2014年にJR東海が作成した環境影響評価書には次のような記述がありました。
トンネルの工事中は、湧水をポンプでくみ上げるため河川流量は減らない、という見解です。
ところがこのたび、この内容がひっくり返る出来事がありました。
2015年3月13日、JR東海は南アルプストンネル山梨工区施工業者の入札を開始し、8月27日に業者が決定しました。このときの工区設定は、早川橋梁から7.7㎞区間となっていました。早川橋梁から7.7㎞というと、静岡県側に1㎞ほど入った地点となります。
「中央新幹線南アルプストンネル新設(山梨工区)工事における環境保全について」より引用
なぜ静岡県部分つまり大井川流域の地下を山梨側から掘るのか不明のまま、山梨工区では掘削工事が始まりました。
今月20日に静岡県庁において、国交省担当者も出席した協議が開かれました。会議を傍聴された方によりますと、大井川流域の地下を山梨側から掘る理由についてようやく説明があったそうです。
なんでも、県境と7.7㎞地点との間には活断層とみられる畑薙山断層が南北に延びており、これを突破するにあたり、技術的な理由で下方つまり山梨側から掘削しなければならないのだそうです(詳細は不明)。
実は静岡市の委託調査によると、トンネル掘削時には畑薙山断層に沿って大幅な水位低下が起こると予想されています。トンネル内への大量出水を意味するのかもしれません。
「平成28年度 静岡市南アルプス環境調査 水資源」より引用
しかし山梨側から掘削するのであれば、ここでの湧水はトンネル貫通まで静岡県側に戻すことはできません。静岡県側が反発するのも当然です。
静岡新聞
「湧水全回復、一定期間困難」 意見交換でJR認識、県は反発
(2019/8/21 07:23)
https://www.at-s.com/news/article/politics/shizuoka/671598.html
(2019/8/21 07:23)
https://www.at-s.com/news/article/politics/shizuoka/671598.html
間違った情報が書かれているのですから、まずは評価書を修正してもらわなければ困ります。
国は評価書を審査して事業認可しました、転じて、このままでは国土交通省は間違った図書に基づき事業認可したことにもなります。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
JR東海は、シミュレーションを行った時点、つまり準備書を発表する前には、トンネルのどの部分で出水が起こりやすいか予測していたはずです。
ならば、そうしたデータを準備書に記載し、関係者との協議を経たうえで、環境保全措置として適切な工事順序を定め、評価書を作成することが可能であったはずです。なぜ重要な情報を伏せたまま評価書を作成し、5年も経ってから覆したのでしょうか。
事業を遅らせているのはほかでもない。事業者本人です。