆく
と言っていますが、工事中に流量減少が起こり、急きょ移植したとして、その移植先も工事の進捗で流量減少が起こってしまったら話になりません。そんなことをどうやって見定めるのでしょうか?
流量減少の及ばぬ範囲を特定できたとして、次に、その水系の河川環境と生物相を把握する必要があるでしょう。たとえば移植先に、移殖該当種と競合関係にある生物がいるのなら、エサや産卵場所などを奪って他の種の生息場所を奪うような事態が起こるかもしれない。つまり移殖する種とそこに住んでいる種双方に起こりうる影響を見積もらなければならないでしょう。
また、移植先と目論んだ水系での受け入れ可能な量を、どうやって見積もるのでしょうか。一帯を流れるのは山奥の谷川ですから、魚類のような比較的大型の生物を育める量はそれほど多くはないと思われます。現状で限界ギリギリだったところに、さらに多くの魚を放流したら、同じ種の間でもエサなどの奪い合いが起こり、結局は個体数の減少につながりそうな気がします。
流量減少による影響が特に懸念されているものとして、ヤマトイワナがあげられます。本種の場合、上記のような一般的な問題に加え、かつて放流されたニッコウイワナとの交雑という心配事もあります。移植するならば、移殖した先での交雑が起こらぬように配慮することが求められますが、そのためにはヤマトイワナとニッコウイワナ両種の分布状況も把握しておかねばならぬはずです。ところが今のところ、(表向きには)そうした調査はなされていない。
そもそも、環境への影響はまず「回避」することを考えるのが先決であって、移殖というのは、どうやっても影響を避けられない場合に用いるべき最終手段だと言われています。いきなり最終手段を持ち出すというのはオカシイでしょう。
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上記の文章を読んで、何を難しいことを言っていやがる…と思われた方もおられるかもしれません。実際、住宅地の造成工事などではほとんど無視されるような懸念でしょう。
しかし、南アルプスで予想されているのは、標高2000m近い山岳地域で総延長数十キロにわたって流量が激減するかもしれないという前代未聞の話ですので、これまで通りの対応ではダメだと思います。単純に物理的な規模だけ考えても、、農業用水路や溜め池を埋め立てる前に小学生がカエルやメダカを救出するといった話とは、全くスケールが違うわけです。