三重県の鈴木知事が、リニア計画は「法律にのっとった環境影響調査(?)が行われてきた。開業が遅れることは絶対にあってはならない」
とおっしゃったそうです。
(今日の静岡新聞朝刊)
これはリニア推進派にとっては墓穴を掘るような発言じゃないのかなあ…と感じました。
「環境影響調査」という言葉が、環境影響評価法に基づくアセス手続きのことを指すのか定かでありませんが、とりあえずアセスを含む、着工までの環境配慮手続き全般を指すものと解釈します。
環境配慮というものは、環境影響評価手続きから始まればよいというものではないと思います。なぜなら、その前後の政策決定の各段階でも、環境の保全について配慮するよう法律で定めているからです。
まず環境政策の基本となる法律は環境基本法です。その第十九条は次の通りです。
第五節 国が講ずる環境の保全のための施策等
(国の施策の策定等に当たっての配慮)
第十九条 国は、環境に影響を及ぼすと認められる施策を策定し、及び実施するに当たっては、環境の保全について配慮しなければならない。
それから地球温暖化対策推進法の第三条第2項は、(国の責務)として次のように定めています。
2 国は、温室効果ガスの排出の抑制等のための施策を推進するとともに、温室効果ガスの排出の抑制等に関係のある施策について、当該施策の目的の達成との調和を図りつつ温室効果ガスの排出の抑制等が行われるよう配意するものとする。
環境影響評価手続きの始まる前、国(国土交通省)は、全国新幹線鉄道整備法に基づき、中央新幹線を整備計画に格上げし、南アルプスルートを決定したのですが、この「施策を策定」するにあたり、環境の保全について配慮したといえるのでしょうか。
つまり、
●在来型新幹線方式と比較した超電導リニア方式の環境対応性
●ルート選定時における環境配慮
●在来型新幹線方式と比較した超電導リニア方式の環境対応性
●ルート選定時における環境配慮
は適切だったと言えるのでしょうか?
国土交通大臣への答申には次のように書かれています。
環境の現状を調査したけど、現段階では環境面からルートを選定することはできないというらしい。つまり環境面での審査はしていないと言っているのに等しいと思います。
付言すると、例えば水環境調査なるものは、想定ルート内に散在する「名水百選」のような湧水の分布図が出されただけで、後々に大問題となってくる大井川など各地の利水状況に関する情報は皆無であった。想定ルートを流れる河川はいずれも一級水系(富士川、大井川、天竜川水系)であり、各水系における取水状況の情報(水利台帳)は国土交通省地方整備局が保管している。またJR東海はこの時点で大井川での流量調査を行っていたのであるが、それは国土交通大臣の指示によるものであった。
それから答申では、走行方式にしても、在来型新幹線のほうがエネルギー消費の面で利点があるとしています。安全性及び信頼性でも在来型のほうが優れた実績があるとしていることから、環境対策面でも従来型のほうに軍配が上がるのでしょうう。特に、超電導リニア方式のもつ「曲がれない」という宿命は環境への対応性としては致命的です。
環境影響評価開始前になされた政策決定の段階では、適切な環境配慮がなされていたとは言い難いと思います。
その結果、環境影響評価手続きの最終段階になっても、環境大臣から「これほどのエネルギー需要が増加することか看過できない」「本事業の実施に友なう環境影響は枚挙に遑がない」と言われることになっています。
法に基づいて適切な環境配がなされてきたのなら、こんな大臣意見は出てこなかったんじゃないのかな?