前回のブログ記事と重複しますが、早川本流の濁りと、リニア工事とは、因果関係は薄いと思われます。
衛星画像上では、山崩れを抱えた湯川合流点から早川が濁り始めるのが明白ですし、地元の方のお話では、3年前から発電所の長期改修工事が続いている影響もあるそうです。山梨県の長崎知事の記者会見内容からも、そのことを既に把握していることが感じ取れます。
「リニア」という言葉が出てきたのは、
①静岡県の川勝知事によるJR東海への牽制球
②静岡新聞が空港新駅実現を持論としているから
の2点によるものでしょう(文末参照)。
①静岡県の川勝知事によるJR東海への牽制球
②静岡新聞が空港新駅実現を持論としているから
の2点によるものでしょう(文末参照)。
そもそも、サクラエビ資源量減少の一因として最初に疑惑の目を向けられたのは蒲原発電所の放流水です(サクラエビとの因果関係は現時点で不明)。
その蒲原発電所に水を供給している貯水槽の役割をしているのが、早川町にある雨畑ダムです。
静岡県側からは、この雨畑ダムの堆砂が進むことで水質が低下しているのではないかとの指摘がされています。ところがダム周辺では、水質悪化どころの問題ではなく、堆砂によってダム湖が埋まり、増水時に水が周囲にあふれ出すという深刻な被害が発生しているそうです。今年1月1日の静岡新聞記事では、既に避難生活を余儀なくされた人も出ていると報じています。
雨畑ダムが完成したのは1967年だそうです。完成してから3年後に上空から撮影された写真がこちらになります。中央の、のっぺりと黒く写っているのがダム湖です。
(国土地理院地図・地形図閲覧サービスより 1970年10月21日撮影)
いっぽう、こちらは2015年に撮影された写真です。土砂が大量にたまり、湖面の範囲が縮小している様子がわかります。
また、GoogleErathのストリートビューによると、湖の真ん中付近までアシが繁茂しており、ごく浅くなっていることがうかがえます。西からの支流との合流点に橋が架けられていますが、これも埋没するのを掘削作業でかろうじて防いでいるような感じです。なお、GoogleEarthでは2018年4月に撮影された画像を見ることができますが、ダム湖の画像が不鮮明なので割愛します。
国土交通省が開示したデータによると、総貯水量1365.0万立米に対し、平成28年度の堆砂量は1274.4万立米とのことで、堆砂率は実に93%にもなります。
このダムは民間企業の所有なので、公共事業として堆砂を除去することが制度的に難しいのかもしれません。しかし、現実に災害が起き始めているのですから、官民がどうこうと言っている場合ではなく、早急な対策が必要でしょう。
ここで、リニア建設工事との関係性を考えねばならないと思います。
土砂で埋め尽くされて陸地化している面積は、大雑把にみて40~50万㎡はあるようです。仮に3m掘り下げるだけで、優に100万立米もの土砂が出てきます。
これだけで、リニア工事で早川町に掘り出される発生土の25%に相当します。そもそも雨畑ダムの堆砂容量は600万立米なので、ここまで下げるとしたら674万立米もの砂利を除去しなければならない・・・。
いっぽう、リニアのトンネル工事で早川町内に掘り出される発生土(329万立米)のうち120万立米を、山梨県の道路整備事業に使うことが決まっています。その説明資料には次のように書かれています。「また、建設コストについては、リニア建設孤児の発生土を盛土材料として有効活用することにより削減を図ることにした」と。
この他、同町内では別の道路盛土にも10万立米を使うことも決まっています(赤沢地区)。数十万立米をリニア山梨県駅周辺の整備事業に使うという案もあるようです。
つまりこれまで盛土材料を確保できずに実現できなかった事業が、リニア発生土の出現によって一挙に進むという理屈になっているのです。(発生土は「活用」されるべきものであるから、タテマエ上、けっして無理に使うなんてことがあってはならないのである)。
なぜこれら道路整備にダム堆砂を使わないのでしょうか?
ダム堆砂は、セメント骨材、盛土材料として有効な使い道があるそうです。「堆砂 活用」という用語で検索するといろいろな実例が見出されます。現実に盛土材料として使っている例が多々あるわけですから、技術的な面で山梨県が進めたい各種整備事業に使えないというのは、ちょっと考えにくい。どんな有害物質が含まれているのかも分からぬリニア発生土よりは、材質上の不確定要素も少ないでしょう。
ダム堆砂の除去・活用は、災害防除、環境改善という緊急を要する目的があるのだから、リニア発生土の活用よりも優先順位が高いと思います。
※静岡空港新駅構想とサクラエビと川勝知事と静岡新聞の関係
静岡新聞2019年3月26日社説はこんな内容。この後3/29に、川勝知事が早川の濁りについて「リニア工事も視野に入れる」という考えを述べ、
4/1には静岡新聞に早川町内のリニア工事に言及した記事(前回ブログ)が掲載される。