リニアの南アルプストンネル静岡工区が着工できず、2027年開業が遅れる可能性をJR東海が示唆したことで、愛知県知事が「国が前面に出て調整すべきだ」とおっしゃっているそうです。
【東海テレビ】
リニア2027年開業どうなる…「何のメリットもない」と反対の静岡県知事に愛知県知事が“クギ”
6/10(月) 18:55配信
6/10(月) 18:55配信
だけど、それは難しいんじゃないのかな?
静岡県では、環境保全上の大きな懸念があります。JR東海は、その懸念を払しょくするだけの環境保全措置を考案できていません。だから仮にJR東海が工事の申請をしても許可される見通しが立たない。ゆえに着工できていないわけです。
そこで、愛知県知事が言うように国が調整に出ると仮定する。
何を調整せよとおっしゃっているのか判然としませんが、ふつうに考えれば着工に向けての障壁となっている大井川の流量保全や発生土処分についてでしょう。
そこに国が調整に入るのであれば、国として、静岡県内においてリニア建設における環境保全上の懸念が生じていることを察していることになります。
ここで、リニア計画は環境影響評価法の対象事業であることを思い起こしてください。
環境大臣は、評価書を審査した結論として、リニア建設により様々な環境問題が起こる可能性を指摘し、国土交通大臣に伝えました(2014年6月5日)。
しかし国土交通大臣は、最終的にJR東海が補正した環境影響評価書に基づいて事業を進めれば環境保全上の懸念は低減できると判断しました。だから2014年10月に事業を認可することができたのです。
今、国が調整に出たならば、国が妥当と判断した評価書に基づき進められている事業で環境保全上の疑義が生じていることを国が認めることになるでしょう。そうなれば事業認可の正当性を、部分的にせよ否定することにつながる。
国が、自ら下した判断を覆すようなことをするとは考えにくいと思います。
いっぽう、現在リニア沿線の住民等が事業認可取り消しを求める訴訟を起こしています。争点の一つは、JR東海の作成した環境影響評価書には不備が多く、それに基づき事業認可した国土交通大臣の行為には瑕疵があるということです。
当然、国は環境影響評価手続きの正当性を主張しています。しかし国が環境問題の調整に乗り出したならば、この訴訟における国の主張には「」がつくことになる。泥沼化している諫早湾干拓事業のような事例への影響も出てくることでしょう。
というわけで、国が前面に出て調整することは難しいと思います。
ついでに言うと、河川法の解釈を根本から問い直すようなことをするのも難しいんじゃないのかなあ?