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Channel: リニア中央新幹線 南アルプスに穴を開けちゃっていいのかい?
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ユネスコエコパーク国内推薦決定 続報

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昨日、日本ユネスコ国内委員会の「自然科学小委員会人間と生物圏(MAB)計画分科会」が文部科学省にて開催され、登録申請の出ていた只見地域(福島県)と南アルプス(山梨・長野・静岡10市町村)を、ユネスコに対してエコパークに推薦することが決定されました。
 
以下の関係省庁のサイトに審議概要が掲載されています。
文部科学省
http://www.mext.go.jp/unesco/001/2013/1339323.htm
 
環境省
http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=17095
 
林野庁
http://www.rinya.maff.go.jp/j/press/sin_riyou/130904.html
 
いずれも書いてある内容はほぼ同じです。
 
今朝の静岡新聞では大々的に報じています。まだ「国内推薦」なんですけど。
http://park.geocities.jp/jigiua8eurao4/SouthAlps/Shizuoka-news/2013.9.5-ecopark.html
 
ユネスコエコパークは、持続可能な自然の利用方法を研究し、実践してゆくために、ユネスコが設置する国際的な自然保護地域です。「持続可能な自然の利用方法」を求めてゆくことから、自然保護のために規制でがんじがらめになるのではなく、最も重要な場所を取り囲むように3段階の保護地域を設けるのが特徴です。
 
審査をおこなっている日本ユネスコ国内委員会MAB計画分科会のHPから転載しますと、
 
核心地域
・法律やそれに基づく制度等によって、長期的な保護が担保されていること
・次のカテゴリーの1つ以上に合致していること
(ア)生物地理学的区域を代表する生態系であること
(イ)生物多様性の保全の観点から重要な地域であること
(ウ)より自然の状態に復旧できうる変形あるいは破壊された生態系の実例
(エ)絶滅危惧種等希少な動植物が生息あるいは生育していること
・動植物相や植生等の調査の蓄積があり、公開に努めていること
 
②緩衝地域
・核心地域の周囲又は隣接する地域であり、核心地域のバッファーとしての機能を果たしていること
・核心地域に悪影響を及ぼさない範囲で、持続可能な発展のための地域資源を活かした持続的な観光であるエコツーリズム等の利用がなされていること
・環境教育・環境学習を推進し、自然の保全・持続可能な利活用への理解の増進、将来の担い手の育成を行っていること
 
③移行地域
・核心地域及び緩衝地域の周囲または隣接する地域であること
・緩衝地域を支援する機能を有すること
・自然環境の保全と調和した持続可能な発展のためのモデルとなる取組を推進していること

となっています。
 
順調なら登録は来年6月にスウェーデンで開かれるユネスコ理事会で正式決定するとのこと。

関係省庁のお知らせページには登録申請地域の概略図も掲載されています。見たところは、国立公園の中でも規制が厳しい部分や、林野庁の保護林、そして大井川源流厳正自然環境保全地域が核心地域に、それを取り囲む帯状地域が緩衝地域に、周辺の集落が移行地域となっています。
イメージ 1
南アルプス一帯の保護地域
 
イメージ 2
エコパーク登録申請地域とリニア新幹線の推定ルート
環境省HP掲載の図を転載・加筆しています
静岡県側はほとんど移行地域となってますが、どうしたことでしょう。 国立公園のような法的な保護地域が少ないために、核心地域やそれを囲む緩衝地域を設けることができなかったのでしょうか? 現在、2010年度を目途に環境省が国立公園地域を広げる計画を立ててますが、それまでおあずけといったところでしょうか?
 
さて南アルプスでの登録申請面積はおおよそ300平方キロメートル。その中にはリニアの建設工事が行われるであろう場所も含まれていますが、問題とならなかったのでしょうか?
 
静岡新聞、信濃毎日新聞の記事では、リニアに関する言及は見当たりません。
 
関係市町村の方々からも、エコパーク登録運動をリニア計画とを結びつけた発言はなされていないようです。
 
ぜ~ったいに分けて考えることはできないと思うのですが、いったいどうなってるのでしょう?

