今日の静岡新聞の記事です。
リニア、追加の準備工事容認 静岡県見解案、提出へ
リニア、JR対応 静岡県内8市2町首長、追加準備工事に警戒感
なんだか、トンネル工事について流域8市2町の意向がカギを握っているかのような印象を受けるのですが、果たしていかがなものなのでしょうか。
大井川では上水道、農業用水、工業用水のほか、発電用水という使い道があります。っていうか、大井川の水利系統図によれば、発電機を回したあとの水が上水道や農業・工業用水に転用されると言った方が正確かもしれません。
大井川水系の利水模式図
環境影響評価書からコピペしたもの
原図はおそらく国土交通省の大井川水系河川整備基本方針(平成18年)
これまで発電用水の取扱いはほとんど表立って取り扱われてこなかったように思われます。しかし、流量保全を考える上で非常に重要な要素であるはずです。
JR東海が提案している導水路案(トンネル湧水をポンプアップと自然流下で川に戻す)では、導水路出口より上流にある発電所に水を戻すことはできません。
トンネル完成後の流量予測(単位は立方メートル毎秒)
環境影響評価書より
というわけで、導水路出口より上流にある発電所の発電能力は低下する可能性があります。
そのため、2017(平成29)年3月13日に、冒頭の8市2町およびそのほかのなどの利水団体がJR東海に対し流量保全のための協定手結の申し入れを行った際、発電所を保有する中部電力も名を連ねています。
こちらは2017(平成29)年11月29日の静岡新聞記事です。
この後、発電施設がどう取り扱われてきたのかは分かりません。
今の段階では、取水堰での流量が正確に見積もれないことから、おそらく取水可能となる量も不透明のままと思います。
すると、環境維持流量つまり水生生物や景観維持など環境保全のため堰を素通りさせる水の量も見積もることができません。
そうなると、このあたり一帯に生息する希少な魚類など水生生物の保全方法を決めることも難しいでしょう。
今年4月9日に県庁で開かれた会合で、JR東海の担当者は「工事によって沢の水が枯れることが予想された場合、魚や河川に生息する生物を別の場所に移す。」ようなことを提案していたそうですけど、原理的にムリなんじゃないでしょうか。
さらに第三者に分かりにくいのは、東京電力田代川ダムの取扱いです。
2017(平成29)年3月13日に、冒頭の8市2町およびそのほかのなどの利水団体がJR東海に対し流量保全のための協定手結の申し入れを行った…と書きましたが、東京電力は不参加です。
しかし、このダムはトンネル工事で最も大きな損失を受ける可能性が高い。毎秒2トンの流量減少が予測されたのはまさにここです。
仮に予想通りの流量減少が起きた場合、導水路出口までの河川環境維持のために、取水量を相当に減らす必要に迫られるかもしれません。冬季は長期にわたって発電を停止しなければならないかもしれないし、そうなると発電所の置かれた山梨県側にも影響が出てくる。
一方、表向きには、静岡県や流域自治体との協議の場には不参加のままです。静岡県側の自治体とJR東海との協議結果をそのまま飲め…という構図になるのでしょうか。
最も重要だと思われる水利施設がカヤの外におかれた状況では、協議はまだまだ、まとまらないのではないかと思います。