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Channel: リニア中央新幹線 南アルプスに穴を開けちゃっていいのかい?
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南アルプス横断仰天計画 標高2000mの残土捨て場&毎日ダンプ1700台

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環境影響評価制度というものは、環境保全対策方法をまとめた評価書という文書を作成することを最終的な目標としています。
 
で、事業者は評価書を作るために、下調べとしていろいろと調査をおこないます。調査には、文献資料の調査、現地調査、数値予測など様々な手法が用いられます。
 
その調査結果をもとに環境保全対策の案をまとめた文書のことを準備書と言います。いわば、評価書の下書きです。
 
準備書に記載された案で環境保全が適切に行えるか、ということが、現在問われていることになります。
 
一般市民の人々も、この審査に関わる権利があり、事業者であるJR東海に意見を述べることができます。
 
 
ただ、勘違いしてはいけないのは、準備書というのはあくまで環境保全対策案を記した文書であり、それに対しての意見はあくまで環境保全という観点に限られます。これは環境影響評価法十八条で定められていることです。
 
計画の賛成・反対を問うものではない
地域振興や、経営面に対する意見も的外れ
というわけです。
 
 
もちろん、その点に関しても様々な問題があり、意見を述べたくもなります。それに一応JR東海の「意見受付フォーム」には事業そのものに対する意見も受け付けているようです。しかし法律で明らかな通り、事業者であるJR東海としては、計画そのものの是非や、経営面の懸念に対してはマトモに返事をしなくてもよいことになります
十中八九、「建設の意義/事業見通し/経営面につきましては、国土交通省中央新幹線小委員会において審議され、当社が建設主体として妥当であるという答申をいただいております」というオチになると思われます。
 
おそらくリニア計画に疑問を抱く人々は、
「ああ、JR東海の経営が心配だ。もし倒産したらどうしよう~!」なんてことはあんまり考えておらず、
 
「おいおい、こんなものができちゃって生活できるのかよ」とか、
「うちらの水源の沢はどーなるんだ?」
「あそこの沢には岩魚がいるけど、工事で水が涸れたらどうなるんだ?」
「こんな山奥をダンプカーが何百台も通れるわけないだろ!」
「南アルプスはどうなっちゃうの?」
 
という、生活に密着した不安や自然環境破壊への疑問が根底にあるものだと思います。
 
その疑問をそのままJR東海にぶつければよいわけです。この準備書の内容で解消できるか、という視点で読め下せばなお良し。
 
 
さて、環境省のホームページに、環境影響評価準備書の見方、読み方、そして意見提出方法についてまとめられたページがあります。
 
「アセス助っ人 準備書を採点する」
 
これが意見を考えるうえで参考になります。ぜひこのページをご覧になって、意見を提出していただきたいと思います。
 
 
JR東海意見受け付けフォーム
 
締め切りは11月5日です。
 

 
ところで、南アルプスを思いっきりメチャクチャにするという事業内容が、あまり世間に知られていないように思われます。新聞記事などでも、「水環境を懸念する声がある」「残土の取り扱いを危惧する声がある」と、ごく小さな扱い。
 
というわけで、簡単にびっくり仰天計画をまとめておきます。意見を提出される、されないにかかわらず、こんな計画が着々と進行していることを知っていただきたいと思います。
 
【南アルプス横断ルートの概要】
イメージ 1
山梨県富士川町最勝寺(標高280m)から丘陵地帯のトンネルに入る。1本目のトンネルは長さ約850~900m。三枝川で一瞬地上(乗車時間にして約6秒)に出て、2番目のごく短いトンネル(または切り通し)を通り、もう一度川を渡って3番目のトンネル(長さ約2600m)に入る。ちなみに、1本目のトンネル坑口となる丘陵と盆地との境目がA級と判断される市之瀬断層であり、糸魚川-静岡構造線系の活動領域。

富士川町の高下集落付近で地上に出て、350mほど(約2.5秒)地上を走行した後、4番目のトンネルに入る、これは長さ約8500mと長大であり、大柳川の上流域をごく薄い土被りでくぐりぬけ、早川町新倉にいたる。早川の橋梁は長さ350m程度(約2.5秒)、高さ約170mと、とてつもなく高くなる。
 
早川の橋梁を渡ると5番目のトンネルに入る。これが南アルプス本体を貫く長大トンネルとなる。この長大トンネルは長さが約24900mあり、早川流域から上り勾配(推定00.3パーミリ)で大井川流域をくぐり抜け、静岡・長野県境からは下り勾配(推定0.4パーミリ)となり、小河内沢の下をくぐり、長野県大鹿村日向休という地点で小渋川の谷底に出る。転付峠付近での土被り1000m前後、大井川上流部で450m前後、悪沢岳北方から小河内岳付近までが1000~1400mとなっている。非常口(斜坑)は4本だが、いずれも長さ3㎞以上はあると見られる。
 
小渋川の橋梁は長さ約250m、高さ70m程度である。これを渡る(1~2秒)と6番目のトンネルに入る。これは長さ15000mほどであり、途中で中央構造線を貫く。青木川、虻川といった川を、50m程度とごく薄い土被りでくぐりぬける。青木川を越えた付近から勾配は0.02パーミル程度になる。豊丘村・喬木村境の壬生沢川という川で地上に出る。500mほど地上を通り(約3.5秒)、7番目の短いトンネル(約100m)で河岸段丘を抜け、天竜川橋梁にいたる。
 
