JR東海の社長さんが、南アルプストンネル静岡工区着工の遅れにより2027年開業が遅れるかもしれない―とおっしゃっています。
NHK NEWS WEB
など
これじゃまるで静岡県が邪魔者扱いされているかのような印象を受けてしまうのですが、そもそも南アルプスでの工事がネックになるのは明らかだったのだから、それを見込んだ事業計画としなかったほうがおかしい。
例えば次の地図をご覧になってください。
こちらは、南アルプスの大井川流域で流量が減少すると予測されている部分と水力発電所との位置関係です。
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現在JR東海が計画している導水路案では、紫の区間に水を戻すことができません。
そのため、この区間に生息する河川生態系に甚大な影響を及ぼす可能性があります。
また、西俣、田代、木賊、赤石ダムの各取水施設に水を戻すことはできません。仮にポンプアップして非常口から水を戻すとしても、そのポンプアップに要するエネルギーと水力発電所の出力低下との比較によっては、くみ上げるだけムダとなる。
そして、このあたりの水利権の取扱いが定まらないと流域全体の水利権分配も定まりようがない。
これら予測される課題に対し、JR東海は明確な解決手段を提示していません。
これでは、工事に必要となる河川法に基づく各種許認可は与えられないと思います。
ついでながら、トンネルは作ったら最後撤去できないので、何百年も先のことも考えてもらわなければ困るわけですが、そんな先のことまで現在の法制度でフォローできるのか分からない。そういう未知な領域に突っ込んだのがリニア計画であるから、もとより2027年開業などと定めること自体が無謀だったんじゃないでしょうか。
それに大井川ばっかりに目が向けられてますが、こんなImage may be NSFW.
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場所で東京ドーム3杯分の発生土を残土処分する計画について、まだ具体的な議論は始まってません。
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黄色点線部分が環境影響評価書で示された発生土置き場候補地
後に出された発生土置き場案を重ね合わせ
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JR東海が発表した発生土置き場の盛土案
盛土量合計370万立米
南北ふたつの盛土が並び、北側のほうは長さ600m、幅320m、高さ70mぐらいになるらしい
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南アルプスど真ん中の、巨大崩壊地に囲まれた河原に、370万立米の残土を置き去りにすることは、理屈抜きにヤバイと思う。
「2027年開業」とはこんなことを前提としていたのだから、もくろみ通りに進まないのは当然!
そもそも、現在の中央新幹線構想を発表したのは2007(平成19)年の4月26日。このときは2025年名古屋開業とめざすとしていました。その後、2010(平成22)年4月28日に、開業予定を2027年度に変更しています。
当時はまだ事業主体もルートも正式に決まる前のことです。環境アセスメントも始まってません。どこでどんな工事を行うのかも不明だったわけです。どこで何をやるのか未定の段階で定めた開業年度にこだわることに、どれほどの意味があるのでしょうか。
JR東海の懸念表明に対し、石井国土交通大臣は次のようなことをおっしゃっています。
NHK静岡(すぐに消去されるので全文コピー)
リニア中央新幹線をめぐり、事業主体のJR東海が、静岡県内の工事の遅れで開業時期に遅れが出かねないという認識を示したことについて、石井国土交通大臣は、予定通りの開業への期待が大きいとして、国としても必要な調整などに協力していく考えを示しました。
リニア中央新幹線は、2027年の東京・名古屋間の開業を目指して工事が進められていますが、静岡では、地元自治体からトンネル工事によって川の水量が減ることへの懸念が示されて協議が難航し、本格的な工事が始まっていません。
このため、JR東海の金子慎社長は、30日の記者会見で着工できない状況が続けば開業時期に遅れが出かねないという認識を示しました。
これについて、石井国土交通大臣は31日の閣議のあとの記者会見で「リニア中央新幹線は国民生活や経済活動に大きなインパクトをもたらす重要な事業であり、予定通りの開業への期待が大きい」と述べました。
その上で、国が調整に乗り出す考えはないのか、という質問に対して、石井大臣は、「静岡県内の工事を含む事業全体が円滑に進むよう、引き続き必要な調整や協力は行っていきたい」と述べました。
早期実現に向けた調整も結構ですけど、河川環境を守ることも国土交通大臣の仕事であるはずです。まずはJR東海から「環境保全に十分な配慮」を引き出してほしいと思うのであります。
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・・・ついでに山梨県早川町の雨畑ダムの堆砂についてもなんとかしてほしい。
雨畑ダムの堆砂除去が進まないとリニア発生土の処分に支障が出るんじゃないのかなあ。