またまた静岡県の川勝知事が「静岡県には何にもメリットがない」と主張しています。
テレビ静岡の動画
静岡県にメリットがあるかどうかという点ですけど、2011年5月の国土交通省中央新幹線小委員会の答申では次のように説明していました。
こちらはJR東海が中央新幹線小委員会に提出していた資料です(2010年5月)。
東海道新幹線のダイヤに余裕が生じるのは確実でしょう。、「ひかり」「こだま」が「のぞみ」の通過待ちはなくなるので、例えば静岡ー東京の所要時間は15分くらい短縮されることになるはずです。
※昼間の「こだま」での東京-静岡の所要時間は約90分。それに対し、のぞみ通過待ちのない深夜の「こだま」だと東京-静岡の所要時間は最短72分。
また実現性は別としても、理屈上は、静岡県内各駅に停車する列車の本数を増やす余地は生まれます。
というわけで、日常的に新幹線を利用している人にとっては利便性が向上するでしょうし、駅周辺の評価がアップするかもしれない。というわけで確かにメリットがないわけじゃなさそうです。
けれど、広く県民が望んでいることかどうかは不明であるし、建設工事の行なわれる地域(=環境破壊の起こる地域)と、東海道新幹線の利便性向上によるメリットを受ける地域とは、必ずしも一致するわけでもありません。
確かに静岡駅や浜松駅周辺、あるいは日常的に新幹線を使う人にとっては便利になるでしょうけど、それが南アルプスや大井川流域のメリットにつながるかどうかは分かりません。
もっと根本的なところとして、そもそも南アルプス/大井川での環境破壊と東海道新幹線の利便性向上は天秤にかけられるのか?という疑問があります。
静岡県側としては、15分の乗車時間短縮によるメリットは、修復不可能な環境破壊を侵すリスクを上回るのでしょうか?
膨大な発生土を山岳地域に置き去りにすることは、それ自体が谷を埋めて自然破壊につながるのみならず、否応なく大規模土砂災害(ないし二次的な環境悪化)のリスクを抱え込むことになる。
今はやりの言葉でいうと、南アルプストンネルはSDGs(持続可能な開発目標)にそぐわないと思うのでありますな。長期的なリスクが大きすぎる。
リニアの早期開業を実現したいのであれば、そろそろ静岡県を迂回するルートを検討したほうが手っ取り早いんじゃないのかな?
ついでですけど、山梨県側の早川の濁水問題もまた、おかしくなってきました。
まず、静岡県と山梨県による5月の水質調査の結果が出されましたが、それによると、雨畑ダム貯水池では尋常でない濁り方をしているらしい。
雨畑ダム、単日で極度の濁り 静岡、山梨両県調査
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190605-00000008-at_s-l22
(具体的数値は静岡県庁ホームページに掲載されている)
そして、その雨畑ダムから骨材を採取していた業者が汚泥を雨畑川に不法投棄していた問題で、山梨県庁は刑事告発まで視野に入れているとのこと。
記事によると、業者は汚泥の適当な保管場所が見つからないと説明しているようです。こうして4万トンが投棄されてきたとのこと。しかし早川町内では、リニア発生土の仮置き場は8か所(約50万立米)も決まっています。なかには汚染土壌を置くことを想定した置き場もあります。
リニア発生土の置き場は、行政の支援もあって次々と確保されていったののに、かたや汚泥の置き場所が確保できず行政も掘ったらかしとは、どういうことなのでしょうか。