ちなみに最勝寺から天竜川の間、地上を走行するのは合わせて16~17秒程度。
 
イメージ 2
着色部分は、地表からの深さ300m未満で水枯れを引き起こしやすい部分
緑…300~200m黄…200~100m橙…100m未満
 
びっくり仰天内容
①長大トンネルが連続、計約52000m 
・富士川町畔沢-富士川町高下 約2600m
・富士川町高下-早川町新倉 約8500m
 大柳川をごく薄い土被りで貫く
・早川町新倉-(静岡市地下)-大鹿村釜沢 約24900m
 蛇行している大井川源流の西俣、小河内川を一直線に潜り抜ける。小河内沢の土被りは150m程度
・大鹿村釜沢-豊丘村・喬木村境の壬生沢川 約15000m
 青木川、虻川をごく浅い土被りで貫く
 
②残土発生量の詳細はいまだに非公開だけどとんでもない量
今のところ分かっているのは、早川町内に300万立方メートルと静岡市大井川源流に360万立方メートル。静岡市の分は大井川源流域で処分。つまり南アルプス山中に捨てる。
 
③標高2000mの亜高山帯が残土捨て場 
静岡県部分からの残土については、長さ2.5㎞のトンネルを白根南嶺の山腹に掘り、中にベルトコンベアーを敷設し、山梨県境の山のてっぺん(亜高山針葉樹林)に捨てるという、およそ非現実的でムチャクチャな自然破壊計画になっている。ちなみにこの処分場候補地は地すべり地帯であり、大崩壊を誘発する可能性もある。
 
④それでも捨てきれないので、大井川源流部の河原6ヶ所を埋め立てる。
この残土処分場建設に対する環境アセスメントは行っていない。
 
⑤トンネル本体より、作業用トンネルの合計距離のほうが長い 
南アルプス本体を貫くトンネルは約25㎞だが、作業用トンネルの合計はたぶんもっと長い。今のところ長さが判明している長野・静岡の作業用道路トンネルは3本合わせて7.5㎞。このほか少なくとも4本の斜坑と、本坑に並行する先進ボーリング坑(直径4~5m)が掘られる。ちなみに中部電力が畑薙ダム以北に掘った発電用水トンネルの総延長よりも、このボーリング坑のほうが大規模。全部合わせれば長さは40㎞くらいにはなると思われ、相当な残土を出すとともに、巨大水抜きパイプとなる。
 
⑥長野県大鹿村内での大型車両通行台数は、1日1700台以上
作業が1日8時間なら17秒に1台の割合。これが10年以上続く。村のメインストリートはダンプカーが占拠することになる。間違いなく生活に支障が出るが、JR東海としては「騒音は基準を下回りますので問題ありません」という姿勢。
 
⑦大井川源流と、大鹿村小河内川の流量は3割減少するという予想
予想をしているだけマシで、富士川町の大柳川、早川町の内河内川、豊丘村の虻川等は、予測対象にもなっていない。
 
⑧富士川町の大柳川、大鹿村の青木川、豊丘村の虻川は、川底から100m以内の薄さでトンネルが掘られる。確実に流量減少につながるが、減った分の水は別の流域に排出される。
 
⑨早川橋梁は前例のない規模  
とても険しい早川の峡谷に架けられる橋は、長さ350m、高さ170m程度とみられる。きわめて急峻なV字谷なので、おそらく山腹内をえぐって地下に作業用地が設けられる。
 
⑩ものすごい生態系の破壊
分かりやすいところで野鳥の繁殖地という視点で見てみる。準備書に、富士川町-豊丘村間における「改変の可能性のある範囲(つまり地上の工事予定地)」で確認された留鳥・夏鳥を拾い上げてみると、
イヌワシ(静岡、大鹿)
クマタカ(早川、静岡、大鹿、豊丘)
ノスリ(大鹿)、
サシバ(富士川)
ミゾゴイ(富士川、大鹿)
コチドリ(大鹿)
イカルチドリ(大鹿)
ブッポウソウ(大鹿、豊丘)
オオアカゲラ(早川、静岡、大鹿)
サンコウチョウ (富士川、大鹿、豊丘)
サンショウクイ(富士川、大鹿、豊丘)
ヤマセミ(静岡、大鹿)
アカショウビン(早川、静岡)
フクロウ(富士川、静岡、豊丘)
ヨタカ(静岡、大鹿)
アオバト(大鹿、豊丘)
オシドリ(静岡、大鹿)
ヤマドリ(静岡)
水鳥、小鳥、猛きん類と様々。生息環境も河原、里山、社寺林、深山と多様。さらにここを越冬地としている冬鳥も見つかっている。湿地・干潟の干拓を除くと、ひとつの事業でこれだけたくさんの重要野鳥が出てくるのは珍しいと思う。
 
⑪鉄道建設の環境アセスメントで、ふつうこんな植物名が出てくるか?
ゴゼンタチバナ、タカネフタバラン、クルマユリ、ツバメオモト、オサバグサ、メタカラコウ、マルバダケブキ、ヤマイワカガミ、ハリギリ、トモエシオガマ、イワオウギ、ナナカマド、ミネザクラ、ダイモンジソウ、オサバグサ、ルイヨウショウマ、ダケカンバ、オオシラビソ、コメツガ…
名前を聞いて姿をイメージできた方は植物通あるいはベテラン登山家。いずれも相当な山奥に行かねば見ることのできない植物ですが、こういう植物相の場所で工事を計画しているわけです。ちなみに見つかった植物756のうち、ざっと見て2~3割は亜高山帯の植物種。
 
 
なおJR東海は、準備書において、いずれも「環境に配慮した結果」と述べています。
 

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