10連休中をはさんでここ一月ほど、異常に忙しくしておりまして、今回が令和はじめての更新となります。。。
ここのところ、南アルプストンネル建設にともなう大井川の環境保全をめぐる動きが活発になっています。正直、状況の変化についていけず、全容を把握しておりません。というわけで、大井川の流量保全について主だった出来事を時系列に並べてみました。
まず、話がこじれた発端は、環境影響評価準備書にて流量減少が予測されたにも関わらず、具体的な環境保全措置がJR東海から示されなかったことにあります(水問題以外も)。
そのため静岡県は、南アルプスの環境保全のために「静岡県中央新幹線環境保全連絡会議」を設置、環境影響評価手続きで県の関与の終わった段階(準備書手続き終了後)の2014年4月22日に第1回会議が開かれました。
いっぽうJR東海は、事業認可を受けたのちの2014年11月19日に「大井川水資源対策検討委員会」を設置。2015年4月2日の第2回委員会で「導水路&ポンプアップ}という案を提示します。
4月14日
JR東海は、静岡県庁で開かれた中央新幹線環境保全連絡会議において、大井川の流量減少に対して導水路とポンプアップを組み合わせて下流への利水対策とする案を報告。
11月30日
静岡県庁において中央新幹線環境保全連絡会議が開かれる。JR東海が大井川水系の水資源対策として導水路案を改めて報告する。
2016年
目だった進展はなし
2017年
1月17日
JR東海は、静岡県内工区における導水路トンネル、燕沢発生土置場、位置変更後の工事用道路トンネルについての環境影響評価結果を静岡県に報告。
2月7日
静岡県中央新幹線環境保全連絡会議が開かれ、JR東海の作成した事後調査報告書に基づき、導水路案・発生土置場計画案について審議される。
3月13日
大井川の流量減少問題について、上水道、土地改良区、電力会社など計11の水利用団体はJR東海に対し、流量減少対策の内容を明記した協定を4月末までに下流利水者と締結するよう要望。
3月31日
大井川流域の10市町がJR東海に対し大井川の流量と水質の現状維持を申し入れ。
4月3日
静岡県における事後調査結果(導水路トンネル、工事用道路計画)に対する静岡県知事意見がJR東海に提出される。その中で4月末までに、下流利水者11団体との間で、流量減少対策に関する基本的な事項を共有するための基本協定を締結するよう求めている。
10月10日
静岡県の川勝平太知事は、4月の意見書にて、同月中にJR東海と大井川下流の水利権保有者との間に結ぶよう求めた協定がいまだ未締結であることを批判。
11月15日
南アルプストンネル静岡工区の施工業者が決定。環境保全対策が未定である状況での決定に県内関係機関等から批判が相次ぐ。
11月17日
静岡県はJR東海と下流利水者で締結を目指している協定について、同社に対し「前提が崩れるのであれば、白紙撤回せざるを得ない」と口頭で申し入れ。翌日JR東海は「誠実に対応する」とコメント。
2018年
6月19日
静岡県の川勝知事は、JR東海との交渉を知事戦略室に集約して対応していく方針を表明。
6月20日
静岡市とJR東海は、JR東海の全額負担により県道三ツ峰落合線にトンネル(約4㎞)を建設することで合意。また静岡市はリニア工事の手続きに協力する方針を表明。この静岡市の姿勢に対し、静岡県および大井川流域市町から批判が相次ぐ。
7月4日
JR東海は大井川流域の利水者に対する説明会を島田市内で開催(非公開)。利水者からはJR東海の示す水資源対策に対し疑問の声が相次ぐ。
8月2日
静岡県は、大井川の流量保全についてJR東海との交渉窓口を一本化させるため、大井川利水関係協議会を開設。県と流域の8市2町、11利水団体から構成されるが静岡市は不参加。県はJR東海、静岡市双方の姿勢を批判。流域の首長からも静岡市の姿勢を批判する声が出る。
8月8日
静岡県は、トンネル建設にともなう大井川の流量減少が与える影響を検証するため、県内外10名の専門家からなる有識者会議を発足させた。(当初記事では、2018年度中に意見をまとめ、JR東海に提出する見込みとしていた。)
9月20日
静岡県はJR東海に対し、「意見・質問書」を送付。大井川流量予測の試算根拠、水質への影響についての説明、地元に対する説明、等について情報開示を求めたもの。同年10月10日までの回答を求めている。
10月19日
静岡県の川勝知事は記者会見で、JR東海が質問書の回答と、大井川の流量保全についての協定案とを県に提示したと報告。JR東海が「原則としてトンネル湧水を全量戻す」との認識を示したことに対しては「中途半端」であると表現。
11月21日
静岡県庁にて、「南アルプス自然環境有識者会議地質構造・水資源部会(第2回」および第8回静岡県中央新幹線環境保全連絡会議(第8回)が開かれる。
12月28日
静岡県はJR東海に対し、「中央新幹線建設工事における大井川水系の水資源の確保及び自然環境の保全等に関する質問書」を送付。
2019年
1月25日
前月28日送付の質問書への回答に基づき、環境保全連絡会議「地質構造・水資源専門部会」の会合が県庁で開かれた。議論は平行線をたどる。
3月13日
静岡県庁で中央新幹線環境保全連絡会議が開かれる。JR東海は、
・先進ボーリング坑にて10m当たり50リットルの湧水が生じた場合には工法の変更などを検討する。
・本坑掘削時に湧水量が毎秒3トンを超えた場合には工事を中断する。
との案を提示。県は「大きな評価」と評し、対話を進める姿勢を見せた。ただし協議と並行して本体工事に着手したいとするJR東海の提案には否定的見解を示す。
・先進ボーリング坑にて10m当たり50リットルの湧水が生じた場合には工法の変更などを検討する。
・本坑掘削時に湧水量が毎秒3トンを超えた場合には工事を中断する。
との案を提示。県は「大きな評価」と評し、対話を進める姿勢を見せた。ただし協議と並行して本体工事に着手したいとするJR東海の提案には否定的見解を示す。
3月22日
JR東海の金子社長は記者会見で、大井川の流量保全問題について、リスク管理の考え方について理解が得られたと思うとし、新年度中に静岡工区での掘削工事を始めたいという意向を示す。
4月9日
静岡県中央新幹線環境保全連絡会議が開かれる。JR東海は、工事によって沢の水が枯れると予想された場合に、河川に生息・生育する動植物を移植することを提案。具体的な方法等は不明。
5月10日
静岡県は大井川流域の市・町の担当者および利水者に対し、これまでの協議内容やJR東海の提示した対策について報告。月内にもJR東海への意見書を県に提出する見込み。
なお、ゴチャゴチャとしてしまいそうなので、関連記事等のリンクは省略しました。
手前味噌になりますが、こちらの「リニア計画と南アルプスに関わる主なできごと」に関連ページを紹介しています。