駿河湾に注ぐ富士川水系の濁水について、山梨県と静岡県とで共同で調査を進めることが決定したそうです。
静岡新聞
富士川の濁り、徹底究明で一致 静岡・山梨知事
もっとも、濁りの要因のひとつが、某民間企業の所有する雨畑ダム(山梨県早川町)の堆砂にあることは間違いないようです。
静岡新聞
強い濁水、8年前から 静岡・清水区蒲原の工場放水路 県がデータ保管
ところでこの問題、元をたどってゆくと、早川町内の土砂の取扱いにたどり着きそうに思われます。しかもリニア中央新幹線計画にも影響が及ぶかもしれません。
山梨県在住の方に、昨年12月13日の地元紙の記事を見させていただいたのですが、それによると、雨畑川のダム堆砂問題は、下流の住民の想像を超えるほど大変な状況にあるようです。
●年間50万立米を除去しても近年は堆積が上回る
●2011年9月の連続台風(12号、9号)では270万立米の土砂が流入、一気に河床が上昇。
●昨年秋の台風24号通過時には町が築いた高さ1.2mの壁を乗り越えて集落へ水が押し寄せた。後には河床が4m以上上昇。
●堆砂除去のための施設が台風で損傷し、昨秋以降は除去作業が滞っている。
なお国交省の資料では、約1300万立米の土砂が溜まっていると報告されていますたとされています。
このほか同町内には面山の大崩壊地(通称:ナナイタガレ)はじめ大小数多くの山崩れがあり、谷底に向かって常に大量の土砂が崩れ落ちています。雨畑ダムの堆砂もひどいですが、同町内を流れる春木川の土砂流出もたいへんな状況のようです。
GoogleEarthより複製、地名を加筆
ところで、ここで客観的に不思議な話になります。
昨年JR東海が山梨県に提出した中間報告書によると、大量のリニア発生土のうち
120万立米を早川芦安連絡道路(山梨県事業)の盛土に、
10万立米を土地造成事業(早川町事業)に
11万立米を町道整備(早川町事業)に、
それぞれ使うことが決定したとしています。いずれも早川町内です。
120万立米を早川芦安連絡道路(山梨県事業)の盛土に、
10万立米を土地造成事業(早川町事業)に
11万立米を町道整備(早川町事業)に、
それぞれ使うことが決定したとしています。いずれも早川町内です。
その後の進捗状況、および事業化の決定過程は分かりません。
ダムや河原に膨大な量の砂利が溜まって災害と水質悪化をもたらし、その除去が緊急課題になっているというのに、それを使わず、代わりにリニア発生土を使わなければならないというのは、ものすご~く不審です。リニア発生土は川砂利よりも優秀な建設資材であり、それを使うことは浚渫作業よりも優先すべきなのでしょうか?
さらに分からないことがあります。
報告書には、「赤沢地区町道改良事業」にもリニア発生土を使うとしています。
その春木川は、先に述べたナナイタガレを抱えており、頻繁に土石流が発生し、河原が膨大な量の土砂で埋め尽くされています。
このため国土交通省による直轄砂防事業が続けられているのです。
平成28年11月8日 国土交通省関東地方整備局作成の資料より複製、「雨畑ダム」「春木川」の文字を記入。(PDFファイルで5.8MB)
土砂の流出を防ぐ工事が行われているところにリニア発生土を搬入しなければならない???
早晩、山梨県と静岡県との合同調査により、雨畑ダムの堆砂問題がクローズアップされることでしょう。その際には、ダム堆砂による災害発生の実態も明るみに出るに違いありません。つまり国土交通省も関係する案件に発展するに違いない。
災害の危険性除去は最優先されるべき事案ですから、どうにかして堆積した土砂を搬出する必要に迫られます。とはいえ、掘り出した土砂をどこかに運び、「活用」しなければならない。
しかし現時点で、早川町や隣接する身延町などには、中部横断道のトンネル工事で掘り出された大量の発生土があちこち積まれています。積まれてもただの小山のまま放置されているようであり、「有効利用」されているとは思えません。そこへダム堆砂およびリニア発生土が加われば、広い範囲が土砂に埋め尽くされてしまう。
というわけで、「リニア発生土の活用」は抜本的な見直しを迫られるのではないでしょうか?