わけのわからない記事があまりにも多いのである。
静岡県がJR東海に対し、大井川水系の減水問題解決を理由にリニア中央新幹線の工事を認めない問題について、国土交通省が調整役として動き出した。8月9日、国土交通省、静岡県、JR東海が連名で合意文書を発表した。2027年度の開業目標に対し、ようやく最後の難関が突破されようとしている。
●問題は流量減少だけではない。特に発生土期置き場の安全性・自然破壊は、むしろ流量減少がクローズアップされるより前から懸念されていた。静岡新聞の過去記事を並べてあるのでご覧いただきたい。https://minamialpstunnel.web.fc2.com/oldnews/Shizuoka-news.html
●三者合意に具体的進展はない。国土交通省ホームページ
JR東海は全国新幹線鉄道整備法にもとづいて着工へ準備してきた。その中で環境影響評価の手続きも済ませている。2011年に「計画段階環境配慮書」を公表、「環境影響評価方法書」を公告。2013年に環境影響評価準備書の公告。2014年に環境影響評価書を国土交通大臣に提出し、環境大臣、国土交通大臣の意見を経て、最終的な「環境影響評価書」を公告し、工事実施計画の許可を得た。
●大臣意見ではボロクソな評価であった。環境大臣意見の前文より――
・河川の生態系に不可逆的な影響を与える可能性が高い。
・これほどのエネルギー需要が増加することは看過できない。
・本事業の実施に伴う環境影響は枚挙に遑が無い。
少なくとも「環境に優しい」事業という見立てではない。
JR東海だけでなく、多くの鉄道トンネル工事に関して、各河川の影響と水利については工事実施中に実際の影響を調査し、必要な対策を講じるという考え方だ。しかし、静岡県はそれを良しとしなかった。「環境影響評価方法書」と「環境影響評価準備書」の公告時点で、静岡県知事は「大井川水系のトンネル湧水をすべて大井川へ戻すべき」と要望していた。
ここから両者の考え方にずれが生じる。JR東海は「減量分を戻す」。静岡県は「湧水すべてを戻せ」となった。大井川水系のダムは渇水期間が長い。「これ以上水を減らすな」「渇水がなかった頃に戻したい」という気持ちはわかる。しかし、南アルプスの伏流水は大井川の分だけでなく、地下水に浸潤する分もある。湧水のすべてを大井川に戻した場合、地下水の枯渇、大井川の増水による環境影響も考慮する必要がある。
●文章がおかしい
○静岡県知事は「大井川水系のトンネル湧水をすべて大井川へ戻すべき」と要望していた。
ここから両者の考え方にずれが生じる。JR東海は「減量分を戻す」。静岡県は「湧水すべてを戻せ」となった。
⇒静岡県側の要求は変わってないじゃん。
○南アルプスの伏流水は大井川の分だけでなく、地下水に浸潤する分もある。湧水のすべてを大井川に戻した場合、地下水の枯渇、大井川の増水による環境影響も考慮する必要がある。
⇒????
●多くの鉄道トンネル工事に関して、各河川の影響と水利については工事実施中に実際の影響を調査し、必要な対策を講じるという考え方だ。
⇒ルート再検討も工法の変更もせずに、地下水を抜く前提のNATM工法で、一級河川と交差するトンネルを掘削した事例がどれだけあるのか教えてほしい。
そこでJR東海は2014年に「大井川水資源検討委員会」を設置。学識経験者や技術者による環境保全措置の検討を実施している。一方、静岡県も2018年に「南アルプス自然環境有識者会議」「大井川利水関係協議会」を設立。JR東海に対して「大井川水系の水資源の確保及び水質の保全等に関する意見・質問書」を提出した。これに対し、JR東海は「原則として、全量を大井川に流す」と回答した。
●JR東海が2014年に大井川水資源検討委員会を設置したのは、静岡県との協議がもつれたためではない。
JR東海は評価書(2014/423)に具体的な環境保全措置を記述していなかったため、国土交通大臣意見(2014/7/18)において、”大井川”と名指しして環境保全措置の検討を命じられた。本来は評価書補正作業として対応すべきであるが、同社はそれを先送りして補正作業を終えた(2014/8/29)。事業認可後になって、大臣意見で指示された専門家会議として、大井川水資源検討委員会を設置したのである(12/19)。
それでもまだ静岡県は納得しない。今度は湧水全量を戻す具体的な方法の説明を求めた。あわせて水資源の変化と建設残土による生態系破壊の予測と対策も求めている。JR東海側としてみれば、これらの手続きは着工後の調査と合わせて正しく予測して着実に実行したい。しかし静岡県側は着工前に示せという。これ以降、JR東海がどれだけ言葉を尽くしても、両者の話が噛み合わない。
●発生土置き場の問題は今に始まったことではない。
●千枚崩れで「岩屑なだれ」が複数回起きていたと指摘されたことについて執筆者はどう評価しているのか?
●量と場所を特定せずに河川流量を減らすことが許されるという法的根拠を知りたい。
JR東海としては環境アセスの手続きも済み、過去の鉄道トンネルと同等の科学的調査と「工事中および完成後の対処法」で十分という認識だった。しかし、静岡県はそれでは不十分という認識だ。その認識のずれを国土交通省が埋める形になる。
●大臣意見でさえ、それでは不十分としているのだけど。
国土交通省の役割は、まず両者の意見・要求から「着工前にすべきこと」「着工後にすべきこと」を整理する。その後、JR東海に対しては具体的な説明を促し、静岡県に対しては、JR東海の回答を保証して着工を促す。
●どこに書いてあるの?
南アルプストンネルは史上まれに見る大工事となる。工期の見積はあっても、実際にトンネルを掘ってみないことには、2027年の開業目標が達成できるかどうかわからない。予想外の出水、有害物質の露出などで工期が遅れるかもしれない。逆に、見込んでいたアクシデントが起こらず、工期が早まる場合もある。もっとも、こうした工期の変動は着手してからわかる。着手前の足踏みは想定外だろう。中央新幹線を前提に、沿線のさまざまなプロジェクトも動き出している。早期解決、早期着工を望む。
●何も起こらなかった場合、JR東海が先に掘るとしている長さ12kmの導水路トンネルはどうなるの? 壮大なムダになるんですけど。
●自然保護地域で実際にトンネルを掘ってみないことには、2027年の開業目標が達成できるかどうかわからない。⇒一応、自然保護地域なのだから、無責任な立場で、そういう発想を安易にすべきではない。
●ジャーナリストならば、鉄道ファンではなく中立的な立場で書いてほしい