両立できると楽観視されているのでしょうか?
 
リニアの工事は、JR東海の計画通りだと、来年度から少なくとも向こう10年間は要します。登録と同時に着工なんてこともありえますね。向こう10年間は、リニア建設工事が南アルプスでの事実上の主産業となります。
 
南アルプスを横断するトンネルは、総延長約52㎞で、さらに斜坑等の作業用トンネルが加わります。掘削容積は600万立方メートル以上、掘り出される残土の容積は1000万立方メートル以上に達すると思われます。その残土が少なくとも5ヶ所から掘り出され、うち3ヶ所はエコパーク登録申請地域内に含まれます。
 
掘り出し口近傍で谷を埋め立てるか、もしくは10年間、毎日大型ダンプカーが150往復して域外に運び出さねば、このトンネルを造ることはできません。谷を埋め立てれば環境の復元は不可能、ダンプカーを通すために道路を拡幅しても自然環境へ大ダメージ。さらにトンネルの存在自体が水枯れを引き起こす…。谷底での大工事が、稜線部の核心地域へどんな影響を及ぼすのかも予測がつかない。
 
どこが「自然環境の保全と調和した持続可能な発展のためのモデル」なんだろう?
 
どんなに環境に配慮しても、「残土の発生と処理」「地下水の流れを壊す」この2点だけは、環境に配慮した対策がありません。
 
エコパーク登録の可否は、来年6月にスウェーデンで開催されるユネスコ理事会での審議結果で決まります。リニア計画への対策-もしかしたら着工しているかもしれない-を疑問視されたらどう回答するのでしょう?

連想したのが北海道のウトナイ湖と千歳川放水路の問題。
 
かつて、北海道は道央を流れる石狩川支流の千歳川にて、洪水対策のために巨大な放水路を建設する計画がありました。計画をしていたのは北海道開発局。
 
その放水路近傍にはウトナイ湖という湖や湿地があり、野鳥をはじめとする様々な動植物が生息しており、貴重な場所として認識されていました。工事を行うと、ウトナイ湖に大きな影響を与えてしまう…。これが一因となって反対運動が起こり、技術的な不安もあって着工できないまま年月が過ぎてゆきました。
 
泥沼化しているうちにウトナイ湖が1991年にラムサール条約に登録されました。ラムサール条約に登録されると、国際的に保護措置を約束せねばなりません。「そんな場所で大工事を行うなどおおいに疑問がある」…日本政府が苦手な外圧がかかり、いっそう話がややこしくなってきました。そんなこともあって実現性が大いに疑問視されるようになり、結局、放水路計画は中止され、遊水地や堤防強化など複合的な洪水対策が行われることになりました
 
リニア計画も同じ轍を踏むのではなかろうか?
 
「リニア計画とエコパーク登録とは両立できる」
とお考えであるのなら、関係者の方々-JR東海の方々も含めて-にはぜひ、その対策案を示していただきたいと思うのでリます。。
 
 
連想ついで。
 
戦後間もない昭和20年代、群馬・福島・新潟にまたがる尾瀬ヶ原に電力会社や商工省(現通産省)とで巨大な水力発電用ダムを建設しようという計画がありました。戦後の復興期であり、まさに電力不足の時代です。各マスコミ、世論さらにはGHQまで強力に後押しし、着工は確実かと思われてましたが、尾瀬ヶ原の学術上の価値を重視した文部省は特別天然記念物に指定し、当時、国立公園を所管していた厚生省は一帯を日光国立公園特別保護地区に組み入れ、強力に抵抗することになりました。在野の学者や自然愛好家も集結して尾瀬保存期成同盟と結成、反対運動を展開し、ダム建設を食い止めることに成功しました。
 
今の尾瀬ヶ原からはうかがい知ることもできませんが、美しい景観が保全された背後にはこんな騒動があったのです。日本の自然保護運動の原点として位置付けられているのはこのような背景があります。
 
60年前に先人が成し遂げたことを、今、南アルプスにおいて文部科学省と環境省とが協力して再現しようとしている!!
 
・・・んなわけないか。

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