前回に引き続き早川芦安連絡道路のナゾについてです。
Google Earthで早川芦安連絡道路の早川町側での建設予定地を確認してみたところ、昨年4月の画像が用意されていました。コピペして貼り付けます。上の地図でいうと「泰平橋」のところです。
比較のために、工事着手前に撮影された航空写真も貼り付けておきます。
国土地理院ホームページ 電子国土Webより複製
地上区間はここしかない(橋りょう部分を除く)ので、ここに大量のリニア発生土を盛土すると思われます。灰色の部分がリニアのトンネル坑口から搬入された発生土の山でしょう。なお早川芦安連絡道路の整備にはリニア発生土120万立米を使う見込みらしいのですが、どの程度ここで使うのかは分かりません。
伐採されている部分を拡大してみます。
よく見ると、左手から流入する沢が砂利山の裾野にぶつかり、混じりあって早川に合流しているように見えます。また、この沢はごく小規模にも関わらず、伐採された土地を深く侵食しています。そして早川本流の河原に出会う箇所には、扇型に土砂が溜まっているようです。
2015年に撮影された写真には、この溝状地形や扇型堆積物は見当たりませんから、それ以降つまり着工後に出現した可能性が高いと考えられます。工事の影響、すなわち積み上げた土砂が流出したり、伐採の影響で土壌侵食が進行したために出現したのでしょうか。
いずれにせよ、大雨が降ったり早川本流が増水したりすれば、この堆積物は下流へと流されて水質汚染の原因となりそうにみえます。
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ところで、発生土をここに運び込む前に積んである場所、すなわちリニア工事での仮置場では、下図のように排水溝や沈砂池を設けるなどして、水質に配慮することになっています。
JR東海作成
「早川町内奈良田地区発生土仮置き場における環境保全について (平成29年11月)」より
けれども早川芦安連絡道路の建設予定地では、少なくとも2018年4月時点では、そうした施設は用意されていなかったようです。
ついでながら、リニアの工事ヤードでは場所によっては粉じん対策の囲い、猛禽類対策の目隠し、濁水処理施設なども設置されますが、そういうものも見当たらないようです
Google Earthの画像は2018年4月のものですから、この後に設置されたかもしれませんけど、少なくとも環境保全についての発表も見当たりません。
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さかのぼって環境影響評価手続きでは、環境大臣や山梨県知事も、発生土の取扱いにおける環境保全に特に念を入れるよう意見しています。JR東海(と契約した建設会社)はそれにしたがって対処し、その方法を公表しているということになります。
山梨県編 環境影響評価書より
ところが、発生土を運び込んで「活用」している山梨県のほうは、どんな環境保全措置をとっているのかも、それが適切になされているのかも、何も明かしてくれてないのです。
これはヘンですね。
JR東海は、山梨県知事などの意見に従い、小さな仮置場でも環境保全措置を公表し、実行している。例えば例として挙げた奈良田地区仮置き場では、盛土容量0.4万立米でも、環境保全計画を作成・公表しているわけです。
その反面、合計で80倍もの盛土量となる早川芦安連絡道路では、環境保全計画は公表されていません。
「山梨県の事業だから」という理由なのでしょうけど、「ちゃんと環境保全を考えて公開せよ」と言った張本人が事業主体になるなら公表しなくていいというのは、筋が通らないと思います。
折しも、駿河湾のサクラエビ不漁の原因として富士川支流の早川の濁りに静岡県民の注目が集まっているところであり、懸念をぬぐい去るためにも、山梨県行政関係の方々には、適切な情報公開をお願いしたいと思うところです。
Google Earthより富士川と早川との合流点。
静岡県側では早川の濁りの原因として早川に注ぐ雨畑ダムに疑いの目が向けられているが、流域の工事や砂利採取の影響はないのか・・